第41話
「おい綾瀬! お前、ちくったりしてねえだろうな!」
「僕は何も言わないよ……黒澤くん」
「この前、顧問に殴られたんだよ! お前が退部したのは俺がいじめたからだろうってな。あいつに何か言ったんだろう! 俺も退部になったらどう責任とってくれるんだ、こらぁ!」
学校の渡り廊下で黒澤という生徒にタマミがからまれている。友達部に入った後も、相変わらず隠れていじめは続いているようだった――。
「お前……本当に女みたいな顔しやがって、本当に付いてるもの付いてるんだろうな」
「やめてよ」
「俺が確認してやるよ!」
「嫌だ……やめてよ」
黒澤は強引にタマミの服を脱がそうとする。
すると、そこに偶然ミラが通りかかった。
「ちょっと、何してるの?」
「先輩!」
「なんだよ、お前?!」
生徒はミラの胸倉をつかんだ。
「あなた、彼のスパイクを盗んで捨てたクズ野郎よね」
「な、なにを言ってんだ……」
「クズ野郎のあなたがクズ仲間と部室でバカみたいにペラペラと大声で話してたのを全部聞いたわ。録音もしてるのよ。二度と彼をいじめないと誓ったら誰にも言わないわ」
本当は録音などしていない。それは、ミラのハッタリであった。
「そ、そんなわけねえだろう。証拠見せてみろよ!」
「あなたに交渉する権利あると思ってるの? 私は別にすぐに先生に提出してもいいのよ。クズの人生などどうでもいいけど、私は優しいから最後のチャンスあげてるのよ」
「嘘だ……。録音なんてしてるわけねえ……」
「先輩、駄目です。逃げてください!」
「うるせよ、お前は!」
――黒澤は振り向いてタマミを強く殴った。
タマミは壁まで飛ばされ激突し、うつ伏せに倒れる。
同時にミラは、背中を見せている黒澤に向かって、指で何かの模様を素早く描き魔法を詠唱した。
すると黒澤は、白目をむいて一瞬でブラックアウトし廊下に倒れ込んだ……。
――ミラはカオルのことがあってから、外で一切魔法を使っていなかった。しかし、タマミが殴られるのを見て、咄嗟の判断で使ってしまったようだ。倒れていたタマミに見えないように詠唱したので、タマミは気づいていなかった――。
「うぅ……。せ、先輩! 大丈夫ですか?! ……あれ?」
「ふふふ。彼は私が倒したわ。後頭部を強くスマホで殴ったら簡単に倒れちゃった」
「先輩、めっちゃ強いんですね……」
「私は彼を見張っておくから、ミーヤを呼んできてくれる? 彼はしばらく起きないでしょう」
「わ、わかりました!」
タマミが職員室に向かって走り去っていく。
そのとき――反対側から人の視線を感じた。
ミラは、魔法を誰かに見られてしまったと焦って振り返る。
すると、そこには驚いた顔をしたカズアキが立っていた――。
「カズ……見たの?」
「え? な、何のことかな? 何も見てないよ。ははは……」
カズアキはかなり動揺している。それは明らかにミラの魔法を見たとわかる表情だった。
「カズ……。ちょっと話が……」
「い、いや、僕もちょっと用事が……。職員室に呼ばれててね。後でいいかな?」
「待って!」
カズアキが振り向いたその瞬間――世界全ての時間が停止した。
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