第39話
「よ、よろしくお願いします!」
次の日の放課後。
友達部の部室では、タマミが五人に深く頭を下げている。
それを見て、ユメが驚いて確認する。
「も、もしかして友達部に入ってくれるってこと?」
「はい。雨宮先生に先ほど入部届をもらってきました。後は先輩方と話をするように言われたんですけど、僕は入部資格を満たしてますでしょうか……」
すると、またミラがデリカシーのない一言を言い放つ。
「あなたは友達ゼロなのわかってるから、即で入れるわ」
「はい! また出た! そういうところ全然変わってない!」
そしてまた、ユメと言い合いになる。
「それじゃあ、友達部にはどういう人が入れるのかしら?!」
「それは、友達がいない人……ってそうだけど、言い方の問題!」
「ふふふ……」
二人の言い合いを見て、タマミは笑い出した。
「先輩達って本当に面白くて仲がいいんですね」
「仲がいい? 私とこいつが?!」
すると、見かねたカズアキが、二人の間に割って入る。
「まあまあ、ちょっと待ってよ。まずは入部を喜ぼうよ」
「そ、そうね……。部長としたことが、取り乱してごめんなさい」
ミラから離れ、落ち着いたユメが話をはじめる。
「えっと、綾瀬……くん。サッカー部はどうしたの?」
「さっき退部届出して辞めました。それで『僕を信じてくれない部にはいたくありません』って顧問の先生に言ってやりましたよ。ちょっと怖かったですが……」
「おお、かっこいいね! それでこそ男だ!」
タカノリが親指を立てて称賛する。
「そう。それじゃ、心残りはないのね」
「はい。この前は先輩方に嘘をついてました。本当はサッカー部ではずっといじめられてたんです。でも母に心配かけまいと辞めずに続けてたんです」
「やっぱりそうだったの」
「でも、昨日母に正直に全て話ました。それで友達部の話もしたら、母も友達部に入ったらって言ってくれて……。もっと早くこうしておくべきでした。みなさん、スパイクの件も本当にありがとうございます」
「ええ? どうして私たちにお礼言うのかしらぁ?」
ユメはわかりやすく動揺している。
「だって、届けてくれたのは星川先輩だったんですよね」
「あら、ばれてたの」
するとサヤカが険しい顔をしている。
「だから、私はミラに行かせるのは反対だと言ったのですわ……。こんな目立つ顔の人が言ったらばれるのは必然でしょう。この部で一番普通なのは私なんですから、私が行くべきだったんです」
「サヤカが行っても話し方ですぐにばれるでしょう。あなた、クセの塊なんだから」「それじゃあ、俺がよかったんじゃね?」
「チャラ男はうるさい!」
「はい、すいません」
「ふふふ。先輩方なら誰が来てもすぐにわかりますよ」
「え? そうでしたの?」
「だって僕、先輩方の写真持ってますから」
「どうしてですの?」
「この前、桜空先輩の写真撮ったときに、みなさんも映ってましたから」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕のこと、隠し撮りしたの?!」
「そんなことより、私たちカズのオマケにみたいに言わないでくださる?!」
「それよりも、男のタマミががカズの写真撮ってることに誰か突っ込めよ!」
タマミは笑って五人と話ながら、その時間がとても居心地よく感じていた――。
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