第33話 前世の従者と衣替え
────6月に入った今日この頃。
俺は、俺の隣の席に座っているアリシアと今日から行われた衣替えについて話をしていた。
「今日から夏服か……今までずっとブレザーに長袖だったから、突然衣替えをするとなんだか違和感があるな」
「まぁ、アレクティス様はどのようなお洋服を着ておられても素敵ですので、私は違和感など感じませんよ?」
俺にそう言ってくれているアリシアも今日から夏服となっており、半袖となったことによってその色白の綺麗な腕や手が露わとなっている。
というか、ブレザーを着ているとわかりにくかったが────夏服の通気性のある生地に加えて、純粋な服の分厚さが薄まったことによって、アリシアの胸元の主張やボディラインの主張が今までよりも強まっている気がする。
「……っ!」
そんなことを考えていると、俺の脳裏には以前アリシアとホテルに宿泊した時のバスローブをはだけさせたアリシアの姿が映った。
今まではアリシアの体を直接視界に入れたことなんてほとんど無かったが、あの時は隠れるべき部分は隠れていたと言ってもしっかりとアリシアのはだけたバスローブ姿を視界に入れてしまった。
今までは見たことが無かったからその服の下にどのようなものが隠されているのかすらわからなかったが、今ではそれが────
「アレクティス様、お顔が普段と比べ赤くなられているようですが……もしや、以前のホテル宿泊時の私のバスローブ姿を思い出してくださっているのですか?」
「っ!?」
アリシアが他の生徒には聞こえない声でそう聞いてくると、今の俺の思考はできるだけバレたくないものだったが、突然そう指摘された俺は思わず露骨に驚いた反応を見せてしまった。
そして、その俺の反応を見たアリシアは頬を赤く染めて嬉しそうにしながら口角を上げると、続けて他の生徒には聞こえない声で言う。
「アレクティス様がお望みでしたら、またアレクティス様にお見せ……いえ、アレクティス様のご自由に触れていただいても構いませんよ」
「っ……!そ、そんなことできるわけないだろ!大体、俺はそんなこと考えてない……!」
「でしたら、どうしてお顔を赤くなされているのですか?」
「そ、それは……」
当然、他に理由など無いし、顔が赤くなっている理由なんてそう簡単に嘘の理由を説明できるものでは無いため、俺は思わず沈黙してしまう。
今まで、アリシアのことを異性として意識してしまうような出来事、というかアリシアのことは常に異性として意識はしていたが、あそこまで直接的にアリシアの女性としての部分を視界に映したことは前世と今世でもあれが初めてだったため、俺は今おそらく今まで以上にアリシアのことを異性として意識してしまっており、前世の経験ですら補うことのできない状況に居る。
「……アレクティス様、私を────」
「これよりホームルームを始めます、各生徒は席に着いてください」
アリシアが何かを言いかけた時、教室のドアが開いたかと思えば、そこから先生が入ってきて、アリシアの言葉は先生によって遮られる形となった。
そして、先生は続けて言う。
「以前からお話させていただいていた修学旅行のお話ですが、行き先が決定したので本日は班決めも兼ねてこの修学旅行で学ぶことを皆さんに説明させていただこうと思います」
そう言うと、先生は各生徒にプリントを配り始めた。
修学旅行……そういえばそんなことも言っていたが、行き先はどんなところになったんだろうか。
そんなことを思いながらプリントが配られて来るのを待ち、プリントが配られると────そのプリントに修学旅行の行き先として映っている写真の建物や雰囲気は、俺たちが前世で過ごしている場所ととても酷似していた。
前世とこの世界が別の世界であることは間違いないから、あくまでも酷似しているだけ────それでも、前世を思い出さざるを得ないその場所で、俺はアリシアと向き合いざるを得なくなることを、この時から予感として感じていた。
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