第9話 前世の従者は嫉妬深い②

 学校から出てバイト先へ向かうこと数十分……栄えている街の中央から少しだけ離れた場所にあるレトロな喫茶店────


「ここが俺のバイト先だ」


 そう言って足を止めると、アリシアはその外観を見渡すようにしながら言った。


「ここがアレクティス様のアルバイト先……当然、建物に使われている建材の材質や造りの前提などは違いますが、どこか前世の世界を思い出す建物ですね……これが、アレクティス様が私に見せたかったものですか?」

「いや、確かにこの前世を思い起こさせる建物もアリシアに見せたかったが、本当に見せたいものはこの中にある……それにしても、俺が前世の記憶を思い出したのは昨日だったから意図的に前世の雰囲気と似ているこの場所をバイト先に選んだわけじゃなかったが、今にして思えばかなり良い選択だったな」


 この世界の建築や雰囲気というのが嫌いなわけじゃない、むしろ見栄えという点では統一感があったり綺麗だったりして好みだ。

 だが、やはり時々こういったレトロな空気感に触れるというのも、前世の記憶を思い出した今の俺にとっては今後さらに重要な時間になって来るだろう。


「そう、だと思いますが……」


 アリシアはどこか腑に落ちていない様子でそう言った……そのアリシアの様子は気になったが、そろそろバイトが始まる時間のためそのことはまた今度聞くことに決めて、俺はアリシアと一緒に喫茶店の中へ入った。


「継条くん!来たね~」


 喫茶店の中に入ると、明るい茶髪に笑顔の女性……俺のバイト先の先輩が話しかけてきた。


「お疲れ様です、先輩」

「うん!良い挨拶だね!あれ、継条くんが女の子連れてる~!」

「そんなことわざわざ気にしないでください」

「あはは、そうだね~!じゃあ、いつも通り着替えたら仕事よろしくね~!」

「わかりました」


 そう言うと、先輩は自らの仕事に戻った。

 あの先輩は、明るく気さくな人なためとても接しやすい。


「アリシア、見せたいもの────」

「私以外の女性が、アレクティス様と同じ場で行動を共にする……それにあの女性、アレクティス様にあんなにも馴れ馴れしく……アレクティス様に対する最大限の礼儀というものを知らぬ者には、このアリシアがアレクティス様の偉大さ、崇高さを説く必要が────」


 真剣な表情でそう語るアリシアに対して、俺は慌てて言う。


「ま、待てアリシア、この世界で俺はただの男子高校生だから、俺に対してああいった態度を取るのはこの世界では普通のことなんだ」

「私にとってそのようなことは関係ありません、私とアレクティス様が前世や今世といった壁を取り払い再度こうして出会うことができたように、前世や今世といったことは関係が無いのです」


 確かに、俺にとって七深華音は七深華音では無くアリシアであるように、前世と今世が関係が無いと思える部分があることは確かだが、アリシアは社長令嬢として育ったこともあってその境目が本当にほとんど無いんだ。


「……その辺りのことも後で話すが、ひとまず今は客として席に座っててくれるか?もう時間が無いから、見せたいものはまた後で見せることにする」

「わかりました」


 俺がそう伝えると、アリシアはカウンター席に座った。

 それを見届けた俺は、更衣室に入ると白シャツに黒の上着、黒のズボンを履くと、早速カウンターで仕事に取り掛かることに────


「ア、アレクティス様!その素敵なお恰好は一体……!?」


 俺がカウンターで仕事に取り掛かろうとしたとき、カウンター席に座っているアリシアが俺にそう話しかけてきたため、俺はそれに答える。


「あぁ、このバイトをするときはこの格好なんだ……わかりやすく言えば、学校の制服と同じような感じだな」

「アレクティス様のこのような格好を何の代価も支払わずに見れてしまってよろしいのでしょうか……!?い、いえ!なるほど、アレクティス様のこのようなお姿を見るための代価として、ここのメニューにある商品を注文するのですね……でしたら私はそのアレクティス様のお姿に見合うものを差し出さねばなりません」


 そう言うと、アリシアは鞄から「今手元にあるのがこれほどしか無いのが口惜しいです……」と前置きをすると────百万円の札束を俺に差し出して来て言った。


「アレクティス様!これほどの額しかありませんが、紅茶を一ついただければ構いませんのでどうかこちらのお金を懐にお納めください!」



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 作者は今後もこの物語を楽しく描かせていただきますので、この物語を読んでくださっているあなたも是非この物語を最後までお楽しみください!

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