第42話 娯楽性

ロボットが唐突に現れる

「ガシーン」

ビームを発射する

「ビーーム」

悪竜は倒される

「やったぜ!」

魔法使いが唐突に現れる

「はっはっは」

魔法をとなえる

「ほんじゃらっぱほい!」

ロボットは倒される

「弱い弱い!!」

戦士が唐突に現れる

「フッ」

剣劇を披露し始める

「シュババババババ」

魔法使いは倒される

「弱いものだな魔法とは」


ここまでで三つ山のある娯楽山脈である。

これを連綿と続けていくためにボルテージを、

上げ続けなければならないらしいが、

そもそもボルテージという字面自体が何かを知らない、


乙女があらわれる

「こんにちはってへっ」

乙女が突然のピンチに陥る

「なんでこんなところにドラゴンが」

乙女のピンチを登場人物が救う

「だいじょうぶかっ!くっ!」

「あ、あなたは?」

名乗るほどのものじゃないけど名乗る、

いざ冒険の旅路へ。


これを三十万回繰り返した時、

三十万の異世界転生人が舞台に立てるわけだが、

それをどうやって楽しめばいいのかが分からない、


欲求のほとんどはキャラクターに込めなければならない、

キャラクターの造型、意味、感情、感覚、

すべて、足していって構築しなければならないゆえに、

人が思っているすべての願望を為すために、

キャラクターは在るのだと思い知らなければならない、

ならない。


身長は普通、体重も普通、見た目も普通、全体的に普通、

普通に働くことが出来、かつ普通に寝て起きて寝れる場所がある。

またそういった場所を見つけることも得意であり、

いつも落ち着きがありまったりと時間を過ごすことが出来る。

そんなキャラクター性もあってか、周りの人まで、

落ち着いて気楽に暮らすことが出来るので二重丸である。


いきなりマサカリで人をたたっきるような乱暴者が存在するには、

そのマサカリでたたっきるまでの因果関係を紡ぐ必要が出てくるが、

怒りを覚える仕草を繰り返されてとちキレて切りかかったなら、

ある程度、行動までを理解できるのだがどうなのだろうか?


いっつも斧を片手に持ってるキャラクター、

いっつも剣を手に持ってるキャラクター、

いっつも杖を手に持ってるキャラクター、

いっつも本を持っているキャラクター、


これだけである程度、見た目は想像できるだろうか?

次はこの四人が突然戦いあうことになった時、

一番不利なのは本を持っているキャラクターだが、

彼は魔術師だったので実は一番有利に事を進めていく、

なんてことも想像できるかもしれない、


問題は娯楽、人を楽しませようとする心が彼らにあるかで、

どちらかというと戦うことを楽しんでいたほうがよさそうで、

血の気が多いほど面白げな気もする。 そんな理由で、


武器を振り回すことを続ける、斧を振り回し

剣を振り回し、杖を振り回し、本を振り回す、


ジャンプする曲芸のような身のこなしでバク転する、

側転して躱す走り抜けて振り向くなどをして、

動きたいという欲求を満たしていく。


ただそれだけではただの楽しい集団なので、

真っ先に杖を叩きおって、杖持ちを弾き飛ばしたりする。


やっと喧嘩してるように見えてきたので、

剣持が斧持ちに向って思いっきり振り下ろすのをみる、

そこに本持ちが魔法をとなえて一面が崩れて穴ぼこが空く、

杖持ちが何とか走り出してこれを避けるが、

魔法使いのビームにやられて倒れる。

転倒直前の剣持がよろけながらも、立ち上がると、

剣持は斧持ちの体当たりにやられて意識を失い倒れる。

斧持ちと魔法使いの一騎打ちになる、

斧持ちが斧を構えて走り出すと、

魔法使いが魔法をとなえてあたりが焼けていく、

それをもかわしての突進に、

魔法使いは長い詠唱をはじめて、

ふたりの距離が近づいたすんでで爆発、

勝敗は闇の中に。


娯楽性とは?

楽しいと思える心がまだ残っているのなら、

必ず、それを実らせる力となるだろうが、

今はそれが失われているようだ。


ユジリア王は一連の闘技を見終わって立ち上がると、

改めて、シナリオというものを自らが欲しているのだと、

知った。

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