第27話

 玄関が開きドタバタと廊下を歩く音がしたかと思うと、リビングの扉をバンッと開けて、カズアキ達が入ってきた。

 四人が突然入ってきたことで、サヤカは驚いて目を丸くしている。

「ど、どうされましたの? 皆さんで」

「いや、こんなメモ残すから!」

 カズアキはサヤカが書いたメモを見せた。

「ああ、メモに気づいてくれたんですね。カオルのことを思い出したので、一度を拝ませていただこうと……」

「そういう意味だったんだね……。ちょっと勘違いしちゃったよ」

サヤカが仏壇の前で座っているのを見て四人はほっと胸を撫でおろした。

「勘違いって……。ああ、私がカオルの後を追うんじゃないかと……。この言葉だけだと、確かにそう読み取ることもできますわね。ごめんなさい……」

「いや、いいんだよ。とにかく無事で良かった」

 サヤカは優しく頷いて微笑む四人を見て、目から涙が溢れそうになる。

「本当に……彼が亡くなってからは、泣かされてばかりですわ」

 それを見て、タカノリが口を開く。

「二人は本当に仲が良かったんだな……。俺、昔カオルに二人の仲のことを茶化して悪く言ったことがあってさ……。悪かったよ……」

 そう言って、タカノリは仏壇の前に座って両手を合わせた。ユメとミラも順番に拝み、フレイアはありがとうと頭を下げた。

 そしてカズアキは、最後に線香をあげた後、サヤカの前に座った。

「水無月さん……さっき先生に言ってたことって、どういう意味だったのかな。友達部のことで、『私にできるかどうか』って言ってたけど」

「ああ、あれですか。あれはその言葉の通りで。私は自信がなくって」

「自信って何の?」

「私に新しい友達がつくれるかどうか……ですわ。カオル以外の人と打ち解けて友達になれる自信がまだないんです」

「そうだったんだ。ごめんよ。そんな気持ちも解らずに、気楽に友達部なんて提案してしまって」

「いえ、友達部はとてもいい考えだと思いますわ。だから諦めないで欲しい。これは私個人の問題ですから」

「友達になる自信がないっていうのは、話す勇気が出ないってことかな?」

「それとは少し違うのかもしれない……私の性格はいろいろと厄介なんです。でもカオルだったから友達になれたのかもしれない。他の人とも同じようになれるのかわからなくて……」


「それは大丈夫だよ。僕たちと友達になれたんだから、全然大丈夫だよ!」


「え? 私と皆さんが……?」

「なんだよ、俺たちまだ他人だったのか?」

「陽木くん……?」

「私も友達だと思ってたけど……」

「星川さん……」

「私も……右に同じよ! そんなのあらたまって言わなくてもわかるでしょう」

「花月さんも……」

「あははは。水無月さんは確かに厄介な人だね。昨日あれだけいろいろ話しして一緒に部も創ろうって言ってるんだし、わざわざ宣言しなくったって、こうやっていろいろ話してるだけでもう友達ってことでいいんじゃないのかな。駄目なの?」

「こ、これで拒否したら、私は頭がおかしいでしょう! ――って、カオルとも同じことを話したような……」

「明日から、一緒にお昼食べよう!」

「お、桜空くん……?」

「こ、これ以上、水無月さんをカオルに独占させられないからね」

「あ、あなたは何を言ってるのかしら……?!」

「俺も一緒に食うよ」

「じゃあ、私も」

「しょうがないわね。私もそうするわ」

「みんな……」

 フレイアは五人のやり取りを少し離れたところで聞いていた。カズアキの新しい人生に素敵な仲間ができているとわかり、目から涙が溢れた――。


「それじゃ、これでもう大丈夫かな? なんか安心したらお腹減ってきたな。ねぇ、母さん。みんなに何かお菓子でも――」

「母さん?」

 ミラが聞き逃さず鋭く突っ込む。

フレイアは『何をやってるの』という様子で頭を抱えた。

「ちょっといい? 今度は、桜空くんにいろいろと聞きたいことがあるんだけど」

 ユメが恐ろしい顔で仁王立ちしていた――。

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