第36話 光無き所に

松明が消えてしまったあと、

光が無いところでは文字が描けない、

つまり、ここに記された文章は、

貴方が読めない文章ということになります。

登場する人物たちは、

読めない文章に囲まれて生きています。

「おーい、どこにいるんだ!?」

ここに登場した一人の男は、

自らの場所を読めない文字に囲まれている、

ことを知らずにぼぉっとしてることも出来ずに、

「ここは、どこだ!真っ暗だ!!」

「くそっ這い出るしかねえのか!」

まず文章にはルールがあります、沢山の、

ですが、多くの人は無意識にそのルールを、

理解して読んでしまっているのです。

「よじのぼっても何もみえやしねえ!」

なぜ、読めてしまうのかも分からないままですが、

とりあえず読んでしまうのが人の性です、

読めてしまうことによってすべてがはじまったと、

いって過言ではないのですが、読むと、

今度は話し始めます、覚えたことを、

このルールに従って人は文脈を生きています。

「あぶねえ!足元がねえじゃねえか!?」

この脈うつ文章がひとつひとつ、

登場人物の行動を支配しています、

たとえば、明かりがともった。

「!? だれかいるっていうのか!?」

ただそれだけで、一人の男は、

灯りに向かって走ることが出来ます、

足元が見えるようになったからです。

「おおーい!おれはここにいるぞ!!」

「おおーい!おまえはだれだ!?」

「名前を言えよ!!」

「アッカイア」「アクティブ」

三人は無事に出会うことが出来ました、

この暗がりの中で確かに、

「おれは北の街が崩壊したというから来たものだ名前はタンドルという」

「お前たち、北の町がこんな暗がりに取り込まれた理由は知っているか?」

「知らないよね?」「知らない」

「まったく、なにがあったっていうんだ?」

「ともかく俺はこのことを伝えるために南に戻る、お前たち、ついてくるか?」

「うん!」「うん!」「よおしいい返事だ!いくぞっ!」

三人は松明を片手に暗がりから走り去っていきます、

なぜ人は

キャラクターが

読めない文章を描くのでしょうか?

これは永遠の謎であり、読んでも構わないものを、

書くことも場合によっては在るでしょうが、

互いに交わらない運命線がそこには確実にあるのです、

奇妙奇天烈な話ですが確かな話です。

文章を読むことが出来るようになった人は自然と、

遠くに行ってしまった三人のことを案じます、

タンドル、アッカイア、アクティブ、

文章を読むことが出来ない人たちは遠くにいる、

三人のことなどは知る由もありません、

つまりキャラクターととても似ています。

これもまた不思議なことです。

 ひとは文章を読まない時、

キャラクターのように何かを演じている。

 ひとは文章を描かない時、

キャラクターのように何かを演じている。

 いつも不思議に思うことです、

悪文もそういった道からやってくるのでしょう。

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