第3話
カオルはミラに、朝かばってくれたことの礼を言おうとするが、教室では人の目がありうまく言い出すことができなかった。そして、そのまま放課後になってしまう。
仕方ないと、校門を出て少し離れたところでミラを待つカオル。なるべく人がいないところで話ができるようにと考えたからだ。
すると、五分ほどしてミラが校門から出てきた。カオルは自動販売機の陰に隠れ、前を通るのを待つが、いざ本人を目の前にすると緊張して声をかけることができない。そしてそのまま、ミラは角を曲がって消えてしまった……。
(だめだった……。仕方ない。今度、バイトのときにするか……)
カオルはふぅっとため息をつき、肩を落としてゆっくりと歩き出す。
そして角を曲がると、そこにミラが一人で立っており、鉢合わせするかたちとなった。
「うわぁぁぁぁぁ!」
驚き、大声を出すカオル。
「そんな、お化けでも見たみたいに」
冷静に突っ込みをいれるミラ。
「ほ、星川さん……。えっと……誰かと待ち合わせ?」
「違うわ。あなたを待ってたのよ」
「ええ?! 僕を?!」
「あの……今日はごめんなさい。あなた、花月さんと仲がいいんでしょ? なんか、二人の関係もよく考えずに横から余計なことを言ってしまって。迷惑かけたんじゃないかと思って気になってたから」
「い、いや僕はユメと仲良くなんてないよ! 逆にとても嫌われてるんだけど……」
「そうなの……?」
「それに、星川さんが謝ることなんて何もないよ。僕は昔からずっとあんな感じで言われ続けてたけど、初めて誰かにかばってもらえて、うれしかったんだ。ありがとう……」
「そう……。それならよかったわ!」
そう言って、ミラは朝に見せたあの笑顔を見せた。
とてもかわしく、そして綺麗で最高の笑顔だ。
ミラは軽く手をふり、振り向いて帰っていくが、カオルはその笑顔に心が射抜かれ、またしばらくその場から動くことができなかった……。
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