第21話 前世の従者は意識させたい①
「身を委ねるって……アリシアは何をするつもりなんだ?」
「ふふ、今から実践して差し上げます」
そう言うと、アリシアは俺の制服のブレザーのボタンに手を掛けると、それを外し始めた……ベッドの上で服を脱がせるということは、まさか────アリシアが何をしようとしているのか理解できた俺は、手錠で拘束されている両手をアリシアの方に突き出して言う。
「アリシア!それは────」
「アレクティス様のお手を見ることができるというのはとても幸せなことではありますが、今はそれ以外にしなければいけないことがありますので、失礼いたします」
そう言ったアリシアは、手錠の鍵穴の部分に輪っか上の鍵を通すと、それをベッドに固定して俺が完全に手を動かすことができなくしてきた。
「これで問題なく事を進めることができますね」
アリシアは口角を上げると、続けて俺のブレザーのボタンを外し始めた。
どうにか抵抗したかったところだが、もはや抵抗する術はなく俺はそのままブレザーのボタンを外された……そして、俺から制服のブレザーを脱がすと、次にアリシアは白シャツのボタンに手を掛け、そのボタンを外し始めた。
こんな手錠、前世なら炎で燃やすか風で切れば一瞬で壊せたが、こうなってしまったらこの世界の俺には本当にどうすることもできない。
俺はアリシアが俺の制服のボタンを外している間、どうにか言葉によってアリシアの行動を止めようとしたが、アリシアは一切止める気配は無く、そのまま俺の白シャツのボタンを外して頬を赤く染めると甘い声で言った。
「あぁ……アレクティス様、とても魅力的でございます……本当であればこのような手錠などしたくありませんでしたが、それを差し引いてもボタンを外されたアレクティス様のお格好は本当に魅力的です……」
そして、続けて俺の白シャツのボタンを脱がせようとした────ところで、その手を止めた。
俺は、もしかしたらアリシアが考えを改めてくれたのかもしれないと期待した……が。
「申し訳ございません、アレクティス様だけお脱がしになるのでは不公平ですね……私も服を脱がせていただきます」
全く別の形でアリシアが考えを改めていて、その期待は見事に裏切られる結果となった……そして、アリシアは本当に自らのブレザーのボタンに手を掛けるとそれを脱ぎ始める。
「……アリシア、仮にも異性の前で服を脱ぐなんて恥ずかしくないのか?」
俺がそう聞くと、アリシアはボタンを外す手を止めて言った。
「アレクティス様以外の男性でしたら恥ずかしい、というかもしそのようなところをアレクティス様以外の男性に見られてしまったのであればその男性に対して徹底的な対処を施させていただきますが……アレクティス様の目の前で服を脱ぐことなど、全く恥ずかしくありません!」
そう言った後で、アリシアは少し間を空けてから頬を赤く染めて言う。
「いえ、恥ずかしくないというと語弊がありますね……私の愛しているアレクティス様に私の肌を見られるというのは、確かに少しだけ恥ずかしいと思うところもあります……が、それ以上に私は、アレクティス様に私の全てを見ていただきたく、同時に私はアレクティス様の全てを見て、その全てを愛させていただきたいのです!」
全てを、愛する……わかっていたことだが、アリシアの俺に対する愛情というものを、俺はもしかしたら測りきれていないのかもしれない。
そんなことを思っていると、アリシアはブレザーのボタンを外し始め、ブレザーを脱ぐと次にシャツのボタンに手を掛け始めた。
「あぁ、ようやくアレクティス様に私の女性としての部分をお見せすることができるのですね……」
「……女性としての、部分?」
「はい、この下は下着なのです」
「下、着────」
そう聞いた瞬間、俺は瞬時に目を閉じた。
「っ!ア、アレクティス様!目を閉じてはいけません!」
「アリシアの下着姿なんて見られるわけないだろ!」
「アレクティス様は、どうしてそこまで頑なに私のことを異性として見ようとなさらないのですか!」
「それが前世で誓ったことだからだ!!」
俺がハッキリそう答えると、少し間を空けてからアリシアは言った。
「……でしたら、強引にでも私のことを異性として意識させて差し上げます」
そう言うと、ボタンを外す衣擦れの音が聞こえ────その次の瞬間、制服のボタンが外れて服の分厚さとしては制服の中に着ているシャツ一枚分となっている俺の上半身に、とても大きく柔らかい感触を感じた。
「っ!?ア、アリシア、もしかしてこの感触は……ダ、ダメだ!今すぐ離れ────」
「離れません……アリシアは、アレクティス様から離れたりしないのです」
そう言うと、アリシアはさらにその柔らかな部分を押し当ててきた。
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