第38話 本沢税理士事務所
「山田社長、困りますね。節税のご相談ならお受けできますが、脱税の相談はお受けできません」
税理事務所の本沢直喜は、困った様子で、中小企業の社長である、山田を眺めた。
「そもそも、節税と脱税ってどう違うんですか?」
山田が本沢に聞く。
「まあ、わかりやすく言うと、わからないように脱税するのが、節税です」
なんとも腹黒な税理士だろうかと山田は思った。でもこのくらい黒いと気持ちいいものである。山田も腹黒だったからです。
「たとえばですね。税金を払うのが嫌で、会社の応接室に後の投資目的でシャガールの絵を買ったとしますね。それを設備投資費として落とせば、脱税になりませんか?」
「会社の応接室で使うものでしょう?それは脱税という名の節税だと思いますよ」
山田は、この腹黒税理士を食えんやつだと思う。腹黒同士、黒い笑いを浮かべたあとに、山田は尋ねた。 「なんで脱税ってばれるんでしょう?」
「それはですね、脱税は、どこから、だれから、どんな形でばれてもおかしくない状況にあるんですよ」
「と、おっしゃいますと・・・」
「脱税は自分以外の人・会社・機関からバレるんです。それでも、逃げ切るという行為、つまり時効は他の刑事事件同様に用意されてはいます。時効までの期間は・・・5年ですすね!」
「ほほう、逃げ切れるんですか?」
腹黒社長の山田は笑う。
「では、どうやって税務署から逃げ切れるんですか?」
「それを税理士の僕に教えろというんですか?」
腹黒税理士の本沢もにやりと笑いを浮かべる。
「脱税して税務署からから逃げる方法ってあるのか?と探してみたら、無いこともないみたいです。ある方法って業界では結構有名みたいなんですけどね」
「そうなんですか?ぜひ教えてください」
「困りますよ、山田社長。そんなことを僕が教えたら、僕がお縄になります」
「やっぱり、そうですかね。本沢税理士」
山田と本沢は、はっはっはとお互い黒い笑いを浮かべた。
「まあ、よくよく考えると、意図的に脱税を行う人は、毎年脱税しているはずなので、脱税行為を辞めない限りは時効というものは一生きませんけどね」
「おや、そんなことを言ってもいいんですか、本沢税理士」
「ただ、うっかり脱税になったひとでも、自分の勝手な都合で脱税しちゃっう人も、本来税理士に相談していれば、助けてくれます。そのために税理士って人はいるんでしょうしね」
「おやおや、最後は宣伝ですか、本沢税理士」
「まあ、そうですね、困ったらちゃんと税理士に相談しましょうね」
****
「はい、カット!」
「本沢税理士相談事務所のコマーシャル、これでいいですかね?本沢、税理士」「ちょっと黒い感じがするけど、人間らしくていいかな」
「はい、これでいきます」
( お題:気持ちいい税理士 制限時間:30分 文字数:1187字 )
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