第33話 これから

「あたし達、ご飯食べて

ないよね。」


朝から、胸が一杯で、

そのまま出掛けたあたし達。

ここ最近で、

始めて朝食を取ることも

忘れて、出掛けて、

帰ってきた。

自分でも、そんな事、

あるのかって、思ったけど、

帰って来てから、

それに気づいた。。。


りさも、しおりも、

あたしを見てる。。。


「あけみお姉ちゃんの、

ご飯が食べたい。」


二人で、息ぴったりに、

そう言うもんだから、

あたしも、「ふふっ」って、

笑って。


「何、作ろうかな。

お姉ちゃんの作る、

何が食べたいの?」


あたしは、

そう聞くと同時に、

備え付けの冷蔵庫を開ける。


「あ、何も、入ってないね」


「基本、外で食べると思って

昨日も、うどんの材料しか

買ってないよ。」


りさが、あたしに、

無い。無いと、

手振りをする。


「え、ここから、買い物?」


「あけみお姉ちゃん、

昨日、りさお姉ちゃんと、

行った、スーパー行こう!」


「あたし、場所わかるから、

運転するね。」


あたし達は、戻って、

5分で、また、外に出た。。


お腹が空いたと思うと、

空腹に、参りそうになる。

でも、そんな事すら、

楽しく感じる。


20分ほど、

車を走らせると、

そんなに、大きくない

スーパーに到着した。


「さて、妹よ、

お姉ちゃんに、何を作って、

欲しいのかなぁ?」


「あたしは、唐揚げが、

食べたい。」


「私は、ハンバーグ。」


二人の嬉しそうな、

オーダーを聞いて、

「両方作ろうかな。」

と、即答する。


かごを手に取り、

あたし達は、

手際よく、買い物をする。

それぞれ、自分の、

作って欲しい材料を、

探して来て、かごに入れる。

あたしは、付け合わせの、

材料を、かごに入れると、

ほんの、10分程度で、

買い物は、終了。。。


速攻で、ログハウスに、

帰還すると、

お腹が空いているあたしは、

手を洗うと、

すぐに、調理を始めた。。。


ログハウスには、

備え付けの調理器具も、

置いてあり、

キッチンも広いので、

三人で、調理出来る。

「なんか、おせち作ったとき

思い出すね。」


「あの時は、もっと、

いっぱい、野菜とか、

肉とか、刻んだり、

大変だったよね。」


手を動かしながら、

りさが、楽しそうに言う。


「しおり、包丁使うの、

上手くなったね。」


「えへへ。最近、

お姉ちゃん達のご飯、

作ってるもん。」


「ありがと。」

つい、あたしも、

嬉しくて、楽しくなる。


「あ、ハンバーグって、

そんな事をするの?」


「あたしは、こうした方が

美味しくなると、思って。

独学だけどね。」


「私も、真似しよ。」


二人が、あたしの手元を

見てる。


「ちょっと、冷蔵庫に、

入れといて。」

作ったハンバーグのネタを、

しおりに、冷蔵庫に、

入れてもらって、

りさが、切ってくれた、

鶏肉に、下味をつけて、

もみこむ。。。


「あけみお姉ちゃん、

料理人みたい。」


「ふふっ。小さい時から、

一人で、作ってるからね。

あたしにとってこれは、

いつも通りで、

当たり前の事だよ。」


しおりが、少し、

哀しそうな顔をする。。。


「ご飯多めに、炊いたよ。」


「ありがと、りさ。」


「しおり、これもお願い。」


あたしは、鶏肉の入った、

袋を、しおりに渡し、

冷蔵庫に、

しまってもらった。


「あー。お腹が空いた!」


フライパンと、

鍋を用意する。。。

油を注ぎ、

火にかけて、

フライパンには、

ハンバーグ。

油の海には、

鶏肉を。


二ついっぺんに、調理する。

物凄く、いい匂いが、

広がる。


「あけみ、あたしも、

限界。いい匂い過ぎて、

倒れそう。」


「あははっ。

倒れないでよ、りさ」


しおりが、あたしの隣で、

お皿の準備をしてる。


「お姉ちゃん、この、

一番大きな

お皿がいいよね。」


「そうだねぇ。」


油から、上がった唐揚げを、

引き上げながら答える。

あたしは、

二度あげするから、

一度目から、

じっくりとは、

揚げない。


「え、もう、終わりなの?

生っぽくない?」


心配するしおりに、


「大丈夫、二度あげするから

一度めは、余熱で、

中に、火を通して、

二度めで、外を、

カラットさせるんだよ。

少し、火力をあげるのが、

コツだよ。」


「へぇ。そうなのぉ。」


「しおり、あけみ、簡単に、

言ってるけど、

あけみの唐揚げは、

そこが、難しいんだよ。

真似しても、なかなか、

難しいんだ。これが。」


「そぉ?まぁ、

そうだね、タイミングは、

長年の感で、

やってるからね。」


「感かぁ。それは、

アバウト過ぎて、

難しいね。。。

だから、

あけみお姉ちゃんの、

唐揚げが、

りさお姉ちゃん、

好きなんだね。」


あたしは、ハンバーグを、

ひっくり返して、

少し、水を入れて、

蓋をする。


「え、

水入れて蓋をするの?」


「ふふっ。そんな、驚く?

水を入れて、蒸らすと、

ふっくらと、

柔らかくなるんだよ。

火が通ったら、

少し、水気を飛ばす感じ。」


「しおり、それも、

感覚で、

あけみやってるから、

やればわかるけど、

難しいんだ。これが。」


「ふふっ。

りさお姉ちゃんも、

あけみお姉ちゃんの事、

よく見てるんだね。」


「そりゃそうだ。

だって、あたしも、

あけみ大好きだからね。」


あたしは、一度揚げた、

唐揚げを、

火力をあげて、

二度めをあげながら、


「ふふっ。あたしも、

あたしの作った、

唐揚げ食べてる時の、

りさの顔、可愛くて、

大好きだよ。」


「もう、そんな所、

見てんなよ。恥ずかしい」


「えへへ。りさお姉ちゃん

可愛い。」


「しおりも、やめて。」


「ふふっ」と、あたしは、

笑うと、

ほら、唐揚げ、揚がったよ。


一つの大皿に、

あっという間に、山盛りの

唐揚げ。


「美味しそう。。。」


「ぱくり」


「熱っ。」


「あ~ずるい。

りさお姉ちゃん、

行儀悪い~。」


「しおりも、食べて、

いいよ。」


あたしは、しおりに、

手で一つ唐揚げを掴むと、

しおりの、口の前に、

差し出した。。


「あ~ん。」


「おいひい。」


「それは、作ったかいが、

あったよ。」


嬉しそうな顔。あたしも、

本当、嬉しいし、

こころが、ほんわかと、

暖まる。


ハンバーグの、蓋を外し、

最後の、火加減を、

調整すると、

水気を飛ばして、

ハンバーグが、

焼きあがり、

最後に、ソースを作る。


ハンバーグを作った、

フライパンの油を使って、

調味料を、目分量で、

投入。かき混ぜたら、

あたしの、オリジナル

ソースの完成。


「あけみお姉ちゃんの、

ソースって、

そうやって作ってるんだ」


「まぁね。」


丁度、ご飯が炊けて、

あたしは、最後に、

サラダを盛り付ける。。


「完成。早く食べよ。」


テーブルには、

山盛りの唐揚げと、


ソースが、かかって、

光って見える、

ハンバーグ。


大皿に作ったサラダ。


ご飯が並んだ。


「早くたべよ。」


「あけみお姉ちゃん、

頂きま~す。」


「ふふっ。息ぴったり。」


「頂きます。」


あたし達は、黙々と、

ハンバーグ、唐揚げ、

サラダと、食べた。


「あけみお姉ちゃんの、

ご飯、本当美味しい。」


「あたしは、あけみと、

結婚したいくらいだよ。」


「何言ってるんだか。」


「駄目、私が、

あけみお姉ちゃんと、

結婚する。」


「ふふっ。ありがと。」


みんなで、朝の分まで、

おかわりして、

食べすぎて、横になった。


「なんか、お腹がいっぱい

って、幸せだね。」


「ふふっ、あたしも。」


「お姉ちゃんの、

ご飯、本当に美味しかった」


「また、作るよ。」


「あたし、お金貯めて、

お店やろうかなぁ。。」

そう、呟いた。


「どんな?」


「う~ん。喫茶店と、

定食みたいな感じで、

やれればいいかなぁ。」 


「あけみが、お店出すなら、

あたしも、手伝うよ。」


「ふふっ。ありがと。」


「あ~ずるい。私も、

やりたい。」


「まだ、漠然としてるから、

やるかどうか、

わかんないよ。」


「でも、何か始めるなら、

高校行ってる間に、

取れる資格とか、

揃えたいね。」


「そうだねぇ。」

。。。。。。。。。

「考えてみようかなぁ。」


あたしが、何気なく、

そう、話した事が、

これからの、あたし達の、

目標になるなんて、

この時は、そこまで、

真剣に、考えてなかった。


「お腹、落ち着いたら、

何か、歌いたくなったから、

カラオケ行かない?」


「カラオケ?あたしは、

いいよ。しおりは?」


「カラオケ?私あんまり、

行った事ないけど、

お姉ちゃん達となら、

行きたい!」


スマホで、検索かけると、

個室のカラオケルームを、

見つけて、夕方の

予約をした。


あたしは、でも、この先、

お互い、結婚とかしても、

働く場所が、同じなら、

ずっと一緒に、

いられるって、

思ったんだ。。。


ねそべりながら、

資格を、検索して、

大体の事がわかった。


「あたし、コンビニの、

バイト、辞めて、

飲食系に、変えようかな。」


「どうしたの?あ、例の、

バイト君?」


「いや、なんか、調理師の、

資格とるのに、学校行くか、

2年以上の、

そう言う所で、働いてるか、

っていうのが必要らしい

んだよ。」


「何、そのバイト君って?」


「ああ、あけみの、

バイト先に、あけみに、

言い寄ってる男が、

いるんだよ。あたしが、

追っ払ったけど。」


「あけみお姉ちゃんに、

そんな事が。」


「まぁ、あたしも、

あけみも、男からは、

距離置いてるから、

しおりの、心配は、

いらないよ。」


「だって、

あけみお姉ちゃんが、

心配だもん。」


「しおりに、こんな事、

言うのはどうかと、

思うけど、あたし達に

とって、男って、

生きてくための、

仕事というか、

軽蔑されるかも知れないけど

お金だったんだよね。

だから、あたし達は、

普通になれない限り、

男とは、付き合えないし、

付き合わない。

あたし達にとっても、

もし、付き合ったとしても、

相手に悪いし。」


しおりの、顔が、

少し暗くなる。


「私、お姉ちゃん達の事、

軽蔑なんて、しないよ。

私だって、あの時、

家出して、そのまま、

お姉ちゃん達に、助けて

貰えてなかったら、

お姉ちゃん達が、

私の事、

連絡してなかったら、

連れ戻されるのに、

もっと、時間が、かかって、

きっと、お金もなくなって、

同じ事してたかも、

知れないもん。」


「知ってたんだね。」


「わかるよ。そのくらい。」


「そっか。」


「うん。」


「私、後から、凄く、

恐くなった。家に帰って、

親に怒られて、

自分が、どうなりそう

だったのか、考えて。。。

お金が、なくなる前で、

良かったって。。。

でも、良かったんじゃない、

なくなる前に、

お姉ちゃん達が、

救ってくれたんだって。

あの時、逃げ出した私に、

考える時間と、

親と向き合う時間を、

くれたんだって。

そんな事を考えてたら、

もう、お姉ちゃん達の事、

本当に、大好きになってた。

私が、辛くて、

困ってた時、

お姉ちゃん達の方が、

ずっと辛かったのに、

それでも、私の事、

気遣ってくれた。

助けてくれた。

優しくしてくれた。

そうしたら、

また会いたい。

ずっと一緒にいたいって。

だから、私は、

今、ここにいるんだもん。」


「しおりが、同じ目に、

合わなかった事が、

あたし達の、唯一の、

救いだったよ。」


「お姉ちゃん。ううっ。」


しおりが、泣いちゃって、

あたしも、りさも、

困って。しおりを、

泣き止むまで、抱き締めた。


「もう、泣かないで。」


「うう。だって。

お姉ちゃん達は、

いっぱい酷いめにあって、

辛かったのに、

苦しかったのに、

何で、そんなに、

優しいの。

そんな、お姉ちゃん達が、

幸せじゃないのが、

私は、許せない。」


「うん。ありがとう。」


「大丈夫。今は、

幸せだから。

しおりが、いるから、

今、本当に、幸せだよ。」


「ううっ。お姉ちゃん。」


「優しいね。しおりは。」


「泣き虫だねぇ。」


「りさお姉ちゃんには、

言われたくない。」


「ふふっ。」


「あははっ。」


「えへへ。」


少し休んで、カラオケに、

出掛けた。

私達は、スマホで聞いてる、

流行りの歌を、歌ったけど、

しおりの、歌ううたは、

子供向けの歌が多く、

とても、可愛かった。。。








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