第38話 文末期

この世界に新たな魔物が誕生した。

これを繰り返し続けている。

半人半馬の怪人は半人半魚の怪人をとって喰らっている。

そこに文章の立ち入る意味は薄い、大量の文章を喰らうものが、

カタチの無い獣となって走り始める。

意味のない文章を得て力を強くしてを続けることで、また、

誰かが、謎の碑文を得て足を強くし、体を強くし、魔物となる。

見た目を描くことが出来ないゆえに闇の中に潜むことをおもとし、

照らされると死んでしまう習性をもつ故に光に弱く、

すべてが闇になることを好む眷属たちは生暖かい闇に潜む。

文末期、

文字を読むことを人が辞めた時代、

唱えるもので左右される時代には、

人々は文字よりも強い手段を、

身に着けて、戦い始めていた。

そのようなことを描けば文士は、

皆、やがて退化して滅んだ生き物の様に、

生命の進化に追いつけなくなるだろうが、

だが文士はそれを描かなければならない、

文士のサガなのだ、それは。

クラリイナは文章を綴ることで抵抗を続けていたし、

アンジュリィは、そんな彼女を魔物からら守っていた。

かれこれ何時間が過ぎたかは分からないが、

絶対安全の文章が綴られたことによって、

クラリイナとアンジュリィは安全を得ることが出来た。

だがそれはなにを意味するだろうか?

「闇の眷属を友にすること」

結果としてそうである、文章に現せないものの中で生きるには、

その眷属の仲間にならなければならないのはよく知れたこと。

「でもなければ伝えることも出来ないわねえ?」「そうだろうさ」

アンジュリィは見慣れた闇の世界がこちらに訪れたことを、

幸いと思ったかどうかは知れないが、ひとまず、

異世界に帰ることを思いとどまることにした。

「こんな暗がりじゃ文を綴ることもむずかしいというのに」

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