第39話 心配。
ゴールデンウィーク。
あたし達は、
洋食屋さんの、
二階に、無事に、
引っ越しを、終えた。
窓を開けると、
お母さんの見てた、
景色が見える。
引っ越しは、業者を呼ぶと、
お金が掛かるから、
トラックを借りて、
みんなで、荷物を、
運んだ。
洋食屋さんの、
裏の空き地が、
駐車場だと、
書類見てて、
初めて知って、
洋食屋さんの敷地、
結構広いって、
びっくりした。。。
まぁ、あたし達の荷物って、
そんなに無かったから、
一回運んだら、
殆んど運べた。
それと、要らなくなった、
冷蔵庫や、テーブルは、
リサイクルショップに、
売りに行った。
お世話になった、
アパートは、
三人で、綺麗に、
掃除して、
二年半ぶりに、
保証人してくれた、
知り合いに、
お礼をして、
何だか、あの時の、
東京の繋がりは、
全て、無くなった。
「色々あったなぁ。」
ぽつりと呟く。
今日は、流石に、
お店はお休み。
常連さんにも、
働きすぎって、言われて。
あたし達が、
学生の間は、取り敢えず、
土曜日は、休みにした。
そうしないと、
遊びにも行けないし、
やっぱり、
休養は、必要だから。
良く考えたら、
あたし、お母さんと逢って、
今日、初めて、
仕事休んだよ。。。
お母さんに、
無理しない様にねって、
言われてたのに、
やっぱりたまには、
足を止めることも、
必要だね、お母さん。。。
「あけみ、何、
物思いにふけってんだよ。」
「いや、働きすぎたなって」
「馬鹿じゃないの?
ずっと、言ってんじゃん。」
「そうだよ。たまには、
休んだらって、
いっぱい言ったのに。」
「あはは、ごめん。」
「全く、あけみは。」
「ごめんて。」
「あけみお姉ちゃん、
どこに遊びに、
連れて行ってくれるの?」
「ん。久しぶりに、
カラオケ行こうかな。」
「いいね。」
「私も、最近の歌、
覚えたよ。」
「聞きたい。しおりの歌。」
「お姉ちゃん達みたいに、
あんまり、上手くないよ。」
「しおりは、何歌っても、
可愛いから、大丈夫。」
「何それ。」
「だって、ほんとだもん。」
「何か、もやもやする。」
あたし達は、久しぶりに、
姉妹の時間を、
楽しんだ。。。
しおりの声が、
今風の歌に合ってて、
凄く上手かった。
でも、あたし達は、
しおりの、可愛さに、
相変わらず萌えた。
そして、帰ってきてから、
早くも、夏休みの、
予定を立てる。
夏と言えば
海とか、キャンプとか。
何処にも、遊びにも行かず
仕事と、学校だったので、
あたしも、相当、
ストレスが、
貯まってた事に、気付く。
多分、あたしが、
みんなを巻き込んで、
みんなも、ストレスが、
貯まってたと反省。
「あけみが、
馬鹿みたいに働いて、
お金は、余裕あるから、
何処でも行けるよ。」
確かに、お母さんと、
仕事した時より、
さらに、売上は、
上がっていた。
今のままなら、
生活に困ることは、
全く無いくらい、
安定して、お客さんが、
来てくれていた。
まぁ、確かに、
あたし達が、お店を、
やってるので、
男の客が、少し多いけど。
「やっぱり、海かなぁ。」
「あけみお姉ちゃん、
じゃあ、水着買いに、
行かないと。」
「海かぁ。あけみ、
ナンパされても、
めんどくさいよ。」
「え。」
「そうだよ、
あけみお姉ちゃんに、
変な虫がついたら、
大変だから、却下。」
「え。」
「だから、山だね。」
「そうなるの?」
「じゃあ、キャンプ
道具買いに行く?」
「キャンプなら、
家族連れ、多そうで、
安心かもね。」
「じゃあ、キャンプに、
決定だね、りさお姉ちゃん」
「そうなるの?」
「多数決で、キャンプね。」
「じゃあ、キャンプで。」
と、何をするかが、
決まった。
「後は、場所だね。」
「川があって、涼しそうな
所に、行きたいなぁ。」
と、あたしが、発言。
「涼しい所かぁ。」
「あ。お姉ちゃん、もう、
こんな時間だよ。
そろそろ、お風呂の時間」
「そうだね。明日も、
早いからね。」
あたし達は、いつも通り、
三人で、お風呂に、
入った。
お母さんが、
あたし達の為に、
大きな、ユニットバスを、
残してくれたおかげで、
普通に、二人浴槽に、
入れる。
あたしの前に、りさが、
座っても、少し余裕がある。
だから、りさは、
お風呂の時間、
ご機嫌だった。
「あけみと、お風呂、
幸せ~。」
「ほんと、りさは、
あたしと、お風呂入るの、
大好きだよね。」
「好きだよ、お風呂も、
あけみも。」
「あ~。りさお姉ちゃん、
百数えたら、私の番だよ。」
「ふぅ。お姉ちゃん、
のぼせちゃうよ。」
そう言いながら、りさを、
抱き締める。
「ねぇ、あけみ、
バイトじゃ無くなって、
自営業になって、
少しは、
夢叶ったんじゃない?」
「夢叶ったと言うか、
今、夢見てるみたいだよ。」
「どうして?」
「だって、りさと、
しおりと、一緒に、
お店をやってるって、
何か、まだ、信じられない」
「あけみお姉ちゃん、
こんなに、
頑張ってるのに?」
「うん。なんか、
あたし、一生懸命やらないと
夢が、逃げちゃう様な
気がして。」
「だからって、
頑張りすぎだよ。馬鹿。」
「ざばっ」っと、
りさが、立ち上がる。
「しおりの番。」
「えへへ。」
しおりが、「ちゃぷん」と
座る。
「お姉ちゃんが、
頑張りすぎて、体を、
壊す方が、私も、
りさお姉ちゃんも、
夢よりも、大切だって、
わかってね。」
「夢よりも、大切。。。」
「わかりやすく言えば、
じゃあ、私と、
りさお姉ちゃんも、
同じ事をしたら、
あけみお姉ちゃん、
心配しないって、
言えるの?」
「それは。。。
心配するし、止めると思う」
「そうでしょ。
あけみお姉ちゃん。」
「うん。」
「私も、
りさお姉ちゃんも、
そう言う事を、言ってるの」
「確かに。そうだね。」
「朝から、仕込みに、
入るのもいいけど、
せめて、
交代制にするとか、
何でも、自分一人で、
頑張りすぎだよ。」
「そうだよね。確かに。」
「お母さんの、書いた
ノートにね、
高校卒業生までは、
週に、2日は、休む事。
って、書いてあったよ。」
「そうなの?」
「レシピしか、
読んで無いでしょ、
お姉ちゃん。」
「確かに。え、他にも、
書いてあるの?」
「色々、書いてあるよ。
お母さん、心配性だから。」
「そうだったんだ。。。」
「あたし、頑張らないと、
お母さんに悪いと思って」
「逆だよ、お姉ちゃん。
お母さんは、
あけみお姉ちゃんに、
頑張りすぎない様にねって
書いて残してるよ。」
「そう。。なの。。」
「お風呂あがったら、
ちゃんと、読んで、
お母さんの言う事、
聞いてあげてね。」
「うん。」
あたしは、「ざばっ」と、
立ち上がると、お風呂を、
出て、軽く体をふくと、
お母さんの、ノートを、
探した。。。
すぐに、りさが、
着いてきて、
「これだよ。」
と、渡してくれた。
あたしは、二人が、
お風呂に入ってる間、
その、ノートを、
読んだ。。。
タイトルは、あけみへ
大学ノート、
一冊殆んどに、
あたしへの、メッセージ。
一番最初のページに、
さっき、しおりが、
言ってた事が、
書いてあって。
困った時の事や、
新しいメニューをだす時。
お店に、疲れた時。
休みたい時。
お店を辞めたい時。
色々な、シチュエーションを
想定して、書いてあった。
「本当に、お母さん、
心配しすぎ。」
あたしは、独り言を、
言いながら、そのノートを、
読んだ。
お風呂から、上がった、
りさと、しおり。
「風邪ひくよ。」
あたしは、バスタオル、
一枚だけ、巻いて、ずっと、
読んでいた。
「あはは。これ、
凄いね。こんなの、
書いてたって、
知らなかったよ。」
「タンスの、一番上の、
引き出しに、入ってた。
あけみへ、りさへ、
しおりへって、書いて、
全員分ね。」
「そのタンス、服って、
下の二段目までしか、
入ってないんだよ。
お母さん、服も、
少しで、着回してたみたい」
「後は、何が、
入ってたの?」
「開けてみな。」
「何これ?」
「あたし達が、高校卒業
したら、着る、
洋食屋の、服だって。
みんなの名前が、
胸の所に、刺繍してある。」
「お姉ちゃん、お店を
辞めたい時
の所、読んだ?」
「まだ。」
「読んで見て。」
「あけみちゃん、
商売をやってると、
どうしても、上手く
行かなくて、
辞めたい時もあるわ。
私、あけみちゃんの、
頑張り屋さんな所、
好きだけど、
無理しない事。
辞めたい時は、
辞めていいの。
その時は、
違う事をやって欲しい。
その為に、
お金を残します。
退職金だと、思って、
自由に使って下さい。
「お母さん、お金も、
置いてったんだよ。」
「そうなんだ。。。
頑張ればいいってもんじゃ、
無いね。」
タンスの中の、紙袋。
現金で、300万円入ってた。
「はぁ。本当、何処まで、
心配してくれるんだか。」
「一緒に過ごしたのって、
あけみでも、100日
くらいなんだよ。
きっと、お母さん、
一緒に過ごした時間、
ずっと、書いてたんだね。」
「うん。」
「こんなに、心配して、
本当、お母さんだったね。」
「短い間だったけど、
あんなに、あたしに、
暖かい人は、
あけみとしおり以外、
初めてだったよ。
お母さんって、
こう言うもんだって、
改めて、あたし、
思い出したもん。
小さい時の記憶しか、
ないけれど。
あたし、幸せだったな。」
「いいなぁ、りさは、
あたしは、産みの親に、
優しくされた事なんて、
一度も記憶にないよ。」
「。。。。」
「二人とも、そんな、
暗い顔、しないでよ。。。
まぁ、それにしても、
よくもまぁ、
こんな事を思い付いて、
書き残せるよね。
本当、凄い。」
「それだけ、あけみの事、
心配してたし、
見てたんだよ。」
「あたしと、りさの、
ノートは、あけみを、
支えて欲しいって、
内容だったから。」
「うん。お母さん、
あけみお姉ちゃんの事、
本当に、娘だと思って、
いたんだと思う。」
「そうだね。あたしも、
凄く、その事を、感じた。」
「そうなの。かな。」
「まぁ、あけみは、
二年間も、お母さんに、
観察されてるからな。」
「あはは。そう、だったね」
あたしは、お金の入った、
紙袋を、お母さんの服の
下にしまって、
引き出しを、「ぱたん」と
閉めた。
「ふぅ。」と、
息を吐き。。
お母さんの写真に、
「お母さん、心配しすぎ。
でも、あたし、
お母さんに、
心配掛けない程度に、
頑張ることにするね。」
と、手を合わせた。。。
翌日。。。仕込みの必要な、
スープや、シチュー。
カレーなどは、
朝からじゃなく、
夜のうちに、
三人で、野菜や肉の、
加工をして、
朝も、一時間、
ゆっくりする事が出来た。
そして、1日の、
営業目標を立てて、
それを越えたら、
その日は、閉店。
仕込みの量も、減らせて、
以前より、楽になった。
長くお店を、開ける事も、
取り敢えず、
学校があるうちは、
やらない事にした。
あたしは、翌週には、
お母さんに、今後の事、
ちゃんと、報告した。
「お客さんにも、ちゃんと、
話し掛けや、張り紙で、
伝えて、
みんなの声も、聞いて、
決めたから、
お母さんも、少しは、
心配しなくて、
良くなったよね。
ほんとに、
お母さん、心配しすぎ。」
笑ってる、お母さんの、
写真に、
あたしは、そう、
話し掛けた。。。
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