第38話 前世の従者と修学旅行①

◇継条輪(アレクティス)side◇

 飛行機に乗ってから数時間の間眠っていた俺は、なんとなく目を覚ますと隣に居るアリシアが言った。


「おはようございます、アレクティス様」

「……おはよう、アリシア」


 また嫌な夢を見てしまったから少し気分が悪いが、不思議といつもよりは嫌な気分にはなっていない。


「今は……昼頃か、到着するのが夜になるならまだまだ時間はあるな、アリシアも明日に疲れを残さないように今の間に眠っておいた方が良い」

「いえ、アレクティス様が起きていらっしゃるのに私だけ眠りにつくことなど────」

「良いから眠ってくれ!これも明日、アリシアとの修学旅行を存分に楽しむためだ」

「私との、修学旅行を……アレクティス様がそう仰ってくださるのであれば、お言葉に甘えて、少し仮眠を取らせて頂こうと思います」

「あぁ、そうしてくれ」


 俺がそう言うと、アリシアは小さく微笑んでから目を閉じ、少ししてから完全に眠りへと着いた。


「……」


 その時、俺は俺の手の上にアリシアの手が重ねられていることに気が付いた。

 そして、その直後────


「アレクティス様……私……力……」


 アリシアが、先ほどの俺と同様に悪夢でも見ているのかうなされ始めた。


「そうか、おそらくさっきの俺もきっと似たような感じになっていて、それをアリシアが……なら」


 俺は、今度は俺がアリシアの手に自らの手を重ねた。

 すると、アリシアはうなされなくなり、とても安心して心地良さそうな表情で眠り始めた。


「アリシア……アリシアの背負っているものは、俺が……」


 眠っているアリシアに向けてそう静かに決意の言葉を漏らすと、その後も俺とアリシアは数時間ごとに交代交代で眠りに着いた。

 そして……


「────クティス様、アレクティス様」


 アリシアが俺の名前を呼ぶ声が何度か聞こえてきたため俺が目を覚ますと、アリシアが言う。


「アレクティス様、飛行機が無事目的地へ到着したようです」

「そうか、ありがとう」

「と、とんでもございません!」


 起こしてくれたアリシアに感謝を伝えると、アリシアは慌てた様子で首を横に振ってそう言った。

 そして、俺やアリシア、他のクラスメイトたちに教師も飛行機から降り、ホテルへ向かうべく空港から出ると────辺りには西洋建築がたくさん建っており、そこはまさしく海外だった。


「やっぱり、あの建築様式を見ると前世を思い出すな」

「そうですね……アレクティス様との前世での思い出を、たくさん思い出します」

「そうだな……」


 その後、俺たちは宿泊予定地のホテル前までやって来ると、そのホテルの中に入る……そのホテルは、遊園地の近くにあったホテルよりも装飾が豪華、というかそれこそ前世を思い出す装飾となっており、クラスメイトたちはとても楽しそうにしていた。

 その後、男子は男子、女子は女子で分かれてそれぞれの部屋に宿泊することとなった────はずだったが。


「アレクティス様は私と同じ部屋なのでこちらです!」

「え……?」


 そう言われた後、アリシアについて来るよう言われて俺は一応アリシアの後ろを歩いているが……


「なぁアリシア、俺とアリシアが同じ部屋ってどういうことだ?女子のアリシアと同じ部屋ってことは他の女子も居るのか?いや、でもそうなったらそもそもどうして俺が────」


 次々に出て来る疑問を俺がアリシアに投げかけようとしたところで、アリシアは口を開いて言う。


「いえ、他に女性など居ませんよ────本日私とアレクティス様が宿泊する部屋に居るのは、私たち二人だけなのです」

「え……?それは、どうしてだ?」


 俺がアリシアにそう聞くと、アリシアはある部屋のドアの前で足を止めてその理由を説明し始めた。


「修学旅行の夜には、男女が関係性を深めることが多々あるということを耳に挟みました」

「あ、あぁ……まぁ、なんとなくイメージはあるな」

「ですが、聞くところによれば男女の部屋は別だと先生が仰られていましたね」

「それもそうだな」

「────ですから!私は男女の関係性を深めることが多々あるという機会を逃すまいと、アレクティス様と二人で夜を過ごせるように自費でこのホテルの二人用の部屋を借りたのです!ですのでアレクティス様、本日から二泊三日の修学旅行の間、私とアレクティス様はずっと一緒です!」


 そう言うと、アリシアは楽しそうにドアを開けてその部屋の中に入った。


「に、二泊三日ずっと一緒!?」


 その言葉に驚いた俺だったが、それから────本当に二泊三日の間、ずっとアリシアと一緒になる修学旅行が始まった。

 ────この修学旅行によって、俺とアリシアの関係性が大きく変わることを、この時の俺はまだ知る由も無かった。

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