第44話 美恵子の復讐
美恵子は49歳。ぽっちゃりを通りこして、いわゆるデブという人種に属している。そんな美恵子が始めたのが、エアロビクスだった。綺麗な同世代の奥さんに勧められて、始めたことであるが、美恵子はどうしても周りと比べて違和感を感じずにはいられなかった。
ある日、ロッカー室でついに美恵子は聞いてしまったのだ。ある肉体美のある主婦たちの会話を・・・。
「ねえ、今度入ってきた人さ、太りすぎてない?」
「それもさ、エアロっていうよりも、奇妙な踊りで、どうしてもあの人見ていると、笑っちゃうの」
「だいたいさ、こんなところに来ても、痩せるはずがないって・・・」
美恵子は泣き出しそうになる自分を抑えて、レッスン会場に足を運んだ。自分のことをそんなふうに言われているとは知らなかった。
インストラクターの先生は、
「大丈夫ですよ。最初はついていけなくても、そのうち動きが皆さんとあってきます。それにここで痩せられたかたも多いんですよ」
美恵子はそんなインストラクターの言葉にすがって、なんとかレッスンを続けていたのだ。
やめようかと美恵子は思った。でもここでやめたら変わらないと恵美子は自分を奮い立たせた。どんなことを言われようと、絶対に続けて痩せて、見返してやる!
恵美子のレッスンには熱がこもった。頑張って踊り続けた。
そんなときである。インストラクターの先生が三年前に撮ったという全体写真を見せてくれた。美恵子は驚いた。ロッカー室でさんざん美恵子の悪口を叩いていた肉体美の主婦たちが、美恵子以上にたるんだ体を見せて微笑んでいた。
「みんな最初はそうなのよ。ここにくると確実に痩せるの。だけど、みんな痩せたら悔しいでしょ。だからあの人たちはそう言って新人ばらいを時々するのよね。商売の邪魔で困ってしまうわ」
そうだったのか。美恵子は納得した。三年後に向けて、美恵子が奇妙な踊りを続けたことは言うまでもない。三年後、肉体美をもった、美恵子はロッカー室で言っていた。
「あの奇妙な踊りのひと、おかしくない?」
(お題:奇妙な踊り 制限時間:15分 文字数:875字 )
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