概要
私立学校・花園学園には奇妙な校則があった。誰かを好きになって誓約しなければ退学させられてしまう、と。
姉と一緒の学校に行きたいという理由だけで、そんな大変な高校に進学してしまった主人公・品近社(しなちか やしろ)。その強烈なシスコン属性のため、恋人どころか友だちすら期待できず、退学という危機に直面する。
幼馴染である宇井戸原素子(ういとはら もとこ)と一緒に、花園学園に在学する方法を探し始める。2人は文芸部なるところに、校則を破りながらも花園学園に所属し続けている生徒・祭門部楽羽(さいもんべ ささは)がいることを知る。文芸部に入部し、学園に残ろうと奮闘するが、少しずつ大きな運命の渦に呑み込まれていく・・・。
【コメント】
学園ラブコメ作品となっています。前半はサクサク
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!誰かを好きにならねば退学になってしまう――だが人を好きになるとは?
規則のパラドックスとは後期ヴィトゲンシュタインの『哲学探究』に登場する議論で、のちにソール・クリプキによって整理された。
簡単に述べると「規則に私的に従うことはできない」ということ。
この構図は、主人公・品近社が、「誰かを好きにならなければならない」という校則の学校に入学してしまったのに、シスコンなのでそのルールにそのまま従えないという形で表現されている。
しかしこれは必ずしもシスコンでなかったなら問題にならないわけではなく、それこそ付き合っていることと実際に両思い(もしくは片思い)であることは決定的に違うのであって――
しかし本当はどう違うのだろうか?
この花園学園では自分のパートナ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!そもさん、せっぱ!恋愛の花園で、凸凹ケンカップルが学園の謎を追う
これは単なる学園ラブコメではありません。
人気者のラクロス部員に対する嫌がらせ事件を解決していく中で、風変わりな校則「恋愛エクリチュール」の存在意義に疑問を持ち、自然な恋愛とは、人を好きになることとは——という人間の心理に迫る前半パート。
そして、校則改定に乗り出す一方、失踪した姉の行方を追って驚くべき真相に辿り着く後半パート。
個性豊かな女生徒たちに翻弄されるラブコメであると共に、学園に蔓延る事件や謎を追うミステリの要素も持ち合わせた、まさに一粒で二度美味しい作品です。
ちらりちらりと見え隠れする、学園全体を巻き込んだ恐ろしい陰謀。彼らの選んだ行動が周囲の人間関係を丸ごと動かしていくクライ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!恋はどこから生じるか
恋におちることを義務づけた校則をもつ学校を舞台に、さまざまな愛の形がえがかれた物語です。
恋は自然に生じるという考えと、規則があるからこそ恋が生じるという考えの対立、そして規則で恋を援用しようという考えなど、「恋する規則」を中心に、登場人物たちの恋が軽快な筆致でしるされていました。
よんでたのしいラブコメというだけでは収まりきらずに、取りあげられたテーマについてかんがえてみたくなるのが、じんたねさんの作品のよいところだとおもいます。
快活な会話劇はそのままに、登場人物たちの気持ちを浮き彫りにする描写が多いのもおすすめポイントです。
ときに切なく、ときにちからづよく、そしてときにおそろしく…続きを読む