第24話

「クラブ入ってないの、この五人だけだってさ。なんか笑っちゃうなぁ。あはは~」

 タカノリが呑気に笑っていると、ユメが噛みつく。

「笑ってる場合じゃないでしょ!」

「すいません……」

「まいったわ……二年から突然クラブだなんて」

「あれ? 花月はバイトしてたっけ?」

「してないわよ……」

「それじゃ、別にクラブ入るの難しくないだろ」

「そういう問題じゃないわ。私も、その……いろいろ忙しいのよ」

すると、ミラが横から突っ込みをいれる。

「違うでしょ。最近周りから仲間外れにされてるから入りにくのよね」 

「はい、そこ! そういうとこ! デリカシーない!」

「まあまあ……」

 タカノリは間に挟まれ、あたふたしている。

「あなたにデリカシーのことを言われるなんて驚きだわ……」

「私はデリカシーが服着て歩いてるような――」

 カズアキは見ていられず、ユメの肩をつかんで止めた。

「ちょ、ちょっと待った、待った! もめるのはやめて、今はどうやって乗り切るかみんなで考えようよ。ね?」

ユメはカズアキの顔を近くで見て恥ずかしくなり、顔を背けて話を変える。

「み、水無月さんはどう思う?」

「そうですわねぇ。文科系で、部員も少なくて、活動日数も少なくて、幽霊部員もOKのようなクラブを探すのはどうかしら?」

「あははは。そんな奇跡のような部ないでしょ」

「ふふふ。水無月さんって面白い人ね」

「どうしてかしら? 私はみんなが希望しているような条件をあげてみただけで――」


 ミラとユメがサヤカやタカノリと話して笑っている――。

 カズアキは、横でみんなのやり取りを見ているうちに、この五人が集まって話していることの偶然に奇跡を感じた。そして、自然と笑顔が止まらなくなる。ずっとこの五人で楽しく話ができたら幸せだろうなと考えていた――。

「どうしたの? 桜空くん。何か思いついたの?」

 ずっとニヤニヤしているカズアキにユメが反応した。

「え? いや違うんだ。一年のときは、みんなが話してるのあんまり見たことなかったけど、実は仲いいんだね」

「今は仕方なく話しているだけでしょ……」

 恥ずかしそうに否定するユメ。

「でも、こうやって話できるなら、みんなが同じ部なら良かったのに――」

 そのとき、カズアキにふと、一つのアイデアが浮かんだ。

「これいいかも……」

「なんだ、どうした?」

「そっか……そうだよ。この五人で部を創ったらどうかな?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいな。この五人でどんな部を創ろうというのかしら?」

「水無月さんがさっき言っていた、文科系で、部員も少なくて、活動日数も少なくて、幽霊部員もOKなクラブだよ」

「あははは、なにそれ! うける!」

 ユメが爆笑している。

「ふふふ。そんな部が創れるなら、是非私も入部したいわ」

 ミラのその言葉を聞いて、カズアキは俄然やる気が出てきた。

「わかった! 雨宮先生にかけあってくるよ」

「ちょ、ちょっと本気ですの?」

「なんだよ、反対なの?」

「い、いえそうではなくて、それっていったい何部ですの?!」

 サヤカの突っ込みに全員が爆笑した――。


「あははは。そうだね。何部か決めてなかったね。危うく撃沈するところだったよ。ありがとう」

「あなた、その見た目で結構おバカなのかしら……。でも、部を創るという案には私も賛成しますわ」

「俺も賛成だ! なんか楽しそうだし。ミーヤの説得は俺に任せろ」

「あんたさっき、説得失敗してたじゃない」

 ユメに冷静に突っ込まれるタカノリだったが、新しい部を創ることに興奮している。

「いや、さっきは突然のことでうまくいかなかったが今度は失敗しない。俺の頭脳をなめるなよ。事前に準備さえしてれば絶対に失敗はない!」

「す、すごい自信ね……」

「で、花月は賛成なのか?」

「まあ、私も賛成……。でも本当にそんな部が創れるのなら、だけど」

 すると、何かをじっと考えていたカズアキが、突然何かを思いついた。

「そうだ!」

 皆驚いて、カズアキの顔を見る。

「みんな、提案があるんだけど!」

「なんだ、発案者! いいこと思いついたのか?」

「うん。みんな、さっきの水無月さんが言った条件に近くて、この五人で活動ってことならどんな部でもOKだよね」

「まあ、そうだよな」

 全員顔を見合わせて頷いている。


「よし! 決めた!」


「何?」


「友達部だ!」


「……へ?」


 全員、カズアキの提案に絶句した――。

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