第15話 実は孤独ではないボクサー(僕さ)
バスの天井のスピーカーが次の停留所を元気に告げた。バスから降りた俺は大学に向かった。俺は右ストレートでからかってくるやつをぶっ飛ばした。皆はびっくりしている。俺は実は苛められていた。大人しそうに見え、いじりやすそうなキャラに見えたのだろう。
だけど俺は子供の頃からボクシングを習っていて、『むやみに手を出してはならない』って自分の中で決めてきたんだ。
でもこの世の中、後先考えずに、自分の感情も処理できず、『ノリ』だけで苛めてくるアホなやつらが多いよな。俺はそれを教えてやろうと、得意の右ストレートで相手をぶっとばしたんだ。
そいつはすっかりびびって、以来苛めてこなくなった。それを見ているやつらも苛めてこなくなったなあ、さすがに。この世の中は理不尽なことが多い。「こいつはいじめても大丈夫」「こいつはいじってもOK」そんな軽い感覚で、人を苛めたり、いじったりする。
まったくリスキーな考え方だぜ。苛めているそいつが、実は格闘技を習っていて強かったらどうする?もし、頭がすごくよくて、仕返しの方法を組み立てていたら、どうする?将来偉くなって、潰されたりしたらどうする?
俺はさ、おつむは馬鹿じゃないから、そういうことを考えて手を出さないだけさ。でもあんまりひどかったら、右ストレートでうちのめすだけだが、そんなのは一回見せればいい。
苛めてるアホなやつらを見ていると、リスキーなお馬鹿たちだと思うだけだ。もし自殺なんてされてみろ。たちまちニュースになって、テレビじゃ未成年ってことで顔は映らんが、その時点で情報を収集しているネットの人たちがいて、顔を醸されちまうんだぜ。
まあ、俺の言いたいことは、そういうわけで、苛めてるほうがむしろ、リスキーだから、苛めるのはやめておけってことだな。イライラする自分の感情が抑えられなかったら、ボクシング習ったり、その情熱を違うところで使えばいいさ。そうだな、トライアスロンなんてどうだ。やっているうちに疲れてきて、怒りもなくなってくるだろう。
苛めはなくなったけど、誰も近寄ってこなくはなったな。もともとひとりが好きだからそのほうがいいんだけど。よく「ぼっち」って聞くけどさ、好きでやっているやつも多いぜ。一人が心地いいっていうか、なんでもかんでも群れているやつがアホくさいっていうか。もちろん、群れなきゃならんときは群れるけどさ、それ以外は、気持ちいいんだよ。「ぼっち」ってやつが・・・。 今日もひとりで講義を受けて、ひとりで飯を食って、ボクシングのジムに行く。
「おう、来たか!」
「早速、やろうぜ!」
ジムにいけば、たくさんの友達がいる。スポーツ仲間っていうのはいいよな。皆、前向きだし、一緒にいて気持ちいいよ。
そのあと俺は「友達がいない」って噂を流されたが、ジムに行けばたくさんの友達がいるから気にしてない。
だいたい噂を流すやつらも、アホだから、深い推察なくそういうことを垂れまくる。これも実にリスキーだ。本当のことを知っているのか?推測だけで流すやつらは馬鹿としかいいようがない。今度ボクシングジムの友達を全員連れて行ってやろうか。
というわけで、俺は大学のやつらが考えているほど、孤独でもないし、充実している。先入観でなにもかも決めるのはやめろって言いたいが、アホには何度言っても通じんだろう。充実した生活があるから、誰が何を言おうとどこ吹く風さ。なんとでも言っとくれ。
俺は俺、人は人だ。絡んでくるやつらは暇なのかなと思う。人を引きずりおろす暇があったら、俺は右ストレートを磨きたいけどな。
うざいやつらは無視でもいい。今日も俺は、俺の武力を磨くためにジムで汗をかく。
『頭のいい人ってどういう人のことだと思う?』
ジムの友達は、『教科書を一目見ただけで理解できる人』と言った。
またある友達は、『決断が早い人』と言った。
俺はさ、『先の先まで読める人』だと思うんだ。ボクシングだって、相手がどうかかってくるか予測して動いているだろう。先の先まで読めたら、苛めとかいじりとか、やってる暇ないと思うんだが。
その場の感情に流されて、先が読めずに、悪口垂れ流すやつがかわいそうだな。
悪口や苛めやってる暇があったら、「先を読め」って思っちまうぞ。
『安全』っていうのはな、きっと、先の先を読むことだと思うんだ。俺はさ、いつも先を読んで、今の帳尻をつけているんだ。まあ、「今」を楽しむことも大切だけどな。
んなわけで、俺のチョーバカな頭で持論を展開したけど、特にたいしたことは言ってないから、気にせんでおいとくれ。ちょっとした暇つぶしさ。
今日もボクシングで汗を流してすっきりしたぜ。人ってもんはさ、深く付き合ってみないとわからないものさ。だから、俺は軽々しく、人のことを口にしないんだ。
(お題:元気な天井 必須要素:右ストレート 制限時間:1時間 文字数:2029字 )
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