第65話 悪魔の治める国

ヘビュートは既に人智を超えた魔が統べる世界へと、

変貌し始めていた、これひとえに文士がその世界を、

闇に覆わんとする雲を描き続けたことによるだろう。

「悪魔、魔族、魔獣、魔人、闇の眷属、何もかもが揃いつつあるな」

「はっそのようでセイカリテル様」

「わるくはないことだ、ニンゲンドモは混乱につぐ混乱によって、チカラも底につきかけている時、今、我々の元に集えば、一気に人間界を魔界に変えてしまうことだろう、なあ?」

「それにかけても気になるのはユジリア同盟です、あの超大国が瓦解したのは我々魔族にとって吉報でしたが、その後のおさまり方がどうも雲行きが怪しいもので」

「ふんっそれもそうか、とりあえず、まだ力を貸さぬ魔族までおるほどだからな、

 ヘビュート統治のために、幾らか兵をかき集めて、それぞれの派閥に覇を唱えなければなるまい、カルモンよ!!」

「はっセイカリテル様!」

「カルモン! 奴らを倒すためにより多くの魔族を募れ! 我らが魔族随一の力を持つと見せつけてやるのだ」

「では、さっそく魔方陣を組みますか」

組まれた魔方陣から呼び出される魔族の数は幾百人、

「我ら悪魔セイカリテル様の忠実なる下部」

「よかろう、ではさっそく他の一派が集う場所を叩いて回るぞ、カルモン!」

「ははーっ!!!」

セイカリテルの進攻は鮮やかなもので、少数精鋭で、各地の魔族が討伐され、捕虜にすることを楽に叶えるものとなった。

「セイカリテル様に従え、さもなくば命あるものと思うな」

「ははーっセイカリテル様万歳!!!」

各地で互いに覇を唱える魔族が現れることが知れていたので、足早にうごける人員を、整えた後は、ひたすらに、戦場をセイカリテルとカルモンが駆けることとなった。

「悪くないぞ、このまま崩してしまえば楽にヘビュートをおさめることが叶う」

魔族の陣はどんどんと整っていき、空を飛ぶ魔族、影を走る悪魔、統制の取れない魔物を確かに御して、軍備の拡張を楽にこなしてみせた。

「これも文士とやらの力か? なあカルモン」

「いいえ、セイカリテル様の実力あってのものです!!」

「ははは、なんとでも言え、私はこの部隊をもって、突撃する!」

突撃―突撃―!!!!!!!!!!

セイカリテルの軍は、ヘビュートで続く派閥争いの群を抜いて頭角を現し、

数多くの魔族を抱え込み、たしかな実力から、数多、魔族の首をあげ、

その首を晒し者としたゆえに、周りのものにセイカリテルの武功が強く示され、

魔族の中でも血の気の荒い、バーラカイド騎兵隊と激突の末に勝利し、

「きさまがバーラカイドか、なかなかの戦いぶりであったぞ」

「くっセイカリテル、そちの手に掛かれば脆いものであったか、殺せ」

「まあまて、余は血だけを好むわけではない、そちらの軍を迎えたい」

バーラカイドを家臣に抑えることを可能とした。

セイカリテル万歳、セイカリテル万歳、セイカリテル万歳!!

勝利の旅に、魔族たちの血がおどり、かつてもっていた武功も武力も、自らの手で掴み取ると、魔力確かに示さんとするものが、セイカリテルの下へ駆けつけ、

直参としての地位を得たものまであるとなれば、セイカリテルの軍一枚岩にして。

「総仕上げといこうか、ヘビュート西地方を制圧する!」

「はっ!わが軍で、あの荒くれ者どもの土地を制圧しましょう!」

今までヘビュート西地方は壊滅の度合の中でも随一の壊滅具合であったのは、

巨人族や、原型をとどめないほど膨れ上がった魔族などが、のたうちまわり、

まともに近づくことも出来ない魔地となっていた故であり、

今の軍ならば攻略可能と見込んだセイカリテルは、一軍を率いてつらなる隊列で、

巨人族の圧倒的武力を圧倒する指揮力を示した。

「われはタイアン!!巨人族の長なり!!セイカリテル卑怯だぞ!!」

「卑怯?卑怯に移るのか!巨人族には!はっはっは!策を知らぬ証拠だな!!」

一軍が巨人をとりかこみ引き倒し、槍が剣が群れて向かう、

死霊の騎士達が、不死のちからをもって巨人族に終わらない持久戦を仕掛ける。

魔力をもった魔族の魔法使いたちが、敵を吹き飛ばす魔術を一斉照射する。

その勢いが高まるほどに辺りは高熱で焼かれ、荒野と化していったが。

元より人の住めぬような場所を戦場としているのでなんの変哲もないことで、

やがて、巨大な体躯をしめているものが統べていたすべての土地、

ヘビュート西地方を完全に掌握するに至った。

「タイアンよ! 貴様らのチカラ確かに見届けた! これからは世のもとで!」

「よかろう! 一族が生き残る道がそれならば、セイカリテルに掛けるぞ!」

あっという間に押し潰し、あっという間に吸収していった故に、

ヘビュート全土は今や、セイカリテルの領土に成り変わり、

かくてセイカリテルが魔族の一党代表であり独裁をほしいままにとした。

「みたか!文士ども! これが魔族の力だ!」

捕えられた文士達はただ、魔族の為した勝利の道筋を描くのみであった。

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