第40話 女優業

 クリスマスといえば、「ホワイトクリスマス」というイメージがあり、「雪」というものがつきものだが、今年の冬は暖冬で、まるで春にクリスマスをしているような感じだった。地球温暖化のせいだろうか。年々、暖冬になってきている。


 そんな中、大好きな甘栗を食べながら、私は来るべき日の作戦を練っていた。


 今年のクリスマスこそ、決めたい。彼にプロポーズをしてもらって、あたたかいクリスマスを迎えたい。それが私の夢だった。煮え切らない彼にクリスマスに、ぴしっと決めてほしかった。


 クリスマスイブは仕事で会えないとのことで、12月25日に私は彼とデ

ートをした。彼が伏目がちに、口を開いた。『いよいよ、プロポーズか?』私の胸は高鳴った。「ええっと・・・」

「うん、うん」

 もう、待ちきれない状態の私がいる。


「僕たち・・・・・・」

「うん、うん」


「別れよう」

「えっ?」


 私はずっこけそうになった。24日のイブが仕事で会えないと聞いたときになんだか嫌な予感がしたのだけど・・・・・・。もしかして、新しい彼女ができたとか?


「理由は言えない」

「どうして?私のこと、嫌いになったの?そうなんでしょ!」

「うん。ごめん。ほかに好きな人ができたんだ」

プロポーズの言葉を期待していた私が馬鹿だった。どうせ、私の人生なんてこんなもんだわ。大好きな彼に捨てられて、私はもう行き場がないような気がした。



「もう、こんな人生、どうでもいいや」

 私は、あっさりと人でにぎわう、デパートの屋上から飛び降りた。


 私の体が宙に舞う。やがて地面にたたきつけられて死んでしまう・・・。




「なに、やってんだよ!」

 彼の声で目が覚めた。私は彼の二段ベッドから落ちたらしい。どさっと音がして彼も目が覚めてしまったらしかった。


「夢か・・・」

 私は冷や汗をかいていた。今、みた夢の話をしたら、

「そんなこと、あるわけないじゃないか」

 ときちんと否定してくれた。


「僕たち・・・」

「うん、うん」


「でも別れよう」

「えっ?」


 また私はずっこけた。なんだ、本当のことじゃないか。こんな何の価値もない私、死んでやる!

 彼の住むマンションの屋上から、私はためらいなく飛び降りた。


 私の体が宙に舞う。やがて、地面に叩きつけられて死んでしまう・・・。



「なにやってんだよ!」

 彼の声で目が覚めた。私は彼の部屋のソファーから落ちたらしい。どさっと音がして、彼も目が覚めてしまった。



 ちょっと、待って!?これ、永久ループしてない?抜け出すにはどうしたらいいんだろう。


「ネバーエンディングストーリーの撮影、終わります」

 監督の声でやっと解放された。女優業も大変だ。


(お題:春のクリスマス 必須要素:甘栗 制限時間:30分 文字数:1149字 )

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