第45話 アリシアとお風呂②

 一緒にお風呂場に入った俺とアリシアは、今までに無い緊張感のようなものを味わう……目の前に居るのは、手でタオルを持って体の前方だけを最低限隠しているアリシアだが、色白な肌や綺麗なボディラインはしっかりと覗かせていた。


「あぁ、アレクティス様……見ていて惚れ惚れする、とても素敵なお体です……が、私に遠慮して腰にタオルなど巻かずとも良かったのですよ?」

「俺が恥ずかしいんだ!」

「左様でしたか……ではアレクティス様、まずは私がアレクティス様のお体を洗わせていただきますね」

「あぁ、ありがとう」


 俺がそう言うと、早速アリシアは石鹸を手に取って俺の体を洗い始めてくれた。


「このように、アレクティス様の生肌に触れ、アレクティス様のお体を直接洗わせていただける日が来るとは……」

「……前世では、アリシアとお風呂に入ることすら俺はしなかったからな」


 本当に、今思えば俺は一体どれだけ主人と従者という関係に囚われてしまったいたのかと思える。


「今世ではたくさん、私とお風呂に入ってくださるのですよね?」

「もちろんだ」


 俺がそう答えると、アリシアはとても上擦った声で嬉しそうな声を上げた。

 そして、アリシアは俺の背中や腕を洗い終えてから言った。


「アレクティス様……よろしければ、前も私がお洗い致しましょうか?」

「前……前!?」


 アリシアの口からそんな言葉を聞いた俺は、即座に立ち上がってお風呂場に響く大きな声で言った。


「ま、前は自分で洗うからいい!アリシアは少しの間後ろを向いててくれ!」

「私は気に致しま────」

「俺が気にするんだ!」


 俺がそう言うと、アリシアは残念そうな様子で俺から背を向けた。

 俺はそのアリシアの背中のラインに一瞬だけ目を奪われてしまったが、すぐに正気に戻ると自らの体を洗い始めた。

 そして、体を洗い終えたことを伝えると、アリシアが言った。


「では、私も体を洗わせていただきます」


 そう言って、石鹸を取ろうとしたアリシア────だったが。


「待てアリシア、もしかして背中や腕も自分で洗うつもりか?」

「そのつもりですが……そのことがどうかなされたのですか?」

「アリシアに背中や腕を洗ってもらったのに、俺だけ何もしないなんてことはできないから、俺もアリシアの体を洗わせてもらう」

「ア、アレクティス様にそのようなことをしていただくわけには────」

「俺たちはもう主人と従者じゃなくて恋人関係なんだ、だからしてもらったことは返すのが普通だろ?」

「っ……!……わかりました、お願いします……!」


 俺がアリシアにこういったことをするのは今までほとんど無かったからアリシアにとっては大きく違和感を感じるだろうが、俺はずっと、俺のために頑張ってくれるアリシアにずっと何かを返したかった。

 一方的にもらうだけでなく、俺もアリシアにあげたかった。

 それが叶う恋人関係に、俺は改めて魅力を感じながらアリシアの色白で綺麗な背中と腕を洗い終えた。

 そして、そこで俺がアリシアから手を離すと、アリシアが言った。


「アレクティス様……私は前も、アレクティス様に洗っていただき────いえ……触れていただきたく、思います」

「っ……」


 触れて……か。

 アリシアがそこまで言ってくれているのに、俺がここで引くわけにはいかない。

 そのため、俺はアリシアに言う。


「わかった……だが、それはまた後だ」

「っ!アレクティス様、私は今、こうしてアレクティス様と初めて生身で触れ合った今この高まった感情をアレクティス様に────」

「後って言っても後日じゃない、お風呂を出た後って意味だ……その後で、アリシアさえ良いなら、俺の部屋に行こう」

「っ……!アレクティス様、それは……」


 俺の言葉の意図を察した様子のアリシアは、嬉しそうな表情になると────俺のことを抱きしめてきた。


「ア、アリシア!?い、今抱きしめられると色々直接────」

「アレクティス様……アレクティス様……!」

「……」


 色々と言いたいことはあったが、こんなにも嬉しそうにしているアリシアに抱きしめられたら、もはや異を挟むことなどできない。

 その後、俺はアリシアのことを抱きしめ返してしばらくの間互いに抱きしめ合うと、アリシアが自らの体を洗ってから二人で体を密着させながらお風呂に浸かり、お風呂から上がると────俺の部屋へ向かった。

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