第46話 しおりの卒業式 EP追加
「おねぇちゃーん。」
朝から、元気いっぱいに、
しおりが、走ってくる。
今日は、しおりの、短大の卒業の日。
「混む前に写真撮ろうか?」
りさが、あたしと、しおりを見て、
そう提案してくれる。
「そうだね。写真撮ろうか。」
そこに、しおりの、両親が来て。
あたし達三人を、卒業式の立て札の
前で、「カシャッ」と一枚。
今度は、代わりに、あたしが、
しおりと、両親とで、一枚。
「おねぇちゃん。また、後でね。」
そう言うと、両親に手を振りながら、
しおりは、そのまま、卒業式に、
出るために、校内に入っていった。。。
少し、しおりの、両親と雑談をして、
りさと、校門の脇にもたれかかって、
しおりの、通った、
大学を見上げながら、
「大学かぁ。。。」
とポツリ。
それを、聞いたりさも、
「お姉ちゃん達の、
力になりたいかぁ。本当に、いい妹を、
持ったね。あたし達。」
と、あたしを見て話す。
「そうだね。自分の進路まで、
あたし達に寄せて考えるんだから。」
「そうだね。実際しおりは、
凄いよ。もうさ、身内と言うか、
妹って、本当に思ってるからね。
あたしも、あけみも、諦めた、
家族って言うのが、
しおりと、出逢って、色々あったけど、
それが、あって、考えた時間が、
あったから、今があるんだよね。。。」
そんなりさの、優しい顔を見ていると、
あたしも、「ふふっ。」と、
幸せな気持ちになる。
「なぁに?その、ふふって?」
「だってね、りさが、あんまりにも、
優しい顔をするから。
りさ、前よりもずっと、素敵に、
なったよね。」
「あけみだって、前よりもずっと、
優しくて、頼りになるお姉ちゃんに、
なってるから、あたしは、
もうさ、何て言うか、今は、
とても、幸せにして貰ってるもん。」
「ふふっ。それは、あたしも、
同じだよ。そろそろ、行こうか、
しおりの所に。」
「そうだね。お姉ちゃん。」
りさと、
二人で、学校の体育館までの、景色を、
眺めながら移動して、
なるべく、前の方に座った。
すぐに、りさが、
「あそこに、しおりいるよ。」
って見つけた。
「ほんとだね。しおりって。。。
やっぱり、一番小さいね。」
「ふふっ。小さいって言うと、
怒られるよ。」
「そうでした。お姉ちゃん失言でした。
一番、可愛いだね。」
「そうだよ。」
少しすると、
卒業式が、始まって、
生徒達が順番に、
呼ばれて、ゆっくりと、
壇上に上がって、卒業証書の授与が、
行われた。。。
壇上に、ひときわ、可愛い妹。
「はい。」と言うのも、
可愛くて。。。
あたし達は、じっと見ていた。
しおりが、あたし達を見つけて、
目を合わせる。
その笑顔がとても、可愛い。
卒業式が、終わると、両親と、
一緒に、ご飯の予定。
今日は、しおりの為に、
あたし達の洋食屋は、貸し切り。
「おねぇちゃーん。」と、
また、しおりが、走ってくる。。。
「卒業おめでとう。」
あたし達は、声を揃えて、
しおりの卒業を、祝った。
「えへへ。」
嬉しそうに笑うしおりの笑顔。
「今日は、しおりの為に、
いっぱい作るからね。」
「うん。お姉ちゃん、ありがと。
ちょっと、友達とお話してくるね。」
「うん。校門で、待ってるよ。」
「うん。わかった。」
しおりが、学校の友達と、雑談を、
している間、あたしとりさは、
肩を寄せて、校門で、みんなが、
集まるのを待っていた。
そこに、しおりの両親が、先に来て。
「あけみさん、りささん、今日は、
ありがとうございます。しおりの、
卒業式に、お店を準備してくれて。」
「ふふっ。そんな。
自分の、妹だから、祝いたいのは、
当たり前です。」
そう、あたしは、返した。
しおりの、お母さんが、
「ふふっ。あけみさんが、
そう言うと、本当に、しおりの、
お姉ちゃんって、思う。
だって、驚くほど、違和感がないもの」
「まぁ、しおりは、妹ですから。」
「そうね、しおりも、ずっと、
お姉ちゃんって、言ってるから。
最初は、歳上だから、お姉ちゃんって、
言ってるのかと思ったけど、
本当の、お姉ちゃんだったって、
わかった時は、ちょっと、びっくり、
したものだわ。」
と、お母さんは、微笑む。
「ほんとだね。」とお父さんも、
微笑む。
そこに、しおりが、パタパタと、
走って来て。
「お待たせ。あ、お姉ちゃん達、
そんなに、くっついて、何か、
ずるい。」
と、あたし達の間に、無理やり、
割り込んだ。
それを見て、りさも、苦笑い。
「もう。親の前でも、甘えん坊だね。」
「えへへ。だって、ここが、
私の居場所だもん。」
そんな、可愛い妹に、あたしも、
「ふふっ。まぁ、そうだね。」
って言って、頭を撫でた。
お父さんもお母さんも、
あたし達を見て、優しく、
微笑んでいた。
近くの、コインパーキングから、
車を出すと、あたし達の、
洋食屋に向けて、車を出した。
あたし達の車には、りさと、
しおりが乗って、その後ろを、
お父さんと、お母さんの、
乗った車が着いて来る。。。
しおりの、両親を招いて、
今日だけの、特別メニュー。
洋食屋の、裏の駐車場に、車を、
停めて。。。
「さぁ、今日は、しおりの好きな、
料理、沢山出すからね。」
「えへへ。嬉しい。ありがと。」
「お父さんも、お母さんも、
食べたいものがあれば、
言って下さいね。」
そう言うと、あたしは、厨房に、
入った。
事前に作っていた物を、
先に、温めて、まず並べて。
しおりの為に、ハンバーグを焼く。
「お姉ちゃん、あたしも、やっぱり、
手伝う。」
椅子に座ってたはずの、しおりが、
厨房に入って来て、
洋食屋の、制服を着てる。
「しおりの、お祝いなのに、
しおりが、手伝うの?」
と、りさが、しおりの頭を撫でる。
「うん。だって、お姉ちゃん達と、
一緒に、作りたいもん。」
あたしも、それを、見ていて。
「じゃあ、しおりには、
取りあえず、注文取ってきて、
貰おうかな。」
と、微笑む。
「うん。」
そう言うと、しおりは、両親に、
オーダーを貰いに行った。
「あけみ、しおりの扱い、上手いね。」
「ふふっ。だって、妹だよ。
それに、しおりが、手伝うのも、
わかってたからね。」
「なるほど。」
そう言いながら、りさは、シチューを、
かき混ぜていた。
「お姉ちゃん、テーブルに、
いっぱい料理あるから、
頼みたいものが、無いって。」
そう言って、しおりが、戻ってきた。
「じゃあ、この、ハンバーグと、
シチュー、みんなで、運んで、
食べようか。」
「うん。」
テーブルに、いっぱいの、料理。
しおりの、両親も、大絶賛。
美味しいの言葉は、あたしには、
ご褒美だった。
みんなで、楽しくしおりの、
卒業祝は、進み。。。
「お姉ちゃんの、ハンバーグ、
お店の味つけじゃなくて、
お姉ちゃんの、オリジナルだね。
凄く美味しい。」
「ふふっ。やっぱり、常連は、
違うね。わかった?」
「うん。ログハウスで、食べたときの、
ハンバーグに、近い味だもん。」
「しおり、お姉ちゃんのハンバーグ、
好きだもんね。」
と、りさが、しおりの、頭を撫でる。
「えへへ。お姉ちゃんの、料理は、
どれも、美味しいけど、
ハンバーグは、一番好き。」
そんな、幸せそうな顔をする、
しおりを見詰めて、しおりの両親も、
優しく微笑んでいた。
食事が進んでいくのを、見計らって、
しおりが、「パッ」と、立ち上がり、
冷蔵庫から、デザートを、出した。
凄く、繊細な作りの、ゼリー。
しおりの選んだ、洒落たグラスに、
何層も、重ねて作られた、
とても、綺麗なゼリーに、
細かく、果物が入っていて、
虹のようだった。
「今日は、私の卒業祝を、
してくれて、ありがと。
これは、一生懸命作りました。」
そう言って、しおりが、みんなに、
配った。
お父さんもお母さんも、その、
ゼリーに、びっくり。
多分、しおりが、こんなに、
作れるのを、知らなかったんだと、
思う。
「しおり、凄く美味しい。」
と、お母さんも、びっくり。
お父さんは、グラスを持ち上げて、
眺めていて、食べられないみたい。
「お父さん、ゼリー溶けちゃうから、
早く食べてね。」
と、しおりに、促され。
「綺麗で、食べるの勿体無くて。」
と、微笑む。
あたしも、りさも、ゼリーを、
すくって、一口。
フルーツの香りが、鼻を抜ける。
甘酸っぱくて、とても絶妙。
この味は、ちょっと、真似出来ない。
「うん。凄く美味しい。
デザート作りは、しおり天才だね。」
あたしが、そう言うと、
「えへへ。」
と、しおりは、微笑んでいた。
和やかに、卒業祝の場は終わり。。。
しおりの、両親も、満足して、
お店を後にした。
「お姉ちゃん達、今日はありがと。」
そう言って、あたし達に抱きつく、
あたし達も、あらためて、
「卒業おめでとう。」って、
抱き締め返す。
みんなで、笑いあって。。。
「片付け終わったら、
みんなで、少し遊びに行こうか。」
「いいね。あけみ、何処に行くの?」
「う~ん。そうだねぇ。たまには、
車で、おっきな、サービスエリアに、
ドライブとか、どう?」
「あー。行ってみたい。」
と、しおりも、はしゃぐ。
「じゃあ、決まりだね。」
手慣れた手付きで、片付けて。
みんなで、夕方の、高速道路へ。
少し、足を伸ばして、御殿場まで。
「お姉ちゃん、楽しいね。」
しおりが、嬉しそうに言う。
「そうだね。三人一緒っていいね。」
ハンドルを、握りながら、あたしは、
答えた。
「あたしも、あけみと、しおりが、
一緒なら、何処でも楽しいよ。」
そう言って、みんなで、笑った。
お気に入りの、曲を掛けながら、
みんなで、口ずさんで、
歌ったりしながら、走る。。。
そんな、普通を、幸せに思いながら。
しおりの卒業式の日は、
まだ、肌寒いけど、あたし達の
気持ちは、とても、
暖かかった。。。
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