第32話 超大国ユジリア
魔法文明が開花した時、真っ先に花開いたのがここ、
ユジリアであったが、あらゆる人間達が魔法使いになり、
国民の活字率よりも魔法使い率のほうが高いこの国においては、
魔法自体が至極当たり前のスキルとなっていた。
そんな状態が他の国ではありえないゆえに、
文明のギャップから他国よりもありえない建築様式も得て、
隣国を急速に吸収し始めたのはそう遠くない歴史である。
そんなユジリアの唯一の脅威は悪竜であった、
悪竜が現れた時、これに対処する術はあったものの、
はじめての外敵から攻撃にさらされ、
想像以上の被害を出したこともあって、
突如現れる悪竜対策をこうすることになったが、
悪竜がどこから現れたかはいまだ謎のままとされている。
表と裏がどの国にもあるもので、
ユジリアは裏では悪竜のチカラを得たいとすら考えている。
それはどの国も同じくであり、
もし竜のチカラを得ることが出来れば、
竜を完全に制御することが出来れば、
おもうがままに国土を切り開くことが叶うからである。
魔法に頼った文明も十分ではない、
人が学習して紡ぎだせる魔力も、
悪竜が一瞬にして作りだす魔力と比較すれば微々たるもの、
ここユジリア全人で挑んだとしても、
悪竜数匹、何十体と現れれば、勝ち目があるかは分からない。
そうしてユジリアもまた、クシ王国と同じように、
文士に頼って、何かを為そうと努力をし始めたわけであるが、
「できるものだろうか?」
ユジリアの将軍は文士が悪竜を制御できるはずだと考えており、
そのような文士を育成することも可能だと考えている。
文士は魔法使いよりも物語を紡ぐ力に長けており、
より長い物語を紡ぐ技術があれば、人の一生を与える力にさえ成り得るため、
その一生分の力というものを悪竜の一生に置き換えれれば、
見事に悪竜の物語、シナリオというものを書き示すことが可能なはずだ。
「だが、文士があまりにも少ない」
文士を養成する枠がまだ充分に作れていない段階であり、
かつ文士による報告書よりも魔法使いによる報告書のほうを、
優先しすぎたこともあって、派閥争いから庇護の対象になりにくく、
ユジリアでは逆に文士が育ちにくい環境にあるのだ。
「魔法をとなえるようには物語は紡げぬか」
将軍は自らの筆で、文士と同じように物語を紡ごうとするものの、
見事に失敗してしまった。
「悪文、これもまた悪竜の血肉となるか」
「魔法兵」
「はっ」
「例の囚人はどうなっている?」
「動きがありません、悪竜の子種も同じく」
「そうか」
「奴が鍵ではないのか?」
丸められた紙屑を前に、
魔法よりも物語が優先される世界などに、
住みたくはないものだと、将軍は想った。
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