勇者を殺した人類最強の敵、魔人。生贄の烙印を刻まれた幼馴染の聖女と共に、石工職人の僕は解呪の為、長い旅に出る。自分の実力が、勇者以上であるとは気づかずに。

「黄金の聖女シャラン……俺と一緒に、魔人討伐隊に参加して下さい」

村に来た勇者と名乗る男が、僕の幼馴染を前にして膝をつく。　
シャランには生まれつき傷を治す、不思議な力が宿っているんだ。
治す時に、黒い髪が黄金に輝くから、【黄金の聖女】と呼ばれている。

「俺は、魔人を倒すためではなく、貴方を仲間にする為に、勇者になった」

歯の浮いた言葉を吐きながら、シャランへと手を差し伸べる。
一緒に行って欲しくなかった。僕の側にいて欲しかった。
だけど、シャランは――――

「……はい、わかりました」

――――彼女は、勇者の手を取った。

勇者の手を取りながらも、彼女は僕を見て、優しく微笑む。
その笑顔を信じて、僕は彼女の帰りを待つことにしたんだ。

そんな彼女の訃報が、僕の耳に飛び込んできた。
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