第12話

「実は……な。できれば言うなとは言われてたんだが……」

 アトリアは頭をかきながら、重たい口を開いた。

「なんでしょうか……」

「いや、しかし……」

「……? どうされましたか?」


「我々女神には、人類を蘇生か転生させる魔法がある……」


「そ、そんなことは初めてお聞きしました! それは眷属となった私にも――」

「まあ、まあ。話は最後まで聞け。眷属のお前でもその魔法を使うことはできる。しかしその代償として、使った者の身体は神上がりしてしまい、人間の魂だけが残る」

「それは……人間になる、ということですか?」

「そう。ただの人間になる。当然魔法も使えなくなるし、永遠の命も無くなる。見た目だけではなくて本当に歳をとっていつか死ぬのだ」

「わかりましたので、すぐにその魔法を教えてください!」

「ちょ、ちょっと待てフレイア。今の話を聞いていたのか?」

「ちゃんと聞いておりましたよ……。でも、カオルが生き返るのなら、そんなこと全く問題ではありません。さあ早く!」

「やはり、懸念していた通りの答えだな……。お前は心だけはすでに人間になっているようにみえる」

「そんなことより、早く教えてください!」

 フレイアは目を輝かせながら身を乗り出して詰め寄った。

「わかった! わかったがすぐに決めることはない。人間が天界に着くまで七日あるのは知っているだろう。それまでに蘇生すれば間に合う。だから一度冷静になってよく考えるんだ。お前には永遠の命もあるし、人間としての年齢も自由に変えることができる。また新しい人を見つけて子供を授かることもできるのだぞ」

「そんなことは、考えられません。カオルの代わりはおりませんので……」

「わかった……。まあ、この件はまた明日話することとしよう。今は病院に行くのだ」

「そうですね……。でも一つ問題が……」

「なんだ?」


「カオルが生き返るとわかっていて、どういう顔で病院に行ったらいいのか。私、遺体の前でニコニコしてしまいそうで……」


「知るか!」

そう言って、アトリアは姿を消した――。

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