第14話 前世の従者はご奉仕する②
「アリシア!?な、何をするつもりだ!?」
俺は、何故か突然俺のシャツのボタンに手を掛けてきたアリシアに対してそう言うと、アリシアが言った。
「室内になりましたので、ボタン付きのシャツをお外しになろうと思ったのですが……どうしてそのように動揺なされているのですか?」
「室内に、なったから……」
……なんだ、そういうことか。
てっきりああいったことでもしようとしているのかと変な勘繰りをしてしまったが、少し警戒度が高すぎてしまったのかもしれないな……とはいえ。
「アリシアの気持ちは嬉しいが、ボタンぐらい自分で外せるからアリシアはそんなことにまで気を回さなくていい」
「っ!い、いえ!どうかそのようなことは仰らず私にアレクティス様の着用なされている服を脱がす役目を行わせてください!前世では当然のように行っていたので、このような室内へやって来てそれを行わないというのはなんだかむず痒く感じてしまうのです!どうかお願いします!」
アリシアは懇願してくるような目で言った。
……継条輪としての記憶しか無かった時から考えるとかなり異常な話だが、前世では従者が主人、俺たちの場合だとアリシアが俺のこういった上着を脱がせて家、または外用のものに着替えさせるのが普通だった。
前世の記憶が戻った今、アリシアの中にはその習慣も蘇っているだろうから、確かにそれを行わないというのはかなりのむず痒さが生じるだろう。
「……わかった、それならよろしく頼む」
そのことを考慮してアリシアからの提案を受け入れた俺は、アリシアが俺の服を脱がしやすいようにソファから立ち上がると軽く両腕を上げた。
「ありがとうございます、アレクティス様!」
アリシアはとても嬉しそうな声でそう言うと、早速俺のシャツのボタンを一つ一つゆっくりと、丁寧に外し始めた。
俺は、なんとなく久しぶりのことに少し恥ずかしさを覚えそうだったため目を瞑りながらアリシアに服を脱がせてもらうことにした────が、その途中。
「……はぁ」
「……」
「はぁ……はぁ」
最初は気のせいかと思ったが、どこか色気のある声のようなものが目の前から聞こえてきたため俺はその声の正体を探るために目を開いた────すると。
「ア、アリシア!?」
アリシアが頬を赤く染めて俺のシャツのボタンを外しながら、とても色気のある声を漏らしていた。
「ひ、久しぶりに……それこそ前世ぶりにこれほど直接的にアレクティス様にご奉仕させていただいていると考えると……はぁ、はぁ」
「……」
できることならその声は抑えてもらえたかったが、言葉通り主人としても、そして恋愛感情も抱いている相手に前世ぶりに自らの望む形での奉仕をするとなるとこうなってしまうのも無理はないため、俺はできることならその色気ある声は出さないで欲しかったがそれも仕方ないと割り切って受け入れることにした。
「あぁ、アレクティス様、アレクティス様……」
その後、アリシアにシャツを脱がしてもらうと、俺はシャツ姿になって言う。
「ありがとう、アリシア」
俺がそう感謝を伝えると、アリシアが言った。
「とんでもございません!アレクティス様にご奉仕させていただくことこそ、私の幸せなのですから!」
「……そう言ってくれるアリシアが傍に居てくれることは、俺にとってとても幸せなことなんだろうな」
何気なくそう言うと、アリシアは少し間を空けてから言った。
「今……私がアレクティス様の傍に居ることが、幸せだと仰ってくださいましたか……?」
「あぁ、確かに俺がそう言った」
「っ!でしたら、アレクティス様……」
アリシアは嬉しそうな表情と声音でそう俺の名前を呼んだ直後────俺のことを抱きしめようとしてきながら言った。
「どうか、どうか私とお付き合いなさってください!私がアレクティス様に尽くすことで、必ずアレクティス様のことを幸せにしてみせます!!」
「ま、待て、ひとまず俺のことを抱きしめようとするのをやめ────」
「アレクティス様!愛しています!!」
「っ!!」
その後、俺はどうにかアリシアに抱きしめられるのは回避しながらも、アリシアに愛を伝えられ続けた────勘弁してくれ!!
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