第26話 この世界に突然に


変化がくることもない、

巨大な竜は倒され、

竜の遺骸を祀る間に切り分けられて、

新しい人々に分配される毎日だ。


どこぞの人がモンスターに変貌を遂げたとしても、

たちまちクエストで始末されてしまう。

それまでの過程を文士に頼っている故に、

なかなか、カタチになって届いては来ない。


悪魔が現れて社会を悪くしようと企てる、

そのたくらみを知った誰かが解決に向けて努力する。

それをうまく文に出来たらどれだけ良いことか、

にも関わらず、それを見たように描けるものはいない、

誰もが遠くから見つめている状態で、

遠のく意識をかろうじて保っているかのようで、

かすかな呼吸で全てが描かれている。


もってこの世界の寿命は唐突に尽きようとしていた、

起きる現象、事象、どれをとっても突拍子も無いようで、

起きたということだけがかろうじてわかる程度、

深く知ろうとしなければ分かるはずもない今世である。


知識がすべてを物語るなら、すべての知識を捨ててしまおう、

残ったのは呼吸だけである。吸って吐く。呼吸だけ。


世界に呼吸だけが残った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る