第10話 学園祭

「へぇ。凄いな。」


しおりの、高校の学園祭は、

結構気合い入ってて、

飾り付けも、華やかだった。


りさも、キョロキョロと、

周りを見渡して、

楽しそうだ。


「あけみさーん。」


しおりが、うちらに、

手を振って、小走りに、

近付いて来る。

物凄く、嬉しそうな、

顔で。


うちらは、今日は、

あたしが、ポニーテール。

りさは、お下げにして、

今日の為に買った、

こじゃれた格好で、

しおりの、お誘いを受けた。


「うわぁ、めちゃくちゃ、

可愛いです。」


しおりが、あたしらに、

抱きついて、ピョンピョンと跳ねる。


「まぁな、ちょっと、

何時もの服装じゃ、

浮いちまうと、思ってな。」


しおりが、あたしらを、

ぽーっと見てる。


あけみさんは、ニットの

ベージュの、

薄手のセーターと、

大人っぽい、シックな、

スカートをはいて、

スタイルが、いいから、

モデルさんみたいだった。


りささんは、可愛い、

ワンピース姿。。。


「綺麗だし、可愛いし、

逆に目立ってますよ。」


「そんなこたぁ、

ねぇだろ、褒めすぎ。」


あたしも、りさも、苦笑い。


「いやぁ、あけみは、ヤバイって。」


りさが、あたしを褒めると、


「りささんも、アイドル見たいです。」


と、しおりが、りさを褒めちぎる。


りさが、可愛く照れると、


「うっせー、早く案内、してくれよ。」


と、しおりの頭に、

ちょこんと、手を乗せた。


あたし達は、しおりの、

案内に連れられて、

軽音の、演奏をやってる

体育館に来た。


「ふーん。結構上手いもんだねぇ。」


あたしの、好きな曲も、

何曲か演奏が、あって、

それなりに、楽しめた。

数曲聞いて。。。

りさの方を、チラッと見て、

多分、あたしと、同じ。


そう感じて、しおりに、

他を案内して貰った。


「ちょっと、うるさかったですよね。」


早々に、

切り上げさせちまったから、

しおりが、気を使って、

そんな事を言う。


「いやぁ、そうじゃなくて、

うちら、

喉かわいちまってよ。

なんか、ねぇか?」


「あります。カフェやってる所。」


「そこ、いこうぜ。」


教室を、綺麗に造作で、

お店にアレンジされた、

そこは、入り口だけは、

カフェだった。

中に入ると、椅子とテーブルは、

学校のだから、そのギャップに、

なんだか、可笑しくなった。


「メニューです。」


席に案内されて、すぐに、

可愛い格好をした、

店員さんが、メニューを、

持ってきてくれた。


「あたしは、珈琲で。」


「んじゃ、あたしは、

この、スペシャルミルク

珈琲ってのにする。」


「なんか、甘そうだな。」


「スペシャルって、所が、気になる。」


「しおりは?」


「あ、じゃぁ、私も、

スペシャルミルクで。」


待ってる間、店内を、

くるっと見回す。。


楽しそうな、会話。

そこに、いる子供達の、

表情。いつもなら、

あまり気にならないが、

ここは、ちょっと、

それが、濃すぎる。。


「お待たせしました。」


「あ、こういうのかぁ。」


スペシャルミルク珈琲は、

珈琲牛乳に、ホイップ

クリームが乗った、

あたしには、見るからに、

ヤバイ飲み物だった。


りさは、付いてきた、

スプーンで、クリームを、

すくい、一口。


「いやぁ、凄く甘い。

やべぇな、これ。」


そして、珈琲を一口。


「うーん。流石スペシャル。」


「ふっ」と、流石に、

あたしも、笑っちまった。


「これは、砂糖を、

飲んでる見たいな、甘さですね。」


しおりも、口角が、

少しひきつっていた。


あたしの、珈琲は、

普通だったけど、

我慢出来なくなった、

りさに、半分飲まれた。。


結局、スペシャル過ぎて、

二人とも、全部飲めず、

カフェを後にして、

口直しを探しに、校内を、歩いた。


「お、焼きそば売ってるよ、

流石に、ハズレはないよな。多分。」


「だな。」


あたしらは、焼きそば、

お好み焼きが、食べれる、

教室に入ろうとすると、


「ここが、私のクラスなんです。」


「お、そうなんだ、

じゃあ、尚更なんか、

買ってやんねぇとな。」


「だね。」


ガラガラっと、

しおりが、あたしらを、連れて入る。


「しおり、誰、その、綺麗な人。」


しおりのクラスメイトが、

数人で、あたしらを囲む。


「あたしの、お姉ちゃん。」


しおりが、そう紹介すると、


「しおり、お姉ちゃん、いたんだぁ。

でも、あんまり、似てないね。」


「そりゃ、そうだ。あたしら、

こいつの、お姉ちゃんだけど、

友達で、お姉ちゃんだからな。」


「あ、そう言う事。」


しおりの友達は、なんとなく

納得したみたい。


しおりの、お勧めで、

注文すると、あたしらの、

分は、しおりが、焼いて出してくれた。


「ちゃんと、うまく、

学校やれてんじゃん。」


「良かったね。本当に。」


二人で、しおりの様子を、

見て、しみじみと、ほっとした。


学園祭に来た、一番の、

理由は、学校での、

しおりが、見たかったからだった。


「お待たせしました。」


エプロン姿のしおりが、

焼きそばと、お好み焼き、

それと、お茶を運んで来てくれた。


「お、サンキュ。」


「やっぱり、こう言うので、

いいんだよなぁ。」


「うん。あたしらに、

合ってる。美味しいよ、

しおりの焼きそば。」


「やったぁ。でも、

普通に、作っただけだよ。

でも、良かった。嬉しい。」


しおりの、可愛い笑顔。


それだけで、ここに、

来た意味は、充分達成した。


しおりの、友達が、

一緒に写真撮りたいとかで、

あたしらは、

結構、スマホで、写真撮られて、

忙しかった。だけど、まぁ。


「しおりが、

嬉しそうな顔してるから、

まぁ、いっか。」と呟いた。


しおりのクラスから出て、

廊下で、しおりの出待ち。



学園祭なんて、見れたり、

来れたりなんて、夢にも、

思わなかった。。。


不思議な気分。。。


「なんだか、キラキラ

してるな。眩しいや。」そう呟く。


暫く、窓の外に、視線を

向けて、

眺めていると、りさが、

そっと後ろから、肩を当てる。


「どうした?」


「いや、なんかね。」


「はは。そうだね。」


「まぁ、あたし達も、

普通の家で、育ったら、

こうだったのかなってな。」


。。。


「わかんね。」


。。。


「だね。わかんないね。」


「まぁ、そろそろ、帰るか。」


「そう、だね。。。きついかも。」


ここに、これ以上いると、

目の前に映る、

子供達が、キラキラ

してて、息苦しくなった。

あたしも、りさも、

夢見た様な、光景を、

現実的に、見せつけられて、

別に、ただ、呆然として、

急に、場違いな感覚に、

落ちていた。。。

あたしは、

すうっと、深呼吸して、

深く息を吐く。。。


「りさ、たまには、

カラオケでも、行くか?」


「いいね。」


「じゃあ、いこうぜ。」


学園祭は、楽しかったけど、

まだ、あたし達には、

そこにある、家族や、

子供として生きている、

学生達の、雰囲気が、

見ていると、気持ちが、

重くて、苦しかった。


しおりには、悪かったけど、

これから、

バイトだっつって、嘘をついて、

二人で、その場から、逃げ出した。


学校を抜けて。。。


「これが、普通なら、

普通って、難しいね。。」


「まぁ、手に入らない物も、あるさ。」


あたしは、りさの肩を、ポンと、叩き、


「あたし達なりってのでも

いいんじゃね。」


そう言って、息を深く、吸い込んだ。


結局、その後は、思い付く

限りの、歌を、りさと、

歌って帰った。

こんなんで、へこむなんて、

あたしも、まだまだだね。


落ち着いたら、しおりに、

正直に、ちゃんと、今日の事、

謝ろうと、思った。。。






















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