第53話 読まない場所

読む必要のない部分を大量に盛り込んで紡ぎあげた物語だなんて、

そうそうない必要かどうかを判断して盛り込むからだ、

じゃあ読めない場所に関して描けば良いのかどうか、

読めない空間はいまだなお広がり続けている。

読む必要を求めだすと、途端に読めなくなるので、

読まない場所を多くしてあれば読めなくなる問題も少なくなる、

が同時にあまりにも読まない場所が増えると、

すべて読まないということになる。

読む場合どうしてやろうと考える必要はない、

眼に通せば問題はなくなる。

 足元のことは読まない場所だったりはする、

街のこと、人のこと、順番に気にするものの事、

読まない場所を増やす努力に掛けることとなる。


 悪竜になってしまったユジリア国内の様子はいかなものだろうか、

一夜のうちに突如姿を変えてしまった城内と城下には人がまだ残っている。

逃げだしたものも多くは居たが、魔法の力が突如として悪竜に吸収されて、

しまったので、誰もが、自由に逃げだせる状況では無かった。

 当然、現在攻撃中の暫定政府から放たれる砲弾で死者も出る始末だが、

多くの死者は悪竜が暴れたことによるものであり、これを制さなければ、

被害はより一層拡大してしまうことが目に見えた。

 また、ユジリア王の安否も分からない中での戦いにつき、

悪竜のまわり全体を弾幕で撃ち尽くしてしまえば、

この国の崩壊も近いものだと言える。

 一瞬にして城と同化した悪竜を切り離すことが出来ない中で、

ありとあらゆる人々は怯え、怖れ、自らの住まいだった場所を、

餌にして、傷の修復を図る悪竜の口を見て嘆き、「ああ」


かつて魔法書だったレンガを喰らっていれば魔法にくわしくもなる。

魔法を覚える、ありとあらゆる魔法に耐性をつけていく、

これを反復し、胃の中で反芻して知性を深めていく悪竜だが、

その知性を使う場所が無い為、ただ大きくなりすぎた体躯、

何に収めるか、何をおさめるか分からずじまいであり、

結果として生命全部を放逐してたたずむばかりであるから、

足元に何があるかさえもよく理解していない。


「理解できていないうちに留めを!」

放たれた異世界魔導転生弾の弾幕が悪竜に的中し、

その急所ともいえる心臓部と、頭部に値する、

ユジリア城本丸を焼くが、

頑丈に作られたその部位を破壊するには至らない。

「頑丈なものだな」

仕方なく、肉を殺ぎ、勢いを失わせて悪竜の本体を切り崩すが、

肝心要の留めとまでは行き着くことがかなわない、

「ほんに強固に作られた、この国は」

本丸の中からみつめていたのはユジリア王であった。

「だがそれが災いしたか」

何を見てもどれを見てもつまらぬもののように出来るだけ、

魔法超大国に一気に上り詰めたその国も、

「よもや悪竜に取り込まれてしまうとはな」

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