第52話 襲撃


あぁ~早く帰りたいな。


二階堂家が主催するパーティーに参加していた。いつもであれば萌衣も誘っているのだけど、今回はショッピングモールの件で忙しいらしく参加していない。


龍人くんに逢いたいな。


「雫様、例の件ですが考えて頂けましたでしょうか?」


「ごめんなさい。私には既に婚約者がおりますのでお断りさせて頂きます。」


以前から婚約の話しを貰っていたけど、龍人くんの婚約者になったことを機に御断りの連絡を入れていたのだけど、それからも婚約の話しが止む事は無かった。


「婚約者の話しは私も聞いております。ですが、雫様には婚約を解消して頂きたいのです。」


「ごめんなさい。私が好きで婚約しておりますので、自分から解消するのは考えられないです。」


「私の家と雫様の家の繋がりが強くなればお互いにとっても良いと思うのですが」


「どうでも良いかな?」


「どうでも良い・・・」


繋がりを考えるなら、二階堂家は龍人くんとの繋がりを大事にするだろう。私の思いと家の考えは一致している。


私がこの人の婚約者になるのはあり得ない。


「なので婚約の話しはごめんなさい。」


こんな会話が何度も続いた。そう婚約の話しは1件だけでは無かった。特に最近は龍人くんのアイテムのお陰で会社の業績が鰻登りのため、それが謙虚に現れた。


ガヤガヤガヤガヤ


予想外な来客が現れ会場が騒ぎだした。


最年少でのSランク冒険者になるだろうと、巷で噂になっている青年がこちらへと歩いて来る。国防軍からも声がかかるほどの有望株である。


「お久し振りですね、雫嬢。冒険者学院に入学したと聞きましたよ。」


「お久し振りです。ワタル様。冒険者学院では楽しい一時をおくらせて頂いております。そのお陰もあって、最愛の人も見つける事も出来ましたわ。」


ピクッ


「それはそれは御羨ましい。雫嬢には学院を卒業後に私が設立するクランに加入して頂きたいと思っていたのですが」


「ごめんなさい。卒業後に所属するクランは決めておりますので、御誘いは嬉しいのですけどお断りさせて頂きます。」


「豪傑の集いですか?」


「いえ。私の婚約者が設立するクランに所属します。獅童蓮司様も認めるほどの人なのですよ。」


「それは残念ですね・・・出来ればこんな方法は使いたく無かったのですが・・・」


亘様が周りには聞こえないような声でボソボソと呟いたかと思うと・・・


バンッ!!


会場が暗闇に包まれた。


パリンッ! パリンッ! 


ハッ!?


暗闇で私に迫る気配を感じ回避した。ショッピングモールの事件の事もあり、会場の警備は万全に整えられていた。会場を停電にするなら外部からのラインを切断したに違いない。その証拠に


パッ!


予備電源へと切り替わり会場の照明が点灯した。そして、


「これはどういう事ですか? 亘様。」


「ククク、まさか避けられるとは思いませんでしたよ。雫嬢を拐えれば話しは早かったのですがね。これでは全員を始末しなければいけなくなりました。」


「フフフ、それが貴方に出来るのかしら?」


母様が冒険者を引き連れてやって来た。


「これでもSランク並みの実力と私が声をかけた精鋭を連れて来ているのです。出来ないとお思いで?」


「以前であればそうですわね。今では状況が違いますわね。例の武器の使用を許可します。制圧しなさい!」


『ハッ!!』


ショッピングモールの事件は良くも悪くも各所に影響を与えた。昨日のことだが直ぐにテロリストに対応出来るように準備を進めていた。日頃から龍人くんから購入しているアイテムや武器、防具を専属の護衛に持たせている。その差は大きい。


【ーー『半神魔の祝福ディザリティア』が発動しました。ステータスに補正がかかります。条件を満たしました。職業が『闘剣王』へクラスチェンジします・・・成功しました。スキル『紫雷』が与えられます。】


力がみなぎって来る。


一瞬何事かと思ったけど、こんなこと出来る人は一人しか知らない。


「フフフ、愛されてるな。わたし」


このタイミングで与えられたこの力。やる事は一つだよね。


「馬鹿な・・・私の精鋭達が・・・」


既に勝敗は決している。うちの精鋭達が次々に襲って来た者を制圧している。


「期待の冒険者が闇ギルドの一員で犯罪者だと言うことはビックニュースですね。」


「私が全て葬れば良いだけです!」


剣に手をかけたタイミングで私は【成長する武器グロウス・コアバングル】を起動して駆け出した。


ガギィン!! ピキッ!


「クッ・・」


「あれ!? 思ったより、御強く無いのですね?」


「殺してやる!!」


「残念でした。」


【紫雷】


バチン!!


「グワアッ!??」


剣を通して、紫色の雷が走る。紫雷は高確率で麻痺を付与する。威力も高く、人に使うには手加減しても危険だ。Sランク候補なのだから大丈夫だよねと思ったけどそんな事は無かった。


地面に伏してピクピクしている。


「雫・・あなた・・・」


「アハハ。龍人くんが何かしたみたい。スキル『紫雷』を貰っちゃった♪」


「ハァ~後で話を聞く必要があるわね。でも、まずは拘束を急ぎなさい!」


Sランク候補の親玉を迅速に拘束した事で速やかに問題は解決された。

後日になるが、民衆に人気のあった冒険者の犯罪行為が次々に明るみに出た。冒険者ギルドのお偉いさんが会見を開き頭を下げる姿が何度も報道されていた。


闇ギルドも次々に摘発され、ショッピングモールの事件にも関わったとされる者も出て来て新年早々日本を賑わせた。

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