第30話

「よし、これでいいでしょう!」

 提出する書類の多くの項目を書き終わり、ユメはパンッと手を叩いた。

「じゃあ、これ。明日提出するから、またミーヤを説得してね」

「わかった。任せろ。あれ? 部長と顧問の欄が空いてるぞ」

「ああ、そうだ。後で決めようと思って空けてたんだっけ」

「顧問って必須なんだよな」

「頼む相手って一人しかいないんじゃない?」

「そうだね」

「そうですわね」

「はい。それじゃあ、『雨宮先生』っと」

 ユメはミーヤの名前を書いた。

「後は部長を決めて終わりね。でもこれはカズアキでいいんじゃない?」

「いやいや僕じゃないでしょ!」

「どうしてよ、あなたが発案者なんだから」

「僕に部長は務まらないよ。ガラじゃないし」

「じゃあ、誰?」

「もちろんユメでしょう!」

「私?!」

「みんなもユメが部長で問題ないよね?!」

「全然問題ない!」

「わたくしも賛成ですわ。ミラは?」

「私もユメがいいと思う。カズアキは顔以外頼りないし、タカノリはチャラいし」

「くっ!」

「うっ!」

 二人は言い返せない。

「ちょっと待ってよ。どうして私?」

「自分で気づいてないだろうけど、ユメは部長が似合ってるってことだ。嫌なのか?」

「まあ、みんながそう言ってくれるなら……やるけど」

「でも、明日ミーヤに駄目といわれたら俺たちも解散! だけどな」

「そうだね。でも僕はこうして集まれただけでも良かったと思うよ……」

 カズアキはそれ以上何も言わなかったが、皆、気持ちは同じだった。



 次の日の職員室。ミーヤの前に横一列で並ぶ五人。

 ミーヤは提出された資料を一枚ずつめくりながら、じっくりと目を通していく。そして全てを読み終わり、ふうっと一息ついた後で生徒達の方を向いた。

「わかりました。ちょっと怪しい部分もありますけど、これで承認しましょう」

 責任者のミーヤ先生が資料を承認したことで、晴れて『友達部』設立が決定した。

「ほんとですか?! やったぞ、おい!」

 タカノリが喜びの声をあげ、他の四人もハイタッチして安堵の表情を浮かべている。

「でも、ちゃんとした活動がされてなかったり、部員が四名以下となったりしたら廃部ですからね」

「わかってます。ミーヤ先生も顧問よろしくです!」

「え?! ちょっと待ってください。私が顧問?!」

「そうですよ。先生の名前書いてるでしょう」

「私、一度も頼まれてないんですけど!」

「でも、先生しかいないって全員一致の意見です。お願いします!」

 タカノリは頭を下げたのを見て、他の四人もすぐに頭を下げた。

「……わかりました。友達部が何なのかまだよくわかってないところもありますが、本心としては少し期待している部分もあります」

「先生……」

「友達ができない問題っていうのはね……。情けなくて悲しいけど、教師だけではどうしようもないところがあるのも事実……。期待してますよ、みんな!」

「はい。任せてください!」

「ほんと、調子いいわねぇ。あ、そうだ。来週月曜に一年生の前でクラブ説明会があるから。部長さんは準備しておいてね。各部ごとに五分ありますから。パワポとか使ってもいいですし」

「わかりました。後はユメ部長が何とかします」

「まじですか……」

 ユメは喜びが一気に消え去り、不安が大きくのしかかってきたのだった。

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