第13話 知らないから

「なぁ。」


「ん。」


「クリスマスって、あんだろ。あれ、

やらないか?」


夕食を作りながら、

りさに、話し掛ける。。


「うーん。クリスマスって、

どうやるんだ?」


「なんか、ケーキ食うらしいぞ。」


「ケーキ食うのが、

クリスマスなのか?」


「いやぁ、小学校の時、

クラスのやつらは、プレゼントだの、

サンタだの、そんな話しを

してたけど、そのうち、

どうでもよくなって、

考えて来なかったけど、

うちには、

サンタとか、来ねぇから、

詳しくは、しらねぇんだよ」


「それなら、あたしん所にも、

来ねぇから、知らないよ。

あんまり、学校も、

行けてなかったし。」


あたしは、部屋のすみに、

置いてあるそれを手に取る。


「これ、しおりが、

置いてった、ツリー。」


少し間を開けて、あたしは、続ける。


「ああ、それでよ、

思い付いたんだけど、

クリスマスってのは、

その、ツリー飾ったり、

ケーキ食ったり

するらしいんだけど。

よい子にしてると、

枕元に、プレゼントが、

届くらしいよ。」


「ははっ。プレゼントが、

枕元に?ヤバくね。それ。」


「何が?」


「だってよ、あけみ、

普通に考えて見ろよ。

枕元に、プレゼントが、

あるって事は、

家族でもない、不審者が、

こっそり、

入って来てるんだぜ。」


「。。。そうだな。」


「クリスマスやると、

不審者が来る。って事か。」


「いや、でもよ。

もしそうなら、クリスマス

なんて、イベントって、

やる家ないよな。」


「良い不審者とか。。」


「そんなの、いるわけ

ないじゃん。あけみらしくないよ。」


「しおりに、聞いて見るか

かなり、不思議な話しだし」


「だな。クリスマスねぇ。」


あたしらは、しおりに、

電話して、クリスマスの事を

聞いて見る事にした。。


「あー。なるほど。

大体、わかりました。

クリスマスの事ですね。

まず、サンタクロースは、

普通、お父さんか、

お母さんなんです。

子供が、寝た後に、

プレゼントを、

枕元に置いたり、

大きな靴下の中に入れたり

するんです。」


「あー、そう言う事。

不審者が、置いてくわけじゃ

ないんだぁ。」


「あけみさん、真面目に、

言ってます?」


「はは、まぁ、あたしら

クリスマスって、知らないから。」


「っつ。すみません。」


「電話じゃ、何だから、

今から、行きます。」


「あれ、電話切れた。。」


「りさ、サンタって、

お父さんと、お母さん

らしいぞ。それから、

今から、しおりが、来るって。」


「ああ、なるほど。

しおりが、今から来るの?」


「んー。なんか、クリスマス

教えてくれるって。」


あたしらは、

飯を食べながら、

しおりが、来るのを待った。


「コンコン、」と、音がする。

一応、ドアスコープを、

覗くと、しおりが、

来てくれた。


「さっきは、ごめんなさい」


「ん。何の事。」


「クリスマスの事です。」


「いや、しおりくらいしか、

こんな事って、

聞ける人いないからな。」


「何飲む?」


りさが、立ち上がると、

ポットのまえで、うちらに、聞く。


「あー。珈琲で。」


「すみません。私も、珈琲で。」


「はいよ。」


うちらは、しおりの、

話しを聞いて、クリスマス

が、どんなものかを、

理解した。


「なるほどねー。」


「プレゼント交換とかも、やんのか。」


「はい。」


「そういやぁ、他に、

しおりの、やった事のある

イベント教えてくれよ。」


「はい。まぁ、クリスマス

の後は、お正月。

その後は、節分で、

豆まき。桜が咲いたら、

お花見。夏になれば、

花火大会とか、お祭り。

10月の終わりには、

ハロウィンとか、あります」


「はぁ、結構あるね。」


「ハロウィンは、知ってる

仮装して、歩き回ってる

奴ら見てたから。」


「花火大会も、知ってる、

駅が、人でごった返して

うちらにとっては、

迷惑だったから。」


「お祭りとか、行って

みたいねぇ。」


「あ、来年、行きましょ。」


「うん。いいね。」


「豆撒きって、どうやるんだ?」


「鬼は外、福は内って、

言いながら、家の中と、

外に向かって、豆を撒くんです。」


「そりゃ、

もったいねぇな、片付け大変だから、

それは、やりたくないね。」


「正月ってのは、

お参りに行くんだろ。」


「そうです。あ、神社に、

よっては、出店が、あって、

お祭りと、同じ様な感じです。」


「よし、じゃあ、

お参りも、行って見よう。」


「あたしも、行きたいです」


「じゃ、これは、三人で、決定だね。」


「さっきから、何書いてるんですか?」


「一年の、イベントの、

予定だよ。たまには、

息抜きってか、こう言う、

楽しいこと、考えてやらないとね。」


「なるほどねー。」


「確かに、そう言うの、

先に、決めておいた方が、

予定、

合わせやすいですね。」


「だろ。」


「それ以外だと

後は、また、海だな。」


「今度は、海に入って、

遊ぶか。」


「じゃあ、来年は、

水着買わないとな。」


「プールって言うのも、

ありますよ。」


「なるほどねー。」


あたしらは、一足早く、

来年の予定表を作った。

普通を、体験する為に。


「それで、あの、クリスマス

の事なんですけど。。。

一緒に過ごしたいなと、

思って。駄目ですか?」


「さっき、家族や、

恋人と過ごすって、

言ってなかったか?」


「あたしは、しおりと、

クリスマスしたいよ。」


りさが、しおりを、

抱き締めてあたしに、視線を送る。


「そうだね。あたしら、

お姉ちゃんだしな。

一緒に、過ごそうな。」


しおりを、見つめて、

笑顔で、そう言うと、

しおりの、表情が、

ぱぁっと、明るくなり、

いつもの、しおりに戻った。


「クリスマスの日は、

学校、空けちまうか。」


「そうだね。せわしないの、

嫌だしな。」


「来週は、駅前に、五時

集合にして、チキンとか、

ケーキを、買いに行こう。」


「それで、決まりだね。」


「わー、楽しみです。」


「あ、そうと決まれば、

今日は、どうすんだ?

泊まってくのか?」


「もう、こんな時間、

お母さんに、電話する。」


「ああ、そうしな。」


結局、しおりは、

泊まる事になり、風呂入ってから、

寝るまで、三人で、イベントの話しで、

盛り上がった。。


来週は、クリスマス。

あたしと、りさは、初めてだから、

なんだか、そわそわ、してしまう。。。


「あのよう。毎回、

身動き取れないんだけど。」


「じゃあ、手を繋いでも、

いいですか?」


「わかった。そうしよ。」


りさは、何も言わず、手を握ってきた。


「暖かいね。」


真冬の、布団でも、

三人いると、心なしか、暖かい。


いつか、お互い、

いい人が、出来て、

離ればなれになっても、

あたしは、今の事を、

きっと、忘れないと思う。


三人で、

過ごせる時間は、永遠には、

続かないことも、

わかってるからさ。

高校を、卒業したら、きっとまた、

世界が、変わる。

それまでには、

あたしも、りさも、

しおりも、進路を、

ちゃんと考えられないと、

いけないから。

せめて、今のうちに、

普通のイベントは、

りさにも、経験して欲しい。

あいつ、結構、そう言うの、

興味なさそうだから。

普通の、色々な経験をして、

普通を、ちゃんと、知ろう。


言葉使いも、普段から、

直していかないと、駄目だろうしさ。


知らないからってのが、

許される歳でも、

無くなってきてるから、

最低限の、普通の事は、

覚えたいよ。。。


「おやすみなさい。。」

そう呟くと、スッと、

意識が遠のいた。。。
















































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