第35話 次に繋げる

旅行から、帰って来て。


すぐに、あたしは、行動を起こした。

偶然にも、

午後から、バイトに、入ってる、

パン屋の、おばさんの、

紹介で、洋食屋さんに、

働ける様になった。


あたしが、パン屋さんの、

仕事を、午前に出来ないか

と、相談して、理由を、

聴かれて、将来、

飲食店を、やりたいと、

話しをした所、

おばさんの、知り合いの、

洋食屋さんで、バイトを、

探してるらしく、そのまま、

面接に行った。


得意な洋食を、一品作る。

それが、面接内容だった。


店長に、褒められて、

無事OKをもらえた。


あたしにとって、

時給も、コンビニより、

多い事も、

嬉しいし事だけど、

本格的に、

覚えたかったら、

雇ってくれる事も、

考えてくれると、

言う話しだったから。


パン屋の、おばさんが、

話をしてくれた、お陰。


コンビニの店長には、

引き留められたけど、

あたしには、

居心地も悪かったし、

若い子に、

声をかけられるのも、

疲れてたので、

夢の為に、キッパリと、

辞めさせてもらった。


洋食屋さんの店長は、

パン屋のおばさんの、

同級生で、親友らしい。

話した感じでは、

とても、頼もしくて、

優しい感じの、女性だった。


帰ったら、妹達に、

洋食屋さんの、バイトが、

決まった報告が

出来る事が嬉しかった。


家に向かって、

いつもの道を歩く。

これからの事を、

考えると、次の一歩の

足掛かりになるから、

あたしは、本当に、

嬉しかった。


「ただいま。」


家に帰ると、しおりが、

ご飯の支度をしながら、


「おかえりなさい。」

と、迎えてくれる。


「あれ、りさは?」


「土曜日だから、

りさお姉ちゃんも、

帰り早いはずなんだよね。」


「うん。いつもなら、

この時間は、帰ってる

はずなんだけど。。」


「メールしてみるね。」


「うん。お願い。」


普段なら、あたしより、

帰り早いはずなのに。。

どうしたんだろう。。。


「あ、メール来た。」


「ちょっと、遅くなるって」


「どうしたんだろう?

ちょっと、気になるから、

バイト先見てくるよ。」


「うん。お留守番してるね。」


あたしは、りさの、

バイト先に、足を運んだ。


途中、救急車が、

通りすぎる。。。

嫌な予感がして、

あたしは、走ってた。


りさの、働いてる、

珈琲屋さんに、

救急車が、停まっていて、

あたしの心臓は、

飛び出しそうになった。


「嘘。でしょ。」


あたしは、珈琲屋さんの、

ドアを、勢いよく開けて、

咄嗟に、大きな声で、


「りさ!」


って呼んでた。。。


店の中の人が、みんな、

あたしを見る。。。


カウンターで、

テーブルを拭いてる、

りさが、びっくりして、

あたしを見る。。。


「あけみ。どうした?」


「りさ、無事か?」


「ああ、救急車、

あたしだと思ったの?」


あたしは、「ペタン」と、

その場に座り込み、

安心して、動けなくなった。


りさが、慌てて、

抱き抱えて、起こしてくれた。


「ほら、あけみ。」


「りさ、ごめん。

仕事の邪魔しちゃって。」


「こんなに、汗かいて。。

心配させちゃって、ごめん、あけみ。」


「丁度、あたし、バイト、

今、終わった所だから、

一緒に、帰ろ。」


「うん。外で待ってる。」


よく考えたら、

ちょっと遅れるって、

ちゃんと、メールを、

返してくれてたのに、

あたし、何やってんだろ。


五分位待つと、りさが、

あたしの所に来た。


「お姉ちゃん、心配しすぎ」


りさが、苦笑いして、

あたしを抱き締める。。。


「救急車が、

あたしの横をさ、走って。

ここに、停まってたら、

りさに、何かあったと、思って。」


「うん。」


りさが、「ギュッ」と、

抱き締めた力を強める。


「大丈夫。ありがと。

心配してくれて。」


家に向かって、歩きながら、

りさが、救急車の事、

話してくれた。


「お店の前でさ、

おじいちゃんが、急に、

倒れちゃってさ。」


「あ、そうだったんだ。

それで、大丈夫だったの?」


「うん。でも、倒れて、

怪我しちゃって。」


「そっか。そう言う事

だったんだね。。」


「あたしは、おじいちゃん

倒れた事より、

あけみが、あたしの名前を、

あんな、大きな声で、

呼んだことの方が、

びっくりしたけどね。」


「今思うと、あたしも、

そうなんだけど、

ちょっと、取り乱したね。」


「あたしは、でも、

あけみには、悪いけど、

嬉しかった。あたしの事、

あんなに、心配してくれる。

そんな人がいるって事が。」


「あたしは、いつも、

りさの事、気に掛けてるよ」


「ふふっ。知ってる。。

でも、目の当たりにすると、

また、ちがうんだよ。」


スッと、りさに、

手をだして。。


残りの寒い、

帰り道、仲良く、

手を繋いで、ゆっくり、

歩いて。帰宅した。


「ただいま。」


「お姉ちゃん達、

遅かったね。何か、

あったの?」


「いや、何にも、なかった。

何も、無くて良かった。」


「どうしたの?

それじゃ、お姉ちゃん、

私、わからないよ。」


「しおりには、あたしが、

話すから、あけみ、

シャワー浴びて来て。」


「うん。」


あたしが、お風呂してる間、

りさが、さっきの事、

しおりに、説明して、

この話しは、落ち着いた。


お風呂から、あがると、

テーブルには、

お昼ご飯が、並んでいた。


「美味しそう。」


「えへへ。お姉ちゃん、

大変だったね。

お店で、りさーって、

叫んだんでしょ。」


りさを、ちらっと、見る。


「りさ、

どんな説明したの?」


「んー。内緒。」


「全く。どうせ、

面白おかしく、

説明したんだろ。」


「えへへ。ごめん。

私が、ちょっと、

ふざけただけ。あんまり、

りさお姉ちゃんが、

嬉しそうに、言うから。」


「う。」


あたしは、耳まで、

赤くなった。。。


「ご飯、食べようか。。」


今日の、しおりのご飯。

鶏肉と野菜の炒め物と、

おひたしに、味噌汁。


「ぱくり」と、食べると、

「美味しい。」と、


声が漏れる。


「えへへ。嬉しい。」


「しおりの、ご飯、

美味しいね。」


りさも、絶賛。


「私も、料理の本とか、

スマホの動画で、

勉強始めたんだ。」


「なるほど。さすが、

うちの、秀才。」


りさが、頷く。


「あ、コンビニのバイト、

今日、辞めるって、

言ってきた。

来月から、洋食屋さんで、

働ける様に、決まったから」


「ずいぶん、急に、だね。」


「お姉ちゃん、良かったね」


「パン屋の、おばさんの、

知り合いが、洋食屋さんで、

会いに行ったら、

雇ってくれるって。」


「あけみ、良かったね。」


「うん。様子見て、

バイトじゃなくて、

雇ってくれても、良いって」


「へぇ。条件いいね。」


「パン屋のおばさんが、

あたしの事、

良く言ってくれた、お陰。」


「それは、あけみが、

真面目に、頑張ってるから

そう言うふうに、

言ってくれたんだよ。」


「そうだよ。お姉ちゃん。

見てる人は、見てるって。」


「そう。。かな。」


「でも、コンビニ、

辞めれて良かったな。」


「まぁ。ね。」


「お姉ちゃんに、

変な虫が、つかなくて、

良かった。」


「しおりも、言う様に、

なったね。」


「えへへ。」


あたし達は、

ご飯を食べると、

少し、休憩して、

あたしの次の、仕事先まで、

散歩する事にした。


「お姉ちゃん、洋食屋さん

ケーキとか、あるかなぁ。」


「あると、思うよ。」


「どうせなら、丁度、

3時だから、

おやつがわりに、

デザート食べちゃう?」


「えへへ。賛成。」


うちから、20分位、

歩いて、洋食屋さんに、

着いた。


「あ、ここかぁ。」


「りさ、来たことあるの?」


「珈琲屋さんの、バイト

面接に行く時、ここも、

候補にあったんだよね。

でも、珈琲屋さんで、

すぐに、OKでちゃって、

こっちは、辞めたんだ。」


「カラン」


入り口の、鐘が鳴る。。


「いらっしゃい。」


さっき、挨拶した、

お店の店長が、優しく、

出迎えてくれた。


「みんな、お友達?」


おばさんは、優しく、

そう聴いてくれた。


「姉妹です。」


私は、そう紹介した。


りさも、しおりも、

嬉しそうに、照れる。


「あらあら、可愛い、

妹さん達ね。今日は、

何か、

食べて行くのかしら?」


「はい。何か、デザートを、

と思って。」


「ちょっとまってね。

はい、メニューよ。

今、お客様いないから、

好きなもの、頼んで。

今日は、

サービスしちゃう。」


「え。」


「いいのよ。私も、

貴方くらいの時に、

この洋食屋を、私の、

お父さんが、急に倒れてね。

受け継いで、それから、

そろそろ、引退も、

考えてた所に、

いい話が、来てね。

あなた、すぐじゃなくて、

いいの。続けられそうなら、

この店、やってみない?」


「え。。。」


「お店をやりたいって、

子がいるって、

聴いてるけど、

違ったかしら?」


「あたし、

お店やりたいって、

確かに、言いました。」


「姉妹で、よね。」


「はい。」


「みんな、揃ってるから、

丁度、話すのに、

いいかなと、思って。

今、話してるのよ。

どう? 妹さん達も?」


きょとんとして、

りさも、しおりも、

びっくりして、

おばさんを見る。。。


「あたしで、

いいんですか?」


「あらあら、私も、

ずっと、あなたを、

見てるのよ。あのパン屋、

良く行くから。

ここの出してるパンは、

あそこのだから。」


おばさんは、あたし達を、

見ると、話を続ける。。


「あけみさんは、

接客も、上手だし、

説明も、わかりやすい。

お料理も、とても、

手際もいいし。

何より、真面目だわ。

私、あなたが、パン屋に、

勤めてから、裏から、

良く見てたのよ。

だから、話しを聴いて、

あけみさんなら、

私も、安心出来るから。」


「そうだったんですね。

最初から、知ってて。。

くれてたんですね。」


「私、表から、入った事、

ないから、面識は、

無いと思うけど、

パン屋が、凄い子が、

バイトに来たって、

自慢するから、

気になってね。」


「はは。

そうだったんですか。」


「どう? 私は、

今日の面接を含めて、

料理の腕前も、

申し分ないし、

あけみさんを、見て、

ちゃんと、

決めたの。やってみる気、

ある?」


「いますぐは、無理でも、

ちゃんと、お店の事、

覚えて、やりたいです。」


横で、話を聴いていた、

二人も。


「その時は、

宜しくお願いします。」

と、頭を下げた。。


「あらあら、可愛いわね。

こちらこそ、

御願いします。

あなた達も、いつでも、

働きに来てくれても、

いいのよ。私、待ってる。

その方が、早く覚えて、

貰えるから。」


おばさんは、優しく笑った。


「この話しは、おしまい。

せっかく、未来の、

店長が、来てくれたんだもの

好きなもの、早く頼んで。」


「あたし、手伝います。」


「ちょっとまってて。」

おばさんは、入り口の、

札を、Closeにしてくれた。


それから、おばさんと、

あたし達で、一緒に、

デザートを、食べて、

今後の話しを、

もう少し詳しく聞いた。。


「時間があったら、

何時でも、来てね。」


そう言われて、

あたし達は、一礼して、

洋食屋さんを、後にした。。


「なんか。夢みたい。。」


「うん。」


「あけみお姉ちゃんが、

真面目に、やって来た、

証だよ。

私、なんか、

感動しちゃった。

あけみお姉ちゃんが、

認められたって、

感じがして。凄く、

嬉しい。」


「あたしも、感動した。」


「2年も、

見ててくれてたんだね。。

知らなかったなぁ。。。」


本当は、嬉しくて、

洋食屋さんの、中でも、

泣きそうになったけど。。。

さすがに、我慢した。


洋食屋さんから、離れて、

あたしの目には、

涙が、滲んでいた。。

誰かに、認めて貰うって、

こんな、感じなんだね。

そう思った。。。


「お姉ちゃん、駅で、

お祝いのケーキ買お。」


「しおり、また、

食べるの?」


「食べる~!」


「あははっ。じゃあ、

買って帰ろ。」


家に帰って、あたしは、

腕をふるって、

妹達に、ご飯を作って、

この、夢の様な話を、

みんなで、祝った。。


次の、一歩と思って、

動いたら、未来まで、

動き出した、

そんな気がした。








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