第19話 条件呑みます!

雫さんがクランに加入するのは良いんだけど、クランハウスで一緒に住むのは俺も良く無いと思う・・・はい、宜しくお願いします。既に俺が意見出来る段階では無くなっていた。


凍也さん、何とかしろって、凍也さんが何とかしてくださいよ! えっ!? 無理って俺にも無理ですよ!


「あぁ~こほん! ついでに獅童家からも条件を出す! 一つ目、萌衣の他に追加で2名を龍人のクランに加入させる。二つ目、俺のクラン〈豪傑の集い〉と同盟を結ぶ。三つ目、俺を強くしろ。以上が条件だ。俺は萌衣が望むのなら龍人が萌衣に手を出す事も認める!」


おいおい、何言ってんのこの人?


「お父さん!? その二人は麗と椿ですか?」


「そうだ。二人から毎日のように問い詰められるのは面倒だ。それは萌衣が勝手に俺の名前を使ってFクラスに編入したのが原因だ。そちらで対処しろ!」


普通はSクラスからFクラスへの編入は問題になるはずだ。それを蓮司さんの名前で黙らせたのか!? 何をやってるの! 萌衣さん!


「お父さんの名前も話しの流れで出たかも知れませんが、あんな事があったのです。私がSクラスに在籍する実力が無いと気づいただけです。だから決して龍人くんと一緒に居たいだけの理由では無いのです。」


う~ん、それならFクラスに編入しなくてもAとかBクラスでも良さそうな気がするがそこはつっこまない事にしよう。そもそも


「私は今まで通り二人には寮から通う方が良いと考えているのですが? そうすると、条件は必要無いのでは無いですか?」


「それじゃあ、龍人が二人を説得しろよ。俺は手伝わないからな!」


ぐぅっ


今のやり取りを聞いていたのか、二人は目に涙を溜めていた。


「・・・二つ目の同盟を結ぶとは具体的にどういった内容何ですか?」


うん。俺には説得は無理だ。俺に出来る事は条件を呑むだけ


「今のところは何かあった時は手伝えくらいだな。詳しくは後日に朱莉から連絡する。」


「わかりました。三つ目は必要何ですか? 蓮司さんは相当腕がたちますよね?」


歩き方や佇まいなどで只者では無いのはわかる。


「まだまだ足らねぇんだよ! この世界も化け物揃いだ。クランの頭が弱いと直ぐに食い潰される。」


言っている事は良くわかった。


「私の訓練は厳しいですよ。それでも宜しいですか?」


「ぬかせ。厳しくない訓練など訓練じゃねぇよ!」


ごもっともな意見だな。それから軽く挨拶した後にお開きになり、遅い時間と言うのもあって雫さんの家に泊まる事になった。


それから数日間は二人が引っ越しの準備をするとあって、午後は一人で過ごす時間が多くなった。


俺は少し遠いけど、初級迷宮【獣の楽園】へと探索に来るようになった。【獣の楽園】は《草原》フィールドで様々な獣系の魔物が棲息している迷宮だ。


入口周辺はホーンラビットやウルフの弱い魔物が大半らしいけど、ウルフは群れで行動する事が多く囲まれてしまうとベテランの冒険者でも危険らしい。まぁ、入口周辺で群れのウルフと遭遇する事は無いと聞いていたんだけどな?


『キャアーー!!!!』


探索を開始して1時間経過したころ、迷宮に女性の悲鳴が響いた。急いで悲鳴がした場所に駆けつけると若い冒険者集団がウルフの群れに囲まれていた。


この辺でウルフの群れが出るって情報は無かったはずだよな? この迷宮でも異常が発生しているのか?


5名編成の5グループで探索してたっぽいけど、1グループ以外は既に瓦解している。怪我人も多いがこのままだと死人が出るな。勝手に割り込むと後で問題になる。先に声をかけておこう。


跳躍してウルフの群れを飛び越えて、囲まれている冒険者集団へと合流する。


「冒険者だ。手助けが必要なら手を貸すが、そうでなければここから離れますがどうしましょう?」


「かたじけない!」


「了解です。皆さんは守りに徹して下さい。」


スキルを色々と試したいところだが、そうも言ってられないか。スキル『氷魔王槍』で氷槍を創り出す。以前は綺麗な氷で出来ていた槍は赤紫色の氷へと変化していた。


《騎士技-飛旋風》


パキンッ!!!!!


パリンッ!!


正面のウルフの群れに向かい槍を横凪ぎに振るった。旋風がウルフの群れに届いた瞬間にウルフの群れが凍りつき砕けた。


「うっわ! 威力が高過ぎだろ!?」


思わず呟いてしまった。どうやら魔力制御で威力は調整出来るみたいだから訓練あるのみだな。武器に頼り過ぎると成長しないからな。もう一度、氷槍を創り直して迅速にウルフを狩っていった。


〈ーー冒険者集団〉


札幌冒険者学校3年Aクラスのグループ合同で初級迷宮【獣の楽園】へと探索に来ていた。慣れた迷宮とあって、油断していたもかも知れない。最初の違和感は普段よりウルフと言われる狼の魔物が多いと思ったくらいです。でも、気づいたら手遅れでした。


数十頭のウルフに囲まれていました。この辺でウルフが群れるといっても多くて5頭だったはずなのですが?


そう言えば、ゴブリンの森でも異常が確認されて封鎖されている聞きます。これも異常なのでしょう。


長くは持ちそうにありませんね。私達のグループ以外は瓦解して守るので精一杯でウルフが一向に減る様子が無い。このままだと全滅です。


タンッ!!


「冒険者だ。手助けが必要なら手を貸すが、そうでなければここから離れますけどどうしますか?」


ウルフの群れを飛び越えて、私達より年下の少年が助けに来て、ウルフを斬り倒していた戀夏れんげに声をかけていた。


「かたじけない!」


私達は少年の指示で守りに徹した。何故少年の指示に従ったかって? そりゃあ、あんな戦いを見せられれば従うしか無いと思うの?


戀夏も興奮した様子で少年の戦いを見ては防衛に徹していた。


あっという間でした。気づいたらウルフの群れは既に死んでいた。


「急いで撤退して下さい! どうやら、今回の元凶がこちらに向かって来ているようです。これは速い魔物ですね・・・私が時間を稼ぎますので、迷宮の外へ急いで下さい!!」


どうやら終わりでは無いようです。

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