第42話 扉を開けたら、ギロチン台があった。
亜里沙は大学受験の失敗から、特にこれといった特徴のない、三流大学に入学するはめになった。学力も普通。スポーツだって、目だったところもない、どこにでもあるような大学である。
こんな大学でも自分は四年間楽しめるだろうかと非常に不安に感じていた。大学の大講堂には地下室に入っていく階段があった。亜里沙はその階段を下っていった。すると地下室には扉があった。扉を開けてそこに入ってみると、そこには不思議な空間が広がっていた。
「ここはどこだろう」
亜里沙はあたりを見渡した。貧しげな服を着た民衆たちが怒鳴っていた。
「早くやっちまえ!」
亜里沙が見たものは、ギロチン台だった。貧しい服を着ていながらも、上品な雰囲気を醸し出している銀髪の女性がギロチン台に登っていく。
「あら、ごめんなさい」
ギロチン台の女性は執行人の足を踏んでしまったらしく、軽く笑顔で挨拶をした。そして皆の見守るなか、女性の首は切られ、乱雑に、残ったからだの足の間にその首が置かれた。
「革命、万歳!」
民衆の中で声があがった。そのなかで悲しそうに、最後の銀髪の女のスケッチをとる男の人もいた。
「私はどこへ来てしまったんだろう?」
平和な日本からは考えられないようなところにワープしてしまった亜里沙は震え出した。
急いで、地下室の扉を開けると、大学の講堂の地下室に戻った。
フランス語の時間に、指名された亜里沙はフランス語を皆の前で訳していた。
「マリーアントワネットは、ギロチン台に登っていきました。民衆は歓声をあげました。彼女は最後まで威厳と上品さを失わず、執行人の足を踏んでしまったときに挨拶しました。やがて、死刑が執行され、フランス革命万歳!という声があがりました。そのなかで、彼女に好意を寄せていたフェルセンだけは彼女の死を悼み、彼女の最後の姿をスケッチしていました。アントワネットの遺体は乱雑におかれたままでした」
「よく、訳せましたね。では、次の章も亜里沙さんに訳してもらいましょう」
「あれ!?」
と亜里沙は思った。地下室の扉を開けたら、見てきたことじゃないかと思った。なにごとも面倒で勉強の嫌いな亜里沙は、
「そうだ、あの地下室に行って、続きを見てくればいいんだ。そしたら、今日みたいにちょっとしか予習してなくてもなんとなく訳せる」
まったく勤勉ではない亜里沙は、みずぼらしい服に着替えるとまた、講堂の地下室に行き、扉を開けるのだった・・・。
次の日も亜里沙はすらすら訳していた。
「マリーアントワネットがギロチン台にかけられると、その子供は塔に幽閉されて・・・・・・」
(お題:ありきたりな大学 必須要素:爆弾 制限時間:30分 文字数:1122字 )
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