第37話 処刑方法がつらすぎる件
ここは某国の処刑室。今から僕の処刑が執行される。この国では公開死刑制になっていて、今日は僕が殺した男の遺族が僕の処刑を最後まで見守っている。
なんで殺したのかよくわかならい。とにかくむしゃくしゃしていたら、向こうからその男がやってきたんだ。それで、よくわからないけど、次の瞬間、僕はその男を殺していた。
この国の裁判は選ばれた一般人が判決を決めるからさ。僕の弁護士はまったく役に立たず、選ばれた人たちは僕が殺した男側の主張を丸呑みして、涙を流し、僕はめでたく死刑の日を迎えたというわけだ。
この国の死刑は、見物人たちがショックを受けないように、薬品の投与で行われるんだ。薬品を三つばかり打って、体の臓器や細胞を破壊させて、殺すんだ。見ているほうは安らかに死んでいくものと思っているらしいが、死刑囚にしたら、たまらなくそれが重い現実なんだよ。薬品で臓器が破壊されるんだぜ。楽に死ねたと思っている遺族たちはいいが、死刑囚にしたら、ものすごい苦痛を伴う。
先進国の死刑法って言われてるけどさ、まだ僕にとっては絞首刑や電気椅子のほうがましさ。
横たわっている僕に第一の薬品が投入された。なんとなく意識が朦朧としてきた。第二の薬品が投入された。く、苦しい。こ、呼吸ができない!は、早く殺してくれ!第三の薬品が投入された。心臓を止めてくれる薬だそうだが、なかなかとまらないじゃないか!はやく、心臓をとめてくれ!酸素がなくてくるしいんだ!早く!もうだめだ・・・殺してくれ~!
***
「死刑が終了しました」
執行人が重々しくいった。
「これで、うちの息子も浮かばれます」
被害者の遺族の両親は涙を流していた。
「犯人も苦しまないで逝ってくれたようで、言うことなしですわ」
やさしそうな遺族の男の母親は涙を流していた。
***
どの処刑方法よりも苦しむ処刑だとこの国の一般人たちは知らない。
死に方は穏やかに見えるが、処刑されるものは地獄のようは苦しみを味わう。
残酷な刑には見えないだけに、遺族たちの罪悪感も軽くて済む。
さすがに、先進国の処刑方法は違う。***
亡霊となった僕は遺族たちを見つめていた。満足そうにしているならそれでいい。
しかし、この処刑方法は、重すぎる。
今度自分が生まれ変わるときは、処刑者にとっても楽な処刑方法が生み出されていればいいが・・・。
(お題:重い死刑囚 制限時間:30分 文字数:1016字 )
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