第29話 星に願いを

「忘れ物ないか、ちゃんと、

確認して。」


まだ、薄暗い早朝、

あたし達は、旅行に行く為、

早起きして、家を出る。。


駅に着くと、改札を、

くぐり、ホームに向かう。


浮かれて、しおりが、


「何か、ドキドキする。」


なんて、言うから、


「しおり、ちゃんと、眠れたの?」


あたしは、しおりが、

テンション高いので、

心配になった。


「うん。えへへ。あけみお姉ちゃんに、

くっついてたら、

安心して、寝ちゃった。」


目線を、あたしに、

配らせて、りさが、

あたしを、心配する。


「あけみは、ちゃんと、

眠れたの?あたしも、

しおりも、何時も、

くっついてるから、

寝苦しくなかった?」


あたしは、苦笑いして。。


「もう、馴れたよ。大丈夫。

ぐっすり眠れたよ。」


ホームのアナウンスが、

響く。。。


「ほら、電車来たよ。」


りさと、しおりの、

手を取り、早朝の、

電車で、箱根を目指し、

あたし達は、旅に出た。


箱根までは、電車と、

バスで向かう。


平日の、

早朝と言う事だからか、

電車の席は、普通に、

座れた。


あたしは、お姉ちゃん、

と言うよりは、

お母さんみたいに、

二人の真ん中に座り、

しおりは、

あたしに、べったり、

くっついてるから、

子供の様だった。


「しおり、あんまり、あけみに、

寄りかかってると、

あけみが、着くまでに、

疲れちゃうよ。」


「あ。あけみお姉ちゃん、

重たかった?ごめんなさい。

なんか、嬉しくて。」


あたしは、「ふふっ。」と、

笑うと、


「何時もの事じゃん。しおりも、

りさも、気にしなくて、良いよ。」

と、りさの、

肩に手を回した。


「うん。あけみが、

大丈夫なら、気にしないよ、

きつかったら、ちゃんと言ってね。」


三人で、仲良く、

くっついて、一時間、

位で、小田原駅に着いた。


東口に、向かって、

歩き、バスに乗る予定。


移動中は、

ずっと、しおりと、りさと、

腕を組んでるから、

とても、暖かい。。


「お姉ちゃん、バスに乗ったら、

箱根だね。」


「うん。そうだよ。着いたら、

ご飯食べようね。」


「あけみは、何食べたいか、

決めてるの?」


「んー。あんまり、

脂っこくない物だったら、

何でもいいよ。」


「じゃあ、おそばとか、

うどんとかにする?」


「そうだね、朝だし、

その方がいいかもね。」


あたしは、スマホを、

取り出すと、行き先の、

お蕎麦屋さんを、

検索してみる。。。


「あ、少し、箱根だと、

開店遅いみたいね。」


それを聞いたりさは、

振り返ると、


「じゃあ、ここの駅で、探した方が早いね。」


と、足を止める。

しおりも、あたしの、

腕を、きゅっと、

締めると、


「うん。お姉ちゃん、食べてから、

行こうよ。

時間も、いっぱいあるし」


と、その意見に、

あたしも、賛成した。


駅前の、お蕎麦屋さんは、

サラリーマンの大人達が、

出勤前の、食事をしていた。



「何か、

懐かしい感じだね。」


「ああ。本当に。」


あたしと、りさは、

駅前での暮らしを、

思い出していた。。


「お姉ちゃん、東京の、

駅前のお蕎麦屋さん、

思い出してたの?」


「そうそう、しおりも、

行ったよな。」


「うん。お店は、全然、

違うけど、雰囲気は、

似てるね。」


「そうだね。」


早朝の、お蕎麦屋さんは、

サラリーマンの人達が、

多くて、この光景は、

何処でも、同じなんだなと、

妙な、安心感があった。


三人で、食券を買い、

座って食べる。


頼んだのは、かけそば。


「なんか、懐かしいね、

前にも、こうやって、

三人で食べたね。」


「あの時は、まだ、

二人が、お姉ちゃんに、

なってくれるなんて、

思いもしなかったけど、

私は、友達になってくれた、

お姉ちゃん達の事、

すぐに、

好きになったんだよ。」


「そっかぁ。ありがと。

あたしは、

会ったばかりの時は、

しおりが、心配で、

仕方なかったけどね。」


「あたしも、そんな、

感じだったなぁ。

初めて、しおり見たとき、

中学生だと、思ってたし。」


あたしと、りさは、

顔を見合わせて、


「高校生って、聞いた時、

あたしも、りさも、

びっくりしたんだよなぁ。」


それを聞いて、

しおりの、眉が動いた。。


「お姉ちゃん。それ、

どういう意味?」


「いや、小さくて、

可愛いかったから。。」


「何が、小さかったの?」

あ、余計な事いっちゃった。

そう思ったけど。。。


あたしと、りさは、

顔をまた、見合わせて、


「色々。小さくて、

可愛いかった。」


「う~。酷い。あのね、

お姉ちゃん達。。。

可愛いって、付ければ、

良いって訳じゃ

ないんだからね。」


「ごめん。しおり。

あの時は、本当に、

そう思っちゃったんだ。」


しおりは、「ふぅ。」と、

一息着いて。。


「怒ってないから。それに、

私も、好きだったけど、

お姉ちゃん達の事。正直、

少し怖いとも、思ったし。」


「まぁ、それは、

仕方ないよ。

普通とは、言えない生活、

してたのは、事実だしね。」


「もう、2年近く、

経つんだね。

あけみと、しおりと、

こうやって、一緒にいるの」


「そうだね。最初は、

想像もしてなかったよ。

友達を通り越して、

お姉ちゃんなんて、

呼ばれるなんてね。」


「えへへ。私も、

お姉ちゃんが、出来るなんて

思ってなかったよ。」


「あの時。。。

助けてくれて、本当に、

ありがと。お姉ちゃん。」


「しおりの事、

りさが、見つけたんだから

りさに、感謝だね。」


「りさお姉ちゃん、

見つけてくれて、

ありがと。」


しおりが、じっと見つめて

言うと、結っている髪を、

掴んで、りさが、照れる。


「りさお姉ちゃん、

可愛い。」


「馬鹿。」


お蕎麦屋さんを、後にして、

バス停に、向かうと、

流石に、平日と言う事も、

あって、わりと、

空いていて、あたし達は、

一緒の席に座ることが、

出来た。


箱根に近づくほど、

景色が変わる。

山が近くに見えて、

自然が多くなって。


あたし達は、外の景色を

楽しんだ。


あたしと、りさは、

人生初めての、旅行。


今までは、生きるのに、

必死で、こんな日が、

来るなんて、思わなかった。


「お姉ちゃん、今度は、

紅葉を、見に来ようね。」


「うん。いいね。」


「じゃあ、秋になったら、

また、みんなで、紅葉狩り

だね。」


りさも、楽しそうに、

笑った。


冬の、少し寂しげな景色。

所々には、雪があったり

して。


この、木々が、

赤く染まっていたら、

綺麗なんだろうな。

そんな、想像もしたりする。


バスから、降りると、

雑誌で、見てた景色が、

そこにあった。


「レンタカー、先に

借りないとね。」


ログハウスに行くには、

車がないと、ちょっと、

厳しい。。

あたしは、事前に、

予約して、コンパクトカーを

3日間借りていた。


「車借りたら、湖行くんだ

よね。」


「うん。芦ノ湖行ってから、

ログハウスだよ。」


車を借りて、行きは、

りさの運転で、

芦ノ湖を目指した。


湖が、見えてくると、

あたし達は、

テンションが、上がる。


「わぁ。船だぁ。大きい。

あれが、海賊船だね。」


ここに、来たのは、

しおりが、船に乗りたいって

目を輝かせたからだった。


車を停めて、乗船すると、

その、豪華な内装に、

違う世界に、来た感覚に

なった。


「凄いなぁ。こんなの、

あるんだねぇ。しおりの、

お陰で、良いものが、

見れたよ。」


「えへへ。私、凄く楽しみに

してたんだぁ。」


「写真で見るのと、

実物は、やっぱり、

伝わって来るものが、

違うよね。」


ちょっと、初めての船に、

酔ったけど、湖を、

端から、端まで、

進む船から、眺める景色に、

あたしも、感動して、

富士山とか、

沢山写真をとった。


「お姉ちゃん、みんなで、

写真とりたいね。私、

頼んでみる。」


近くにいた、年配の、

夫婦さんに、お願いして、

写真を、

記念にとってもらった。


「ありがとうございます。」


お礼を言って、船の中を、

三人で、巡る。海賊船と、

言うだけあって、

それらしい装飾が、

あちこちにしてあって、

見てる目が楽しい。


「海賊の、人形だね。」


「本当だ。なんか、偉そう

だね、こいつ。」

りさが、笑った。


その横で、ポーズを真似

する、しおり。

あたしも、りさも、真似

してみる。


たまたま、そこに、

また、年配の夫婦が、

通りかかり、


「撮りますか?」


と、聞かれたので、

三人で、

「はい。お願いします」

って、ポーズを決めて、

撮ってもらった。


海賊船を、降りると、

次は、ロープウェイに。


ちょっと、高くて、

怖かったけど、絶景だった。

取り敢えず、写真を、

沢山撮って、また、

アルバムを作るつもり。


「お姉ちゃん、楽しいね。」


しおりの目が、

キラキラしてて、

本当に、可愛かった。


りさも、凄く楽しそうに、

写真を、沢山撮っていた。


そこから、また、来た道を、

騒ぎながら、戻って。。。


「ちょっと疲れたね。

そろそろ、チェックイン

出来るから、今日は、

戻って、

のんびりしようよ。」


「あけみ、大丈夫か?」


「うん。ちょっと、あたし、

船が、苦手みたい。」


「お姉ちゃん、大丈夫?」


「うん。平気。」


「あけみは、強がりだから、

ちょっとって、言うときは、

かなり、疲れてるんだよ。」


りさが、しおりに、

向かって、そう言った。


「お姉ちゃん、今日は、

ゆっくりしようね。」


「ああ、悪い。」


あたしが、調子悪くて、

ログハウスまでは、

りさが、運転してくれた。。


「りさ、わりぃ。」


「少し寝てな。」


「うん。そうする。」


しおりも、静かに、あたしに

膝枕してくれていた。。


車で、一時間くらいで、

ログハウスに着いた。


少し眠ったお陰で、

だいぶ、

調子は戻っていたけど。。


「今日は、あけみに、

無理させちゃ駄目だよ。」


「大丈夫だって。」


「お姉ちゃん、たまには、

りさお姉ちゃんの、

言うこと、聞かないと、

駄目だよ。」


ちらりと、二人の顔を、

見ると、心配されてるのが、

良くわかった。


「わかったよ。

今日は、ゆっくりします。

明日も、

お出かけするんだもんね。」


「そうだよ。休憩したら、

ゆっくり、お風呂入ろう。」


あたしの、荷物を持つと、

しおりが、すっと、

車から降りる。


「荷物、運んじゃうね。」


「うん。お願い。」


正直、船酔いなのか、

何なのか、少し気分が、

すぐれなかった。


「凄い、素敵な所だね。」


「あけみは、取り敢えず、

ベットで、寝てな。

今日は、ご飯も、

あたしと、しおりが、

作るからね。」


「心配しすぎだよ。」


「あけみの、それは、

悪い所だよ。あたし達は、

姉妹なんだから、

我慢すんなって。」


「そうだったね。悪い、

なんか、こう言うの、

直さないと駄目だね。」


「そうだよ。

あけみお姉ちゃん。

少しは、頼ってくれないと、

妹として、辛い時も、

あるんだからね。」


「うん。これから、

少しづつ、こう言うの、

辞めるね。」

二人の気持ちに、

嬉しくて、目尻が、

暖かくなった。


「少し、横になってくるよ」


「うん。そうして。」


「お姉ちゃん、ベットまで、

一緒に行くね。」


しおりに、

付き添いしてもらい、

ふかふかの、ベットで、

横になる。

布団も、しおりに、

掛けて貰い、


「ゆっくり、おやすみ。」

しおりが、小さな声で、

言うと。。。


思ってたより、

疲れていたみたいで、

すぐに、あたしは、

眠ってしまった。。。


「ん。。。」


どのくらい、

眠っていたのか。。。

起き上がると、

頭は、スッキリしていて。


多分、あたしは、

寝不足だったと思う。

昨日、本当は、

良く眠れなかったから。。

あたしも、初めての、

旅行に、気が高ぶって、

なかなか、寝付けなかった。


朝、りさに聞かれた時、

ちゃんと伝えればよかった。

そうすれば、寝不足だって、

最初から、変な心配を、

かけることも、

無かったのに。。。


あたしは、ベットから、

起き上がると、

二人が、ご飯を作ってる、

大きな、キッチンに、

顔を出した。。


「お姉ちゃん、もう大丈夫?

もう少し、寝てたら?」

あたしに、気づいた、

しおりが、心配する。


「今度こそ、本当に、

大丈夫。

ごめん。実は、

昨日良く

眠れなかったんだ。」


「そんな事だと、

思ったよ。全く、

心配させて。。。」


「なんか、ごめん。

言いづらくて。。。」


「あけみ、今度から、

ちゃんと話そうね。

あたしは、

そうするって決めたから。」


「うん。あたしも、

そうするよ。心配かけて、

ごめんね。」


「りさお姉ちゃんの、

言うとおりだよ、

本当気をつけてね。

でも、

あけみお姉ちゃんも、

怒られる事あるんだね。」


「うん。でも、ちゃんと、

話せて良かった。

二人とも、ありがとう。」


りさと、しおりは、

あたしが、寝てる間に、

近くのお店で、

食料品の買い出しをして、

煮込みうどんを、作って

くれていた。


「あけみ、

具合い悪いとおもって、

うどんにしたんだよ。

消化もいいし。」


二人の優しさの、

詰まった、うどん。。。


「ありがと。あたし、

うどん好きだから、

嬉しいよ。」

って、微笑んだ。


うどんを食べて、

体も暖まり、みんなで、

ログハウスの、

外に出ると、そこには、

満天の星空。。。


「わぁ。。。」


「凄く綺麗。。。」


一緒にこんな綺麗な、

星空が見れた。

それが、とても嬉しくて、

あたしは、

空を見上げて。。。


「みんなで、もっと、

色んな所に行こうね。」


「うん。お姉ちゃん達と、

ずっと一緒がいい。」


「一緒だよ。あたし達は。

それに、あたしの、初めて、

気の許せる家族だから。」

りさは、本当に、

嬉しそうな顔で、

そう言った。。。


白い息が、星空に向かって、

上がって行くと、

あたし達の、

一緒にいたいと言う、

想いが、

一緒に昇って行く気がして、

あたしは、

こんな、暖かい気持ちが、

ずっと続く様に、祈った。







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