第37話 お母さん

色々あって、

洋食屋を任されたあたし。


学校があるから、

取り敢えず、営業時間は、

朝7時から、15時迄に、

決めた。お店には、

仕込みから、入るから、

朝5時に、行かないと、

行けないけど。。。



お母さんに、仕込みから、

教わって、このお店の、

レシピを見ながら、

家に帰っても、

料理を作ってる。


りさも、しおりも、

積極的に、

付き合ってくれて、

あれから、2ヶ月で、

殆んどの、料理を、

あたしは、

一応出来る様になった。


「お母さん」って、

呼ぶようになって、

一段と、優しくされて、

あたしも、りさも、

しおりまで、お母さんに、

懐いてしまった。


みんなで話し合って、

お母さんには、

最後まで、楽しく、

過ごさせたいって、

事で、時間があれば、

お母さんの所に、

顔を出した。


お母さんは、味覚が、

良くわからなくなって。

でも、

その代わり、休憩時間は、

果物を、いつも、

綺麗なカットで、

出してくれる。


お母さんに、過去の話しも、

聞いてもらって。。。

あたしも、りさも、

良く頑張ったね。

って、抱き締めてもらって、

何だか、凄く救われた。


とりあえず、資格は、

ちゃんと、取得出来たし、

お母さんも、

少しは、安心出来たと、

思う。


あたしは、気になって、

娘さんの写真を、

見せてもらったけど、

確かに、あたしの、

小学生の時に、かなり、

似てた。


お母さんは、まだ43歳。

名前は、加奈子さん。。


多分、あたしの、

産みの親と、歳は、

殆んど、変わらない。

見た目も、若くて、

綺麗な人だ。


一緒にいると、

病気だって事忘れる。。。

お母さんは、お医者さんに、

歩けているだけでも、

奇跡だって、

言われてるらしく、

あたしに、倒れたら、


「救急車お願いね」って、


笑顔で言うんだもん。

困っちゃうよ。。。

脳腫瘍だなんて。。。


お母さんは、娘さんの、

塾の迎えに行った、

旦那さんが、

事故に遭って、

33歳の時に、

二人とも、失って。


それから、

独りになってしまったって、

遠くを、見るように、

話してくれた。


それから、

世間話をしにきた、

パン屋のおばさんの、

話しを聞いて。


そんな事あるわけないと、

パン屋さんを、

覗きにきたら、

バイト中のあたしを見て、

声を失ったって。


最初、あのまま生きてたら。

と、面影の似てる、

あたしを見て、

泣いちゃったって。。。


でも、あたしも、

子供じゃないから、

わかってるんだ。

色々ね。


それでも、

「お母さん」って、

呼んであげたい。

気持ちを込めて。。。


あたしには、

勿体無いくらい、

理想のお母さん。


ひとときでも、

お母さんに、なってくれた。

嘘でも、あたしや、

りさには、嬉しい。。。


この前は、しおりに、

お菓子の作り方を、

教えていた。


まだまた、色々、

教えて欲しいこと、

いっぱい、あった。。。


そんな、お母さんが、

今日、倒れた。。。


「救急車、本当に、

あたしが、呼ぶ事に、

なるなんてね。」


隣にいるりさが、


「お母さんのお願い。

ちゃんと、

約束守れたじゃん。」


と、呟く。。。


しおりが、あたし達の、

手を握ってくれて。。。


あたし達は、今、

病院にいる。


パン屋のおばさんも、

来てくれて。


「あけみちゃん、

ごめんなさい。」って。


「あの時、余命一年って、

嘘だったの」って。


「えっ」と、声が出て。。。


「本当は、もう、いつ、

お迎えが来ても、

可笑しくなかったの」って。


「お医者様も、奇跡だって、

先週、一緒に病院に、

行った時、言われてたわ。」


って。。。。。


「でもね。あけみちゃん、

加奈子、本当に、

幸せそうだった。

あんなに、

落ち込んでたのに。。。

あけみちゃんを、

見てる、加奈子。。。

本当に、幸せだったと、

思う。。。」


って。


「お母さん、酷いよ。。

ちゃんと、お別れ、

出来てない。。。」


ポタポタと、涙が落ちる。


そこに、お医者さんが、

来て。。

「加奈子さんの、

身内の方ですか、

意識が、戻りました。

あけみさんを、呼んでます」


って。


あたしも、りさも、

病室に、飛び込んだ。。。


手を握る、あたしも、

りさも、

しおりも。


お母さんは、うっすら、

目を開けて。。。


「ごめんね、ずっと、

一緒に、いたかったわ。

私の、可愛い、あけみ。

りさ。しおり。。。

あなた達に、

お母さんって、

呼ばれて、幸せだった。

あけみちゃん。

りさちゃん。

しおりちゃん。

お母さん、

みんな。。。大好き。。」


と、言うと、お母さんは、

また、昏睡状態になり、

もう、二度と、

目を覚まさなかった。。。


どのくらい、泣いたか。

覚えてない。。。


パン屋のおばさんも、

いっぱい泣いて。


あたしも、

りさも、

しおりも、

いっぱい泣いた。。。


暫くして、

落ち着いたところで。。。


おばさんから、

あたし達宛の、

手紙が、渡された。。。


三人で、あたしを、中心に、

手紙を読む。。。


あなた達が、

これを読んでると

言うことは、私は、

もう、あなた達の側に、

いられなくなってしまった

そう言う事になってるのね。


本当に、私は幸せでした。


あけみちゃんの笑顔。


りさちゃんの笑顔。


しおりちゃんの笑顔。


最後の最後に、


もう一度、娘を持てて、

こんなに、幸せな事は、

お母さん、ありません。


お母さんって、呼んでくれて

私が、どのくらい、

幸せだったか、

あなた達に伝えたくて、

この手紙を、書いてます。


あけみちゃん、2ヶ月で、

お店の料理を覚えて、

本当に、頑張ったね。

お母さん、びっくりした。

あけみちゃんは、

頑張りやさんだから、

無理をしないようにね。


りさちゃん。

りさちゃんは、

お姉ちゃん思いの、

優しい子。お料理も、

頑張って、覚えてたね。

りさちゃん、お姉ちゃんを、

しっかり支えてあげて、

無理をさせない様にね。


しおりちゃん。お菓子、

上手に、

作れるように、頑張ったね。

しおりちゃんは、

姉妹の要だから、

後ろから、しっかり、

お姉ちゃんを、支えて、

あげて下さい。


お母さん、

みんなしっかり、してるから

心配は、してないわ。


ただ、お母さんは、

もっと、みんなの、

お母さん、したかった。

ごめんなさい。

余命の話し。

本当の事言って、

みんなの、笑顔が、

見れなくなるのが、

お母さん、怖くて、

言えなかったの。


それだけは、

お母さん、見たくなかった。

みんなが、私を、

大好きだって、

本当に、感じてたから。


最後に、お母さん、

恥ずかしくて、

口では言えないから、

手紙で書きます。

お母さんは、

みんなの事、

愛してます。

ずっと、ずっと、

あなた達の事、

見守っています。


あなた達の、お母さん。


加奈子より、心を込めて。


。。。。。。。。。。。。。


手紙を読んで、また、

泣いて。みんなで、

抱き合って。。。


まだ、暖かい、お母さんに、

お別れをした。


葬儀は、お店の常連客と、

あたし達と、おばさん。

身内が、いない、

お母さんの、お葬式だけど、

お母さんが、

笑顔にしてきた、

常連さん達は、

かなりの人数が、

参列して、寂しくない、

お葬式を、出してあげれた。


「お母さん。見てますか。

お母さんの、料理を

食べたお客さん、

いっぱい来てるよ。

あたし、お母さんの、

料理、ちゃんと続けるよ。

だから、あたし達を、

見ててね。。。」


最後のお別れに、

あたしは、そう、

話し掛けた。。。


お葬式は、おばさんの、

お陰で、恙無く終わり。。


あたし達のお母さんは、

幸せのまま、旅に出た。


その後、お母さんの、

眠るお墓に、みんなで、

挨拶に行き、

お母さんの、

お店が、ちゃんと、

順調に、続いてる事を、

報告した。。。



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