第33話 俺の人生狂わせた逆バレンタイン
朝輪学園三年三組では、地獄の行事、「逆バレンタイン」が行われようとしていた。俺の通う朝輪学園三年三組には黒板の上にクラスのスローガンとして「調和したクラス」という紙が貼ってある。調和、すなわち和を乱すなということだ。しかし、このクラスは和なんて気にしないやつらばかりで、授業中に喧嘩が始まって、殴り合いになったり、女子は女子でぺちゃくちゃしゃべっていて、調和もなにもない。
大学出の新任の先生は困り果てていたが、男なんだから、これくらいまとめろっていうの。だけど、
「みんな、静かにしてください」
と小さな声で言っても誰も聞く耳、持たず、最後は殴り合いの喧嘩を見てとめるどころが逃げ出すような先生だった。めがねをかけていて、無能そうだったから「のび太先生」って言われるようになった。 2月になった、ある日、のび太先生が珍しく、明るい顔でやってきた。
「今回は、逆バレンタイン企画で、皆で仲良くならないか」
「・・・・・・」
誰も何も言わず、しらけきった空気だけが流れている。
「くじ引きをひいてもらって、男子がくじを引いた女子にチョコをあげるという企画だよ」
やたら、自信ありげにいうのび太先生に皆唖然としている。そうしているうちにとくじ引きが始まった。女子がまず箱の中にある数字の書いたくじを引いて、次に男子が引く。数字を照合させて、その数字が同じもの通しがカップルとなり、男子が女子にチョコを持ってくるという、端から見たら実にバカバカしい企画だ。
なぜこの企画が地獄かというと、このクラスにかわいい女子は二人しかいない。鈴木さんと田中さんだ。このふたりにあたれば、ハッピーハロウィンになるだろうが、あとの女子に当たれば地獄の行事にすぎない。あたる確率は35分の2。まず当たらないといっていいだろう。
番号を照合する時間となった。
「では12番の人!」
鈴木さんと、俺の友達の杉山が手を挙げた。杉山はできるやろうだし、ここがドラえもんの世界だとしたら、しずかちゃんとできすぎくんみたいなカップルだ。
男性陣は落胆の声をあげる。あとひとりの田中さんは誰とカップルになるのだろうか。
「次、21番!」
田中さんと友達の鈴木を手をあげた。鈴木はやさしくてハンサムな男だから、みな文句を言えなかった。俺が当たったのは、撫素子っていう女の子。
「実はね、あなたのこと好きだったの。チョコ楽しみにしているわ。楽しいバレンタインを過ごしましょ」
って言われたけど、不細工なお前とどう楽しめばいいんだ?おれはすっかりその撫素子に手を握られ、気に入られてしまったようだ。チョコなんて渡した日には、勘違いされてますますやっかいになるにきまっている。
俺はバレンタインからもこの狂った三年三組からも逃げようとした。バレンタインの当日、失踪しようとして、ドアを開けたら、そこに撫素子が待っていた。
( お題:調和した社会 制限時間:30分 文字数:1216字 )
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