第19話

 カズアキは教室に戻った。

 すると、教室にはなぜかミラとユメの二人だけがおり、自分の席で弁当を食べていた。

 ミラがいつも一人で弁当を食べているのは知っていた。しかしなぜユメが一人で……ユメは友達も多かったはず……。カズアキはユメのことが気になりながら、席に戻る。そして、弁当を出して一人で食べ始めた。

 すると、タカノリがカズアキを探して教室に戻ってきた。

「なんだ、教室で食べてたのか。探したよ。急に教室出ていくから」

「あ、ごめん。ちょっと用事があってね……」

「みんな、お前と食べたいって言ってるぞ。一緒に来いよ」

「……いや、僕はいいや……」

 タカノリの表情が険しくなる。

「なんだよ、こんなとこでぼっち飯食べんのか? お前も来ないと、朝話した満島みたいになっちゃうぞ」

 冗談っぽく話すタカノリ。その会話が聞こえ、ミラとユメが我慢できず同時に立ち上がろうとする。しかし、それよりも早くカズアキが立ち上がった。

「僕は変わる……」

「ん? 何だって?」


「僕は……カオルと友達だったんだ」


 ミラとユメは驚いてカズアキを見る。

「お前とカオルが友達……?」

「そうなんだ」

「でも、お前って学校も違うし、どこで……」

「それは……僕とカオルの母は姉妹でね。従兄弟なんだ。でも従兄弟っていうより友達みたいだった」

「そんな……あいつに水無月以外の友達がいたなんて一回も聞いたことない……」

「そんなに彼のこと詳しいの? 嫌いだったのに?」

「い、いや……」

「僕は、僕の友達のことを『ぼっち』だって笑ってバカにするような人達と一緒にお昼食べることできないよ。それで僕に友達ができないんならそれでもいい。僕はカオルとの友情をとるよ。せっかく誘ってくれたのに、ごめん……」

「……ああ、わかったよ」

 そう言って、タカノリは教室から出て行った。

 カオルは勇気を出して誘いを断ったが、その後、手が震えて弁当を食べることができない。

「今日は弁当を食べれそうにないや。母さんごめん」

 そう言って下に置いてある鞄を取ろうとすると、横に立つ誰かの気配を感じる。

驚いて顔を上げると、そこにはユメが立っていた。


「さっきはごめん。黒板見えなかったらいつでも私の隣に来てくれていいから。机の上の花も片付けたし」

 カオルの席だった机の上にある花は、毎日ユメが置いていたようだ。

 ユメは恥ずかしそうにしながら、自分の席に戻っていった。

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