第76話 大団円

悪竜はすべて倒され、

悪竜使いヘイメカクトルの野望は、

脆くも崩れ去った。


「わたしたちの勝利ね」

「まさか竜の助けを得るとはオドロキでした」

「戦い方ってものを学んだ気がしたぜ!」

「まったく全員で迷惑背負いこんだもんだなこりゃ」

「みなさんの供養のためにも生きている我々がしっかりしなければ、ね?」


今度の戦いでユジリア同盟とその多くは削られ、

人類史上類を見ない大戦で命を落とした数は、

一億を越えることであろうとされた。

一連の戦いに始まって、悪竜と人類との五度に渡る戦は確かな傷跡を残し、

各地に響いた傷のあとを癒やすにも、増して手が必要となった。

「悪魔王セイカリテルよ、手を貸してくれるか?」

「かまわん、すっかり白けてしまったからな」

魔族の働きによって、街のインフラは地下から急速に復興を始めて、

北国に元住んでいた人々も、久々の日の光りを前に、隠れ潜んでいた、

隠れ里から、一人また一人と、出ていき、生き残りの数の多さに、

皆が喜び、久々の太陽を拝むことが出来た。

「悪竜王があそこまでの力を持つに至ったのはユジリアの驕りである」

「ゆえに魔法には禁忌を何重にしても設け、今大戦をもって封印されるもの多く」

「我々があつかっていい文明にも限りを儲けることとして生きていこう」

「トマフさまは、お帰りですか?」

「ああ、今回の大戦のこと、クシ王に伝えねばならないことも多いからな」

「シンボリック様、いかがしましたか!?」

「またしても悪竜の首をあげそこなったワイ、くくくそー」

「大丈夫です竜騎士様、このトマフ、クシ王国でしかと恩賞あずかれる様計らいます故に・・・・・・シンボリック様?」

「竜騎士を名乗るものが、竜を倒せなんだことに変わりはあるまい!」


世界全体はユジリア同盟に勝るものなしという具合で、

その同盟に入っている者も、同盟側に入っていな者も、

賛美の声でこの同盟が為した悪竜大戦を評価した。


剣豪!魔法使い!僧侶!盗賊!文士!

タメク、イセイ、シングレ、ダノマ、アヤト!


「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」


「そちら以上の働き者の事を我らは知らぬ、

 我らは、そなたらの働きを永遠にとどめ、

 その勝利をユジリア同盟の中枢に据えるものとする!万歳」


万歳!ユジリア万歳!ユジリア同盟万歳!ユジリア王万歳!


剣豪!魔法使い!僧侶!盗賊!文士!

タメク、イセイ、シングレ、ダノマ、アヤト!


万歳! 万歳! 万歳!


「たおされてしまったのね」「そうだね」

「すこしさみしいけれど」「そうかいあんなやつだよ」

「語りたい気持ちがひとつ消えてしまったから」「そういうもんかい文士だねえ」

「アンジュリィ」「クラリイナ」

「また旅に出ましょう、アンジュリィはどこにいても大丈夫なのよ」「そうかね」

「そうよ、たまたま、世界が崩壊してしまっただけの話」「たまたまなのかな」

「だから試してみましょう、この世界を旅しきってしまったらきっと」「きっと」

「アンジュリィが安住できる場所がみつかるはずよ」「そりゃいいこったね」

「いきましょう」「ああ、いい旅立ちだね」


勝利は平安を産み、平安は旅路を産み出す、


「アヤトさん、つぎはどこにいくかね?」

「うーん、世界一周なんてどうかしら!?」

「それもわるくないですねっ!!」


勝利の味は確かに世界を包んでいくものとなったが、

何より大事なのは、この世界を旅してみたいという気持ち、

それが大事にされているかぎり、

この世の同盟に揺らぎはないだろう。


おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る