第48話 花より実をとった俺を許して、母ちゃん!
警察にある動画が送られてきた。その動画ではパンストをかぶった男がパンツ一丁で画面から話しかけてきた。
「俺は天才だ!なのに世間はわかってくれない。だから俺はこの頭脳で犯罪を犯し、それを見て喜ぶことにした!どんな犯罪なのかは・・・」
そこで動画は終わっていた。
「完全ないたずらですね」
田中刑事は言った。
「まあ、こんな世の中では、こういう気持ちになる人がいてもおかしくないかもしれないけどね」
「どうしましょうか、この動画は?」
「相手にしなくても、大丈夫でしょう、鈴木刑事」
*
「はーい、カット!」
「おつかれさまでした、監督」
「今度の『自称天才・愉快犯』、当たりますかね?」
「それは、興行してみないとわからないね」
映画の撮影現場では、あわただしく人が動いている。
「もう、帰っていいっすか」
ストッキングまでかぶり、パンツ一丁にまでなった俺は、監督にお伺いを立てた。
「そろそろいいだろう。お疲れ様」
*
やっと開放された俺は帰途につく。俺はいわゆる悪役俳優であり、地道にやってきたせいか、賞ももらったんだ。その様子はテレビでも放映されていた。実家の母ちゃんは泣いていた。俺がすこぶる有名になってきたことを喜んで感涙しているのかと思ったら、
「お前、悪人で有名になるよりも、善人になっておくれ」
って、言われてさ、俺は唖然としたよ。
母ちゃんは恥ずかしくて、街も歩けないらしい。頑張ってやってきたことが、家族の恥になるなんて、それこそ理不尽な世の中だよな。でも、食っていくには、悪役が効率がいいんだ。すぐ殺されて、ギャラも入るしなあ。
*
「監督、この前、悪役の賞をおかげさまでいただきまして・・・」
「おう、おめでとう、テレビで観たよ」
「それで母ちゃんに泣かれまして・・・」
「親孝行したなあ」
「いえ、悪人で有名になるより、平凡でも善人になれって・・・」
監督は笑い出したが、俺は必死だった。
「なんか、俺でもできる善人の役ってないっすかね」
「君は、その悪人顔がすっごくいい味出しているんだよ。顔が変わらないかぎりは無理かな」
「そうっすよね」
*
俺は●川美容外科の前に立っていた。顔さえ変えれば、善人役がもらえるかもしれない。だけど、善人顔になったとしても、役者として売れるかわからない。悪人だからこそ、ここまで来たのだ。
(お題:天才の愉快犯 制限時間:30分 文字数:1077字 )
俺は●川美容外科のパンフレットをやぶいた。ごめん、かあちゃん。いつか俺の生き方もわかってほしい・・・・・・。
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