第30話 呼吸だけをすること

「十行式」

荒ぶる神を前にしてすべてを行い、

すべてを吟味する巫女がおったそうな、

だがその巫女が死んでしまってからは、

荒ぶる神すこぶる怒り、暴れ、

人々の生活は荒れ、世はいっそう荒みきり、

声も絶え絶えになって誰もが話させしない、

そんな時代に落ち込んでしまった。

だが奇跡を起こすために遣わされた剣士が、

全てを変えるために荒ぶる神を倒すことを誓う、

神は唯一をしてひとつのみだという考えから、

剣士は鍛え上げた鋼の意志のみひとつをして、

荒ぶる神の怒りを鎮め、またその神を無きものにすることを、

決めたのだ。 それを訊きつけた荒ぶる神は、

99のしもべを剣士の前に刺客としておくりこみ、

99度にわたって剣士の命を狙うが、

この戦いを99回制した剣士はいよいよ荒ぶる神の懐となる、

大山の山中へと飛び込み、その眷属を叩きってまわる、

やがて荒ぶる神と対した剣士は大声でこういう、

「神よ神よ!神ならば荒ぶることを辞めておさまりたまえ!」

対する荒ぶる神は、

「愚か者めが!貴様こそ剣を引き我に道を開けよ!」

2人の戦いは決定づけられたものであり、

荒ぶる神に一撃加えるたびに世の中に散らばる悪意と悪鬼が、

人々を魔物に換えていくが、この戦いを決せねばいよいよ、

世界自体が危ういとなっていく中で、

遂に剣士が取り出した最強の剣が一突きにした、

荒ぶる神の心の蔵。

荒ぶる神はその強い鼓動で剣の一突きをはじき返さんとしたが、

かなわず、貫かれ、血しぶきをあげて爆散した。

荒ぶる神は死に、鋼の意志のみが何事も成し遂げる暗黒時代、

遂に完成となったのであった。

「これで十行みっつが1つになってるわけだけど、

 スケールがどんどんと小さくなっていくわね」

「仕方がない本編というものはスケールの小さいものだ」

「最初の一行から始めた時に比べてもそう思うわ、

 無駄な表現が増えて陳腐さが増して悪文になっていく」

「一行式のほうが良いのだ、本当は」

「一行で何もかもが伝わるというのならね」

「まったく」

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