第27話 因果応報

 成人式、澄み切った空が俺たち、新成人を祝福してくれているようだ。艶やかな振袖姿の女性たちがまぶしく見える。俺は、スーツにネクタイとった格好で出席していた。出席してみると、中学時代の同級生に遭遇した。皆、変わっていない。懐かしい中学時代が思い出された。


 そこで、中学時代の仲間で集まって、皆でお茶することにした。そこには俺の卒業した中学校の帝王といわれる浜田がいた。こいつはとんでもなく悪くて、こいつに睨まれると中学では生きていけないという番長だった。


「今、どうしてる?」

 という話題になった。俺は大学生していたが、皆大学や短大、専門学校などに通っていて、早いやつだと働き出していた。帝王である浜田が近況を語る番になると、なぜか沈黙した。

「・・・・・・」


 どうしたのかと皆、浜田に目が釘付けである。

「まるで、のび太だった岩崎ってやついたじゃん?」

 やっと帝王が口火を切った。

「いたよ、いた!」

「あいつ、いじめて面白かったなあ!」

「自殺未遂までして・・・死ねなかったみたいで笑ったなあ」


 あまり趣味のいい話ではないなあと俺は思った。確かに岩崎ってトロいやつがいて、この帝王浜田を中心に苛められていた。俺の立場は傍観者。岩崎を相手にすると、こっちまで、苛められそうだったからな。


 で、その岩崎と帝王浜田とどんな関係があるんだ?


「俺さ、その岩崎に・・・・・・」

 皆がその先を聞きたがった。まさか帝王浜田が改心して、この会場で岩崎に謝ったとか?そういう展開も青春の一ページでいい話だ。


「その岩崎に・・・・・・苛められているんだ!」

 そう言うと、帝王は泣きじゃくりだした。あまりの展開に皆、はとが豆鉄砲をくらったような表情をしている。


「どういうことだ?」

「俺、中学出てから、岩崎興業って会社に就職しちまって、それは岩崎の父親の経営する会社だったんだ。岩崎は高校卒業してから、入ってきて俺の上司として、俺をいびりまくり。社長もやつの父親だから、俺を罵って遊んでいるんだ!やめたくても中卒の俺なんてとってくれるとこなんてないだろう」皆、唖然としていた。これが帝王浜田のいく先だったんだろうか。


 浜田の第一子分だった男が言った。

「帝王、因果応報っていいますからね」

 第二子分が言った。

「木を見て森を見ずだったですかね」


 おいおい、子分たち、全然帝王に対する慰めになっていないじゃないか。


「それで、俺自殺未遂したんだけど、死ねなくて・・・」

 帝王が自殺未遂?

「あいつ、自殺未遂までして、死ねなかったんだって。笑えるなあって言われたよ」


 まさに天につばをはいたら、自分にふりかかってきた状態だった。


( お題:帝王の沈黙 制限時間:30分 文字数:1148字 )

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