第48話 四世
第一世はクシ王国
第二世はテヌ王国
第三世はユジリア国境
第四世はユジリア全体、
確実にサイズを大きくした悪竜トンベンマガスガトリクトである。
その大きさも規模も仕組みもそれぞれの世代でまるで異なる。
まず第一世代は基本的な竜と同じくであったが、
竜の宝石袋をふんだんに持っており鉱物質であった。
第二世代は基礎を鉱物質で補っていたが、
その多くは異世界転生人の血と肉を吸収して、
女神や神や神霊の祝福を鱗に受けて立ち上がる竜であった。
第三世代はそれらの特性を生かして立ち上げた、
鉱物質に頼った巨大な体を持つ竜であった。
そして第四世代は、ユジリア城下とユジリア城本体、
魔導炉を心臓に持ち、火炎袋に魔導砲を備えた完全無欠の魔法装備であった。
これに対抗するクエストを直ちにユジリアの臨時政府は掲げ、
各国に救援を求めたが、
自らが覇権をにぎっていた大陸での突然の出来事に、
助けの手は薄い、かくて、
かの悪竜を倒すことは冒険者の手に委ねられた。
テヌ王国で召喚された異世界転生人の一人タルゾンは、
自らの過去を死によって超越したこともあって、
空を飛ぶ能力を誇っていた。
「この力でひとっ飛び見てきてやろう」
トンベンマガスガトリクトの全体像を把握するために、
かの竜はすでに直接目視することでは把握できないほどに、
巨大な体躯を得ており、
山頂から眺めることが出来るのなら、都市全体が動いているようで、
それでいて、何又にも分かれた尾を振るい、
近づくものを威圧しているようだった。
「タルゾン確かにかの悪竜を見て捕えたが、戦う術は無し」
クエストにまたひとつ恐怖の一文が添えられ、
冒険者はユジリア国境沿いにある、
臨時政府でこれの成り行きを見守るだけであった。
ユジリア臨時政府を直接指揮をとっている将軍は同時に、
ことの張本人となる、一等文士、悪竜使いの捜索令状も出して、
冒険者のクエストのひとつともしたが、
そもそも悪竜自体の足元である、ユジリア国内に入ることすら、
かなわない現状では捜索は絶望的とも考えられた。
「魔導砲を隣国より調達いたしました」
「数は足りているな、魔法使いともに」
「ええ、ですが、どこに焦点を合わせるのですか?」
「魔導炉に直接ぶつけるよりほかあるまい」
「!!危険ですあまりにも!!」
都市全体の魔力装置の動力すべてを司る魔導炉が、おおよそ、
悪竜の体内には四基以上格納されており、そのチカラも未知数。
「やるしかあるまい、総員、魔力を焦点化、
悪竜トンベンマガスガトリクトを討つぞ!」
魔導砲の魔力装置に術者の力がそそぎこまれ、
この大地を支える基盤ともなるだろう、
神話の時代から語り継がれる霊脈から力をとりだし、
これを中枢に備えた焦点具に瞬間的に流し込み、
狙った場所に爆発力を作り出す! これが魔導砲の仕組み!
「やったか!?」
「国境沿いから確認、悪竜の中心とされる部分から火の手が」
「ですが、なおも動きはとまりません!」
「第二波を用意しろ!」
一度目の照射から確実に位置を特定し、
悪竜の心臓部に照射する計算尺が取られ、
魔法使いたちの魔力の集積が確実になされる時、
数十台に及ぶ魔導砲からチカラが解き放たれた!
「悪竜から強い光が確認されました!!」
「よしやったか!」
「悪竜の尾が未だ動いています! 死んでいません!」
「クソッこちらの位置を特定されるな、一旦散るぞ!」
あまりにも巨大な悪竜をまえに、
魔力の凝縮を何度ぶつけても弾かれてしまう状態にある。
「やつは、我々の故郷を取り込んで覚醒した、
あの魔力を断つにはより大きな魔力が必要となる。
だが、隣国はまだ技術が足りていない」
「ユジリアに匹敵する超大国が
四つ無ければかなわない計算になります」
「そのような国家はこの世界には存在していない、
かくなるうえは、テヌ王国に伝わる禁忌を使うしか」
「できるかしら? 異世界転生人に?」
「やるしかあるまい、呼び出すぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます