第43話 書かずじまいの

魔法の体系をいちいち説明している暇があるかは知らないが、

この世界を動かしている魔法使い達も、どこから魔法がやってくるのかは、

詳しくは知らない、その全容が隠れてしまっている限りはそうなのだ。

 ただいえるのは魔法書を読んで、これを間違えず唱えれば、多少の優劣はあっても、同じような現象が発して、独特の疲労感が自らを襲うということだけは確かであった。 どのような仕組みでそうなってるのかまでは知らないが、すべての人が魔法書を読んで歩けるのがユジリアの法であった故に、

 「ねえ、しってる?」

 「なにをさ?」

 「魔法って実はわたしたちの生命力だって」

変な噂も立ちはじめる、他国が流した噂の類だろうが、

「魔法を使ったり魔法を作ったりするたびに、文字を読んだり、書いたりするじゃない? そのたびに闇が広がっていって、わたしたちの住んでいる世界を狭めてしまうのだって、いうわ」

「そんな噂、信じているのかい?」

「でも魔法をとなえると疲れるじゃない?」

「唱え続けて死んだってやつもいるらしいな」

魔法は危険であるから使い方に気をつけないとならないのは確かな所である。

「魔法の唱え方を間違えたんじゃないか?」

「そういうやつも結構いるって訊くしな」

「そうかしら?そうだったらいいのだけどね」

魔法の力で超大国に上り詰めた国家にとっては、一層はやく、すべての国から迷信を取り除いて、魔法の体系にすべてをのせたいという欲求がより強くなる。

 召喚術も悪竜も、何もかもが、体系にのっているのなら、それを統治することも可能になるはずだからである。 ただ神話から続く魔法の言葉を連綿と紡いできたからには、その詠唱も何もかも、知る人の命に掛かっていてもおかしくは無い。

「魔法なんて呼吸みたいなもんなのにな」

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