第18話
休み時間にタカノリが学校を案内してくれることとなった。タカノリだけでなく、カズアキに興味ある女子生徒も三名ほどついてきている。
「あの……さっき、席のことで何か怒ってたようだけど……」
カズアキは、それとなくユメのことを質問してみる。なぜ、ユメがあんなに怒ったのか。自分が死んでからクラスがどういう状況になっているのか気になっていた。
「ああ、あれは花月だよ。隣の席に元々いた奴が少し前に事故で死んだんだ」
「花月さんはどうして怒ってたのかな……」
「あの席にいたやつは、花月の幼馴染だったから席を残したかったんじゃないか」
するとついてきた女子生徒達が次々と補足する。
「それは無いんじゃないの~」
「そうよねぇ。だって、花月さんってずっと満島くんのこといじめたし」
(あれはいじめじゃなかったと思うんだけどなぁ)
カオルは、そう言いたかったが我慢した。
「満島くんか……」
「そうよ、満島カオル。彼女、ずっと彼には悪口言ってた印象しかないよ」
「それは花月だけじゃないだろ。満島はみんなに嫌われてたからな。ずっとぼっち状態だよあいつは」
「陽木くんも……その満島っていう子のこと嫌いだった?」
「……ええ? まぁ……そりゃあ……」
「あいつ好きなやつなんていたの? ああ、水無月お嬢様?」
カオルは胸が苦しくなり、拳を強く握りしめた。
「満島はいつもウジウジしてイライラしてたんだ。あんなやつと仲良くしたら、こっちもぼっちにされちゃうよ」
「もう、陽木くん、死んだ人のこと悪く言い過ぎ! 水無月さんと花月さんに聞かれたら怒られるわよ」
「おぉ、怖い怖い!」
タカノリ達はそう言って笑いだす。そして、その話に合わせながら、無理に笑い顔を作るカズアキがいる。
愛想良く振る舞う自分が、廊下の鏡に映った。
顔は変わっても本質が何も変わっていない自分の姿に気づき、自己嫌悪に陥るのだった。
*
昼休みになった。
皆、カズアキのことも気にせず、すぐに教室から出て行ってしまう。
多くの生徒が学食か教室の外で食べているようだ。
カオルのときはいつも屋上で弁当を食べていたが、今日からどうしようかと考えるカズアキ。すると、サヤカが弁当箱を持って教室から出ていくのが見えた。カオルが死んでからサヤカはどうしているのか気になっていたカズアキは、すぐに後を追った――。
サヤカを追っていくと、やはりそこは屋上だった。
そして二人で弁当を食べていたベンチへ向かうと、サヤカはそこに寂しそうに一人座って弁当を食べていた。
カズアキは、サヤカならおそらくそうだろうとは思っていた。しかし、予想していたことではあったが、実際に自分の目で見ると胸がとても苦しくなった。
急に友達がいなくなったサヤカは、どういう思いで過ごしていたのだろうか。気がつくと足が自然とサヤカの方向に向かっていた。
屋上にカズアキが現れ、驚く女子生徒達。カズアキが転入してきたことは、すでに学校内で噂となっていたのだ。
カズアキは、ざわつく声を気にせずにサヤカのもとへ向かう。そして、何も言わずにサヤカの横に座った。驚いて横を見るサヤカ。
「あなた……転入生ですわね」
「うん。桜空です。よろしく」
「申し訳ないけれど、その席は先約があるからどいていただける?」
「ご、ごめん……そうなんだ。誰か一緒に食べてる人がいるんだね」
「一緒に食べてる人はいないわ」
「え、それじゃあ――」
「そこは、死んだ私のお友達が座る席なの。ごめんなさいね」
カズアキはその言葉を聞いて、我慢できずに涙がこぼれた。
「あ、あなた、泣いてるのかしら! そんなに気に障ること言ったかしら?!」
焦るカズアキは慌てて涙を拭く。
「い、いや、違うんだ! ちょっと目にゴミが入っただけで……。ごめんよ、水無月さん!」
茫然とするサヤカを残し、カズアキはその場を走り去った。
「あの人、どうして私の名前を……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます