第20話 今年も終わるね

こたつを出して、三人で、

かたつむり。


三人で入るには、

微妙な、足の位置の、

バランスが、必要だ。


普段なら、あたしと、

りさだけ、だから、

少しずらせば、

何とかなる。


そこに、横方面から、

しおりの、足が、

生えてくる。


絶妙な、バランスとは、

言っても、こたつに、深く

入る事はやっぱり出来ない。


しおりが、髪飾りを、

撫でながら、持ってきた、

小説を読んでいる。


「ねぇ、しおり、

その小説って、どんな

話しなの?」


「これ、ですか?恋愛

ものです。」


りさが、体を起こして、

しおりを、覗き込む。


「学園ものだね。」


「そうですね。学校で、

出逢った、男女が、実は、

血の繋がった兄妹で、

好き合っちゃう話しです。」


「なんだそれ、結構、

きつい話しだなぁ。」


あたしも、体を起こす。


「私、一度読んでるんで、

興味あったら、

読みますか?」


「うーん。

お姉ちゃんとしては、

妹が、道を踏み外さない様に

見てあげないとね。

貸してみなさい。」


りさが、しおりから、

本を受け取ると、

真剣に読み出した。。。


あたしは、パラパラと、

旅行雑誌をめくって、

二人を、チラリと、

見る。


みんなで、読み物をしてる

から、凄く静かだ。


「ふふっ」


りさが、急に笑いだす。


「ん。それ、面白いのか?」


「いやぁ、だって、

こんなわけないと、

思ってよ。」


あたしは、りさの、後ろに

周り、その小説を、

一緒に読みだす。。。


「おぅ、そうなるのかぁ。」


「ここが、面白いんだよ。」


「な。」


「うん。まぁ」


「だろ」


りさが、

木だとすると、

あたしは、それに抱きついた

熊の様な姿勢で、

小説を読みふける。


暫くして、

しおりが、それに気付き、

四つん這いで、

近寄ってきて。


「また、二人でズルい。」


りさの、横に、ちょこんと

座り、別の小説を、

読み出した。


「わぁ。これは、

都合良すぎるだろ。」


「そうだな。」


しおりが、横から、


「読むの速いですね。

そうなんですよ、

ドロドロの展開かと、

思って、読んでいくと、

実は、兄妹じゃ無かった。

ハッピーエンドって、

終わりなんです。」


「二週目の、あら探し、

見たいな感じで、

読んでたんです。」


「あら探しも、何も、

殆ど、両親の、

勘違いじゃねぇか。」


「迷惑な親だなぁ。」


「この、かあちゃんが、

二股してるのが、

悪いんだよ。」


「まぁ、創作なんで、

そんなに、怒らなくても」


しおりに、なだめられ、


「それもそうだな。

でも、それなりに、

面白かったよ。」

そう言って苦笑いした。


あたしは、りさに、

抱きついたまま、


「そろそろ、蕎麦食べる?」


そう、二人に聞いた。


「なんか、あけみさんと、

りささん、めちゃくちゃ、

中良いですね。なんか、

わたしだけ、

のけ者みたい。」


「ん。じゃあ、しおり、

真ん中に入っていいぞ。」


体を離し、隙間を作って、

しおりを、見つめる。


嬉しそうに、そこに、

挟まる、しおり。


「暖かい。」


しおりは、あたしが、

熊なら、コアラの様な

感じで、りさの、

背中にくっついた。


りさは、しおりの手を、

掴み、


「しおりの手、小さいねぇ」


そう言って、手を、

もみもみとしている。


確かに、あたしと、

りさは、身長は、

そんなに、かわらない。


しおりは、あたしより、

こぶし一つ分は、

小さい。たぶん、

150センチ前半だろう。


だから、後ろから、

りさに、抱きついた、

しおりが、凄く、

小さく見えるのだ。


逆に、あたしは、

160センチ後半だから、

なんだか、子供に、

抱きついてる感じ。


可愛いなぁ。妹って、

こんな感じなのかなぁ。

あたしは、たぶん、

しおりになら、

何されても、怒んないん

だろうなぁ。

しおりの、髪の匂いを、

すんすんと、嗅ぎながら、

一人、萌えていた。


「あけみさん、

くすぐったい。」


後ろをちらりと、

振り返り、

しおりが、くねくねと、

体を揺らす。


「あけみさん、お蕎麦、

食べるんでしょ。」


「あ、そうか。しおりが、

可愛すぎて。つい。」


「私で、遊ばないで、

下さい。」


「妹に、怒られてやんの。」


りさが、こたつを、

リズミカルに叩きながら、

あたしに、言った。


「さ、蕎麦でも茹でよ。」


ちょっと、ムッとして、

あたしは、立ち上がると、

台所に、移動した。


しおりが、すっと、

後ろを追いかけて来て、


「手伝うね、お姉ちゃん。」


もう、その一言で、

あたしの、気分は、

ふわふわと、浮いていた。


鼻歌を歌いながら、

海老の天ぷらを揚げる。


「この器で、いいですか?」


「OK!」


横で、しおりが、

器を準備してくれてる。


「しおり、鍋に、

水貯めといて。」


「はーい。」


海老の香りに釣られて、

りさも、やって来た。


「海老、いい匂い。」


「ふふっ。海老揚がったよ」


鍋を火に掛けて、

蕎麦を茹でたら、


つゆは、

鰹だしで、あたしが、

昨日作っておいたやつ。


「りさ~、持ってって!」


こたつの上に、

天ぷらそば。


「どう、りさ、しおり。

あたし、渾身の、

年越しそば。」


「私も、揚げたての、

こんなに、大きな、

海老天入った、年越しそば

なんて、初めて食べます。」


「いや、食べなくても、

旨いって、香りが、

半端ない。」


大きな海老は、おせち用に、

買った海老を、元々、

焼いて食べようと、

残して置いた物だ。


「いただきまーす!」


良く揚げた、海老を、

頭からかじる。


海老の味噌が、口の中に、

いっぱいに広がる。


「んーっ!」


「あけみ、旨すぎる!」


「自分で、作ったけど、

まじで、旨いな。」


「つゆも、美味しいです。」


「これは、年越しそば

じゃなくても、また、

食べたいです。」


「しおりが、そんなに、

喜ぶなら、また、

作るよ。」


みんなで、あたし特製の、

年越しそばに、舌鼓。


「旨いし、暖まるね。

ありがと、あけみ。」


「どういたしまして。」


初めて食べた、年越しそば。

意味の有るものを、

作って、食べる。

やっぱり、節目を感じる、

そう言う事で、くぎりを、

付けるって事の、大切さを、

感じたような気がした。。


少し休憩して、

お風呂して、

布団を敷いて。


今日は、日が変わるまでは、

起きてようって、決めた。

夜更かしを、する日。


今、10時だから、後、

二時間で、今年も終わる。


「私、こう言うの、

初めてだから、何か楽しい」


「あたしも、年越しとか、

気にした事無かったから、

不思議な気分だよ。

りさは?」


「んー。そうだね。

あたしは、年越しって、

事よりも、

暖かいここで、集まって、

あけみと、しおりと、

年の終わりを、過ごせてる

そう言う事が、嬉しいかな」


「そうだね。確かに。

去年は、バタバタしてて、

こんなに、ゆっくりと、

出来なかったもんね。」


「私は、あけみさんと、

りささん。二人が、

私の、お姉ちゃんに、

なってくれて、

お姉ちゃん達と、一緒に

過ごせる事が、嬉しいです。」


「あたしも、りさも、

しおりが、お姉ちゃんって、

呼んでくれるの、

嬉しくおもってるよ。

なぁ、りさ。」


「そうだね。可愛くて、

食べちゃいたいくらい。」


しおりの、目が潤む。


「あらら。泣くことない

じゃん。」


「よし、よし。」


りさが、ふわっと、

しおりを、包む。


「ごめんなさい。

なんか、嬉しくて。」


あたしも、しおりの背中を、

抱き締める。


「へへ、暖かい。」


しおりが、目尻の涙を、

拭って、呟く。。


「あ、一年の最後に、

しおりに、あやまるの、

忘れてた事があるんだ。」


「え、なに?なに?

怖いんですけど。」


りさの、顔を、チラッと、

見ると、りさも、頷く。


「あのさ、学園祭の時、

途中で、帰ったの、

バイトだって、言ったけど、

あれ、しおりに、嘘ついた」


「え、知ってるよ。

私、ここに来ると、

二人のシフト見てるもん。」


「あ、そう、なの?」


「だって、

シフト知らなきゃ、

遊びに来れないじゃん。」


「ああ、なるほど。」


確かに、いつも、

しおりからの、

連絡がある時は、

バイトがない時だった。


「あの時、二人の、

雰囲気、おかしかった事、

正直、気にはなりました。

けど、気になったからって、

辛そうな顔してる、二人に、

聞けるほど、私、鈍感じゃ

ないから。」


「そっか。ごめんな。

気を遣わせて。。」


「いいんです。私、

二人が、私を、傷付ける、

嘘はつかないって、

知ってますから。」


そう言って、

微笑む、しおり。


「ありがとう。しおり。

あたし達って、

薄々気が付いてるかも

知れないけど、

親とか、家族とか、

そう言うのがさ、

無いような環境で、

育ってるから、

ああ言う、場所にね、

長居するのが、辛くなって、

逃げたんだよ。」


「うん。何となく、

わかってた。。

あの後、私。気づいたの。

二人とも、私の為に、

頑張って、学園祭に、

私を見に来て

くれたんだって。」


「はは、バレてたか。」


「だって、わかるよ、

私が、虐められてたから、

ちゃんと、学校で、

上手くやれてるか、

心配してくれてたもんね。」


「行って、良かったよ。

元気な、しおりが、

見れたから。」


りさが、しおりの、

頭を撫でる。


「へへ、私ね、思ったの、

自分が、辛くても、

私の事を、大切に、

想って動いてくれる。

二人は、私の本当の、

お姉ちゃんだって。。。」


「うん。そっか。」

そう、返事を返して、

あたし達も、少し、

目尻が、熱くなった。


「うん。これで、スッキリ、

年を越せそうだよ。

なぁ、りさ。」


「ああ、そうだね。」


あたし達も、目尻の涙を、

抑えてた。


「お姉ちゃん。大好き。

もう、今から、ずっと、

二人の事、お姉ちゃんって、

呼ぶ事にした。」


しおりの、

笑顔は、優しくて。。。

本当に、可愛い。。。


「今年も、もう終わるね。

二人とも、

来年も、宜しくね。」


気が付けば、時計は、

もうすぐ、12時を、

回ろうとしていた。


あたし達は、その後も、

じゃれ合いながら、

楽しい時を過ごした。。。



































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