第8話
数日経ったある日、カオルは屋上でいつものようにサヤカと昼食をとっている。
「あのさぁ。友達って恋バナとかするよね」
「なに突然……。まあ、友達ならそんな話もするとは思うけど、カオルには縁の無い話ですわね」
「それってお互い様なんじゃ……」
「私は本気出してないだけだから」
「くっ! それに強く反論できないのが悔しいけど……」
「それで、何の話でしたか?」
「それがさぁ。あの……」
「なによもったいぶって。好きな人でもできたってことかしら?」
「ええ? よくわかったね!」
「だって、あなたが告白されることなんてありえないでしょうから。その逆しかないでしょう」
「そんなはっきり言わなくても……。でも、やっぱり僕が告白とかしたらおかしいかなぁ」
「まさか、告白するおつもり?」
「どうしようか迷ってるんだけど、なんだか気持ちだけでも伝えたいかな……」
「そう……。まあ、いいんじゃないかしら? お断りされることはわかってるんだから、告白する前と後で、世の中は何も変わりはしないわ」
「ひどいな!」
「それじゃあ、自信があるってことかしら」
「いやいやいやいや、自信はないんだけど、最近なんかいい感じでお話ができてて」
「よくある『もてない男の勘違い』でなければいいのだけど……」
「うっ……。やっぱりそうなのかな……」
「でも、当たって砕けてきなさいな。傷ついても、私たちの友達関係は変わらないのだから、またここに来て泣いて報告すれば慰めてあげましてよ」
「その失敗する前提の話し方がとても気になるけど……まあ、ありがとう。でももし、万が一、万が一だけど……向こうも好きだったらどうしよう」
「それならお付き合いすればいいだけでしょう。あぁ、でもそうなったら一緒にお昼食べるのも彼女さんに悪いから、この友達関係も終了かしら……」
「そ、そんな! サヤカがいないと困るよ!」
立ち上がり声をあげるカオルを見て、サヤカは顔を赤くしている。
「ちょ、ちょっと何を大きい声で言ってるの! かなり恥ずかしいわ!」
「ごめん……」
カオルは周りを見渡して、恥ずかしそうに席に座る。
サヤカはお茶を一口飲み、コホンと咳払いした。
「まあ、それは成功したとき考えるとして、それで……お相手は誰かしら? 花月さん?」
「な、なんで花月さんなんだよ!」
「あら、今日は『ユメ』って言わないのね……。カオルは彼女に好意があると思ってたけど」
「花月さんにはこの前『もう話かけないで』って言われたよ! 今までいろいろ言われてきたけど、あんなこと言われたの初めてだったし。その後は向こうから何も話してこなくなったしね……」
「そうなの……。それで、誰?」
「えっと……。ほ、星川さん……」
サヤカはそれを聞いて、少しほっとしたような表情をして熱いお茶をすすった。
「あなた……チャレンジャーね。見事に当たって砕けてきなさいな」
「そんなの、当たってみないとわからないよ」
「そんなのあたなが投げたボールを、プロ野球選手が三振するくらいの確率でしてよ」
「それ、ゼロじゃないか!」
「ゼロとは限らないでしょう。偶然、目にゴミが入ることもありますしね」
「なんだよ、それ……」
「私は応援してるから。また楽しいお知らせ待ってますわ」
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