第31話 隣に
「ん。」
昨日、夕方まで、寝かせて
貰ったお陰で、
目が覚めてしまった。
二人は、気持ち良さそうに、
眠っている。。。
「お風呂、入ろうかなぁ」
と、呟いて、そっと、
ベッドから降りて、
お風呂場へ。
「ほんと、広い。」
シャワーを浴びて、
湯船に浸かる。
「たまには、一人ってのも、
悪くないね。」
五分くらい、
湯船につかって、
お風呂の縁に座り、
休憩してると、
「ガラガラ」
眠そうに、目を擦りながら、
しおりが、起きてきた。
「やっぱり、お風呂だった。
起きたら、いないんだもん」
「ごめん。
目が覚めちゃって。。
お風呂してたんだよ。」
「私も、入りたい。」
「あ、しおり、一応、
りさにも、声かけてあげて」
「うん。ずるいって、
言われちゃうもんね。」
暫くすると、しおりが、
入ってきて、
「りさお姉ちゃん、
後で、入るって。」
「わかった。ありがと。」
「えへへ。あけみお姉ちゃんと、二人きり。」
と、眠そうに、笑う。
「ほら、しおり」
あたしは、しおりを、
シャワーで、流してあげると
一緒に、湯船に浸かった。
湯船に入ると、しおりは、
あたしに、もたれ掛かる。
「ふわふわで、暖かい。」
暫く、しおりを、
抱き抱えていると、
しおりの、頭が、
「こくっ」と頷いた。
顔が、湯船につかり、
とっさに、しおりを、
後ろから、抱き抱える。
「げほっ。げほっ。
鼻に、お湯入ったぁ。」
「もう、お風呂で寝ちゃ、
だめだよ。」
「うん。」
しおりは、一度、湯船から、
上がり、水を、頭から、
かぶる。
「う~!
もう、大丈夫。。。
だけと、水、凄い冷たい。」
「ほら、おいで、
風邪引いちゃうから。」
冷たくなった、しおりを、
湯船の中で、抱き締める。
「暖かい。。
あけみお姉ちゃん。」
「もう、水なんか、
かぶるからだよ。」
「ガラガラ」
「あ、ちょっと、
しおり、あけみ?
なにそれ。。。」
眠そうな、りさが、
あたしが、しおりを、
向かい合わせに、
抱き締めてる光景を見て、
ちょっと、驚いてる。
しおりは、あたしに、
正面から、抱きついた、
コアラの様に、
なって、いたから。。
「えへへ。特等席。
いいでしょ。」
りさが、お風呂に入って、
しおりを、眺めてる。
「なんかさぁ、やっぱり、
しおりは、可愛いいね。
いいなぁ。流石に、
それは、しおりにしか、
出来ないよ。」
「りさお姉ちゃんも、
抱っこしてもらう?」
「だって、あたしと、
あけみが、そんな事。。
してるみたいじゃん。」
「ん、
何をしてるみたいなの?」
あたしも、りさが、
そんな事言うから、
あ、なるほどってなった。
「え、ちょっと、りさ。」
「ねぇ、お姉ちゃん、
教えてよ。」
興味津々で、しおりが、
聞いてくる。。。
「え、いや、えっと。」
「しおりは、本当に、
可愛いね。」
なんか、変な事いわれて、
あたしも、恥ずかしくなる。
「どうして、お姉ちゃん
達、教えてくれないの?」
「もう!りさ、変な事、
言わないでよ。あたしが、
恥ずかしくなるでしょ。」
「だって、ごめん。
本当にごめん。」
「ねぇ。お姉ちゃん。
教えてよ。
隠し事しないで。」
りさが、見えたままを、
ハッキリ言う。
「えっちしてる所、
想像しちゃったんだよ。
ごめんなさい。」
りさが、顔を真っ赤にして、
そう、言うと、
しおりは、
「えっちって、こう言う事、
するの?お姉ちゃん?」
と、普通に、
質問された。
「まぁ。そう言うのも、
確かにあるね。」
「へぇ。そうなんだ。
でも、私、こうやって、
お姉ちゃんに。
抱きついてるの、
好き。」
と、照れもせず、普通に、
くっついて、いるのを見て、
逆にあたし達は、
しおりが、本当に、
天使の様に、可愛くて、
綺麗に見えた。。。
「しおりが、いいなら、
あたしは、何も、
気にしないよ。」
「ごめん。あたしが、
余計な事、言ったから。」
と、りさが、反省する。
「ちゃぷん」と、りさが、
湯船に浸かると、
あたしの、隣に座る。
すっと、しおりが、
立ち上がって、
りさに、場所を譲る。。
「りさお姉ちゃん、
ここでしか、
あけみお姉ちゃんに、
抱っこして
貰えないもんね。」
「うん。ありがと。」
そう言うと、あたしに、
りさが、寄りかかる。
「あけみ、さっきの、
ごめん。
なんか、恥ずかしい
あたし。」
「りさに、言われて、
すぐ、想像した、
あたしも、とやかく、
言えたもんじゃないよ。」
りさが、小刻みに、
震える。。。
りさの、
フラッシュバックが、
始まってしまった。。。
「大丈夫。誰も、
責めてないから。自分を、
責めないで。」
「。。。。。」
両肩を、掴んで、
震える。
しおりは、はっとした、
顔で。下を向いた。。。
あたしと、りさが、
どうやって、
生きてきたか、思い出した
のだろう。
「私が、
しつこく聞いたから、
答えてくれたんだよね。
言いたくなかったのに。。
ごめんなさい。
りさお姉ちゃん。。
あけみお姉ちゃん。。」
「気にしなくていいよ。」
そう、言った。
でも、りさは、父親から、
そう言う事を、
強要されて、いた。。。
それを、思い出して、
いま、こんなに、
震えてるんだと、思う。。
今、あたしに、出来る事。
それは、震えが止まるまで、
りさを、抱き締めて、
あげる事だけ。。。
いつも、りさが、
見る怖い夢を見るたび、
あたしは、りさを、
抱き締めて来た。
「りさが、
普通に戻れるまで、
あたしは、りさの、
隣にいるからね。。
だから、大丈夫。
大丈夫だよ。」
「うううっ。あけみ。
あたし、ずっと、ずっと、
嫌だった、
ううっ。。。
怖かった。
こわかったよぉ。」
「うん。あたしがいるよ。
あたしは、わかってるから。
大丈夫だよ。」
りさの、震えている、
背中を、何度も、何度も、
擦る。。。。
しおりは、お風呂の縁に、
座り、うつ向いていた。
暫く、りさは、
子供の様に、震えて、
泣いていた。。。
あたし達に、起こる、
突然の、フラッシュバック。
どんなに、普通を、
追い求めても、突然、
襲ってくる、
呪いだ。。。
でも。
確実に、その度合いは、
弱くなってきていた。
最初、初めて、
フラッシュバックに、
襲われた、りさを見た時、
発狂したみたいに、
取り乱していたから。。
あたしも、そう。
母親からの、異常とも、
言える暴力。
家に、親が、帰ってこない
事が、安らぎだった。。。
今の生活が、普通に、
近づく程、色々、
考えたり、思い出したり、
そう言う時間が、増えて、
過去の自分を、
拒絶したい、自分と、
今の自分が、ぐちゃぐちゃ
になる、感覚。。。
あたしも、りさも、
一緒に暮らしてから、
お互いの事を、
正直に話し合った。
あたしが、辛いときは、
りさが。
りさが、辛いときは、
あたしが。
そうやって、
この二年間、
支え合ってきた。。。
りさが、「すぅ。」と
息を吸って、吐くと、
湯船のお湯を、手のひらに
すくって、顔を流す。。
「あけみ、もう大丈夫。
いつも、ありがとう。」
そう言うと、お風呂の縁に、
座っている、しおりの所に、
りさが、歩み寄る。。。
「ごめん。
驚かせちゃったね。
言っとくけど、
しおりの、
せいじゃないからね。
だから、お願い。
そんな顔しないで。」
「お姉ちゃん。私。」
目にいっぱい涙をためて、
りさを。見つめる。。。
「お姉ちゃん達が、
私、大好きだから。
お姉ちゃん達が、
泣いているのも、
震えているのも、
辛いのも。。。
私も、支えてあげたい。
隣にいたい。
私も。。。
私も、抱き締めてあげたい」
そう言う、しおりの目は、
真っ直ぐで、
真剣だった。。。
「しおりは、
何で、そんなに、
可愛くて、優しくて、
お姉ちゃん想いで。。。
そんな事。。。
言ってくれなくても、
ちゃんと、あたしも、
あけみも、
しおりの、気持ちには、
いつも、
抱き締めてもらってるよ。
お姉ちゃん達だって、
しおりの、気持ち、
わかってるから。
ね。
だから、そんな顔しないの」
りさの言葉に、
しおりは、大粒の涙を、
ポロポロ落とした。。。
「ほら、おいで。」
しおりと、りさが、
抱き締め合って。
あたしも、
二人を抱き締めて。
こんな、あたし達の事、
大好きだって、
言ってくれる、
可愛い、妹の愛に、
心から、感謝して、
あたしと、りさで、
しおりのおでこに、
キスをした。
「えへへ。」
そう言うと、しおりの顔に、
可愛い笑顔が戻った。。。
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